彼を見つけて2ヶ月。
記憶障害の糸口を見つける事はできなかった。
なぜ怪我をしてこの村に流れ着いたのか、どこにくつもりだったのか・・・。
何もわからないまま時だけが過ぎ・・・。
「僕の手伝いをしてくれる?」
「手伝い?」
「そう。この病院の受付とか掃除とか。人手が足りないんだよ。」
自分の事がわからずにふさぎ込んでいく彼に生きる希望を与えたかった。
「君が手伝ってくれると助かるんだけど・・・どうかな?」
「僕が・・・先生を助けられる?」
「そうだよ。」
目を合わせて笑って見せ
「城井翔。それが今日からの君の名前だよ。」
彼に名前をつけたんだ。
「しろい・・・かける?」
「そう。君が君を見つけられるまで・・・
それが君の名前。
そして君が1人で生きて行けるようになるまで・・・
俺が隣にいるよ、翔。」
そっと頭の上に手を置くと・・・
「先生、僕・・・頑張る。先生の役に立てるように・・・頑張るね。」
翔はそう言って・・・
初めて笑った。
その笑顔を見た時に決めた。
翔が記憶を取り戻して幸せに笑えるその日まで傍にいる事を・・・。
もし思い出したくない記憶を思い出して苦しんだら・・・
そこから救ってやるって・・・。