「すみません、今年も2人で来ました。」
6月15日。
葉山尚人の墓の前。
俺と赤池はそう言って花を置いた。
葉山がニューヨークへ旅立って2年。
あの飛行機事故での行方不明者はたったの3人で・・・
その中の1人が葉山だった。
他の2人は半年後には海の底、沈んだ機体の中で見つかり・・・。
今行方が分からないのは葉山だけだった。
新しく生活を始めるために借りたアパートは半年で解約し、赤池の実家に運ばれた。
葉山の両親が荷物を受け取ることを拒否した。
兄をなくし、葉山をようやく親子らしい会話ができるようになった母親が・・・
葉山が行方不明と言う事を受け入れられなかったからだ。
託生の生死がわかるまで・・・
預かっていただけますか?
父親からの頼みに赤池が荷物を受け取った。
その荷物の中に入っていたスケジュール帳の最初のページに
兄の命日には必ずギイと墓参りへ
そう書かれていた。
6月15日に兄尚人の命日と書かれ、葉山の父親に墓の場所を聞いた。
葉山が戻るまで・・・
俺達で葉山の代わりに墓参りしよう・・・
そう決めた。
1年目、崎が現れる事はなかった。
崎の行方も・・・
いまだ俺らにはつかめないままだった。
「尚人さん、葉山は・・・元気にしてますか?」
赤池はそう聞きながら手を合わせる。
きっと・・・
尚人さんには全部わかってるだろうからと・・・。
「来年は・・・一緒に来られるようにします。」
最後には去年と同じことを言って・・・
俺たちはその場を後にした。