「新さん、電話っすよ。」
葉山が崎を探すために日本を旅立った数時間後。
真行寺に引っ越しの荷物の整理を手伝わせていた俺の携帯が着信を知らせた。
電話に表示された名前はめったに俺に連絡をしてくる相手ではなく、持っていた荷物を床に置くと電話を手にした。
「もし『三洲、テレビ、テレビつけろ。』」
大声でそう叫ぶ片倉に
「真行寺、テレビ。」
さっき設置が終わったばかりのテレビをつけるように言う。
「何慌ててるんだ、片倉。」
( 託生の・・・託生が・・・。 )
さっぱり要領を得ない片倉にテレビを見ようとすると、テレビの前で動きを止める真行寺の姿が目に入る。
「真行寺、そこに立っていたら何
『新さん・・・これ・・・これって・・・。』」
振り返った真行寺は青ざめた顔をしてそう言いながらテレビを指さした。
そこには・・・。
海の上に浮かぶ傾いた飛行機の姿が映っていた。
周りに散乱する機体の破片。
海の上で助けを求める人の姿が小さく映っていた。
( 託生が乗った飛行機って・・・ )
テレビで繰り返される飛行機の便名。
それは・・・
葉山が乗っていたものに間違いなく・・・。
「落ち着け片倉。まだ何もちゃんとした情報は入ってないだろう。すぐに俺が確認しに行ってくる。」
( 俺・・・俺そっちいっても・・・ )
「1人で不安なら俺のマンションに来ればいい。真行寺がいる。場所は今真行寺から連絡させる。」
そう言って電話を切る。
テレビの映像に・・・俺は・・・
「真行寺、お前の携帯を俺に。これをここに置いていく。誰かから連絡があったら・・・ここに来るように言ってくれ。」
「わかりました。新さんは?」
「俺は・・・空港に行ってくる。」
「生存者などの情報は入り次第お伝えいたします。」
テレビから流れるアナウンサーの言葉を聞きながら・・・
俺は財布を手にすると部屋を飛び出した。
大丈夫だ、あいつは運が強い。
そう簡単に・・・
大丈夫だ。
そう自分に言い聞かせ・・・
俺はタクシーに乗った。