「荒北さんは・・・」
そう言いながらスマホを
「ほんとに危機感ないですもんね。」
テーブルの上の水の入ったコップの中に入れた。
「お、お前何やって・・・」
「あ、手が滑っちゃいました。」
そう言って俺を見る目は笑ってなくて・・・
「荒北さんには俺だけだって昨日あれだけ教えたはずなのにな・・・。」
そのまま俺の両手を押さえ込むと唇をふさいだ。
こいつ・・・
いったいどうしたってんだよ。
「やめ・・・。」
「まだ時間たっぷりあるから・・・
ちゃんとわかってくれるまでずっとこのままですよ、荒北さん。」
そう言って真波は・・・
俺の上着を捲り上げた。
「じゃあね荒北さん。来月また来ますね。」
玄関からそんな声が聞こえる。
カチャカチャ聞こえるのは自転車を外に出してるんだろう。
「ちゃんと俺の言った事、守ってくださいね、荒北さん。」
ドアの閉まる音にベッドから無理に体を起こし玄関まで必死で歩き、ドアチェーンをかけて鍵を閉めその場に座り込んだ。
あれから・・・
何度も俺の中で欲を吐き出したあいつ。
荒北さんが好きなのは俺だけですよね
そう繰り返し呟く真波に・・・
こいつは壊れてる、そう思った。
まるで子供が親の愛情を求めるように・・・
何度も何度も俺を抱いては同意を求めた。
この先も・・・
何かある度俺はこうして真波に振り回されるのか?
何かあるたびに体をつなげて満足しようとするのか?
俺は・・・
そんなこいつを好きでいられるのか?
そもそも・・・
「好きってどんな感じだった?」
俺は本当に真波を好きだったのか?
なぜかそんな事を考えていた。