「尚人さん、お久しぶりです。」
崎はそう言って墓に手を合わせる。
さっき来たばかりのこの場所に戻ってきた俺は・・・
崎の背中を見てその隣に寄り添うはずの葉山の姿を無意識で探していた。
「この花は・・・章三、お前たちが?」
「あ、ああ・・・。葉山が戻るまで俺たちが代わりにと思ってな。」
「託生が戻る?あいつはどこに行ったんだ?」
そう言って赤池を見る崎。
こいつ・・・
「お前・・・何も知らないのか?」
俺の言葉に視線がゆっくりとこっちを見た。
「3日前まで研究所にいたからな。あそこは外界とのかかわりは一切シャットダウンされる。テレビもなければ、面会することもできない。手紙はたまに届くが、家族からだけだからな。」
崎はそう言って大きなため息をついた。
「この2年半、俺は託生の事だけじゃなく、アメリカの経済状況も、日本の事も世界の事も・・・何も知らない。」
それじゃ・・・
「島岡さん・・・からは?」
そう聞いた赤池に
「島岡は・・・親父の秘書だ。いずれ俺のもとに戻ってもらうつもりだが・・・。それより・・・託生はどこに行ったんだ?」
崎は視線を赤池に戻しそう言った。
「葉山は・・・。」