☆296)糖と脂肪とがん(その3):がんとケトン体 | きじとら☆茶とら+はちわれ

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※不妊治療は限定記事にしています。

※メトホルミンは猫には使わないのが通常のようです。

296)糖と脂肪とがん(その3):がんとケトン体:

(転載:一部抜粋)
絶食では、体力低下や栄養障害を起こして、がん治療の目的には限界があります。一方、ケトン食は、極端な糖質制限と高脂肪食で、ケトン体の産生を増やす食事です。絶食をしないで絶食と同じ効果を発揮する食事療法として知られています。小児のてんかんの治療に使われる古典的なケトン食は蛋白質を体重1kg当たり1g、脂肪:糖質+蛋白質の比率を3:1~4:1、つまり食事の75~80%を脂肪にするという極端な高脂肪食です。

肝臓ですぐに分解される中鎖脂肪酸を利用すると、脂肪の割合を60%程度に減らし、糖質を1日40~60g程度摂取しても、ケトン体を大量に産生することができます。
脂肪酸として中鎖脂肪酸の他に、がん予防効果があるω3不飽和脂肪酸(DHAやEPA)を多く使い、タンパク源としてはがんを促進する赤身の肉(牛肉など)は控え、大豆製食品(豆腐や納豆)や魚や卵や鶏肉などを利用すれば、抗腫瘍効果が高まることが報告されています。


また、食物繊維やビタミン・ミネラルが豊富で糖質の少ないキノコやモズクやおからを食材に使用することも有用です。脂肪をグリセロールと脂肪酸に分解する消化酵素のリパーゼの製剤を脂肪の多い食事の後に服用すると、さらに脂肪酸の代謝を促進します。中鎖脂肪酸はカルニチンがなくても肝細胞のミトコンドリアに取り込まれますが、長鎖脂肪酸はカルニチンが必要です。サプリメントでカルニチンを摂取することも有用です。
さらに、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化してカロリー制限と同じ効果を発揮するメトホルミンは、肝臓での糖新生を阻害する効果もあるので、ケトン食療法にネトホルミンを併用すると抗腫瘍効果を高めることができます。次のような論文があります。


The complete control of glucose level utilizing the composition of ketogenic diet with the gluconeogenesis inhibitor, the anti-diabetic drug metformin, as a potential anti-cancer therapy.(ケトン食と糖新生阻害作用のある抗糖尿病薬のメトホルミンの併用による血糖値の完全なコントロールはがんの治療法として可能性がある)Med Hypotheses. 2011 Aug;77(2):171-3.
【要旨】糖質をカロリーを制限したケトン食はがんの増殖を15~30%低下させる。肝臓や腎臓では糖新生によってグルコースができている。この糖新生を阻害すれば、ケトン体食の抗腫瘍効果を高めることができる。糖新生を阻害する薬として有効なのが糖尿病の治療に使われるメトホルミンで、ケトン食とメトホルミンを併用すると抗腫瘍効果を高めることができる。

この論文の著者にメールで問い合わせると、動物実験では、ケトン食とメトホルミンの併用でう移植腫瘍の増殖を60%阻害したということでした。
人間のがんでケトン食の有効性が報告されているのは、現時点ではグリオブラストマなどの脳腫瘍だけです。しかし動物実験では、前立腺がんや胃がんなど脳腫瘍以外の腫瘍にも有効性が報告されています。

上記のケトン食+メトホルミンについては私自身で実験しています。1ヶ月以上前から、主食(ご飯、パン、麺類)を一切食べず、精製した中鎖脂肪(キッセイ薬品のマクトンオイル)を1日20~40g程度、中鎖脂肪を多く含むココナッツオイルを1日20~40g、調理にはオリーブオイルを多めに使い、ドレッシングにはグレープシードオイルや亜麻仁油や紫蘇油を多く使い、タンパク源は大豆製品(豆腐、納豆)と魚で1日60~120g程度を摂取するという食事を実践しています。

主食を一切省いても、大豆や野菜や魚や肉などにも糖質はある程度含まれています。食品の栄養表示をみながら、糖質の摂取を極力減らし、1日の糖質の摂取量を60グラム以下を目標にしています。カロリーは制限せず、アルコールも糖質の少ないウイスキーや糖質フリーの発泡酒などを制限なく飲んでいます。食物繊維が豊富で糖質をほとんど含まないキノコやもずくは多めに食べています。サプリメントとしては、ω3不飽和脂肪酸のDHA/EPAを1日2グラム程度摂取。脂肪の多い食事のあとは、膵消化酵素補充剤のリパクレオンを服用して、脂肪の消化を助けて、脂肪酸の利用を亢進するようにしています。

メトホルミンは数年前から1日500mgを服用しています。糖尿病ではありませんが、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化して抗老化作用が報告されているため服用しています。
上記のケトン食とメトホルミンで、尿中のケトン体を毎日1~3回ケトスティックで測定し、尿中ケトン体を2+程度に維持するようにしています。

以上のような体内のケトン体産生をわざと増やすような食事療法を行うと、最初の1週間くらいは、脂肪が多いと食後に腹痛がきたり、便秘になったり、倦怠感が出てきます。しかし、食物繊維を多く摂取し消化酵素を利用すると、そのような不快な症状はほとんど経験しなくなります。また、カロリー制限はしていませんが、体重は2kg程度減少し、体調も良い状態を維持しています。

自分の体で実験して、中鎖脂肪を利用したケトン食とメトホルミンの併用は安全で、抗腫瘍効果が期待できる可能性が高いように思います。カロリー制限を行わなくても、絶食と同じような効果が期待でき、ケトン体も産生されます。

カロリー制限を行えば、さらにケトン体を増やせますが、がん患者さんの場合、あまり体重を減らすことはデメリットも多いと思います。カロリー制限をせず、糖質制限と中鎖脂肪を利用したケトン食とメトホルミンの併用、さらにがん細胞のグルコース取り込みやワールブルグ効果のシグナル伝達を阻害する作用があるシリマリン(267話)、ペントース・リン酸経路を阻害してがん細胞の核酸や脂肪酸の合成を阻害する発酵小麦胚芽エキスのAvemar(281話)、嫌気性解糖系を阻害する半枝蓮(176話)を使った漢方薬を併用すると、がん細胞の兵糧攻めがさらに増強できると思います。現在存在するがん細胞を消滅させる食事療法として試してみる価値はあると思います。