「今年も・・・ギイが来た様子はなかったな。」
「ああ・・・。」
木々に囲まれた小道から舗装された道路に出ると・・・
「お、おい・・・。」
少し離れた場所を歩いている姿に俺は足を止めた。
俺の隣・・・
一緒に歩いていたはずの赤池は・・・
その姿に走り出した。
「ギイ。」
赤池の声に俺達を見たのは・・・
あの頃より少し痩せた、それでいて気品を失っていない・・・
崎だった。
「章三・・・。」
赤池を見て都合悪そうに笑った崎。
「おまえは・・・今まで何してたんだ。」
赤池の問いかけに崎は
「心配・・・させたみたいだな。悪かった、章三。」
そう謝った。
両手に抱えられた花束は尚人の墓に行くためのものだろう。
「葉山・・・約束通り、崎がここにいるぞ。」
俺は空を見上げ・・・そう呟いた。