「俺がいること忘れてたよね、荒北さん。」
ゴールした荒北さんの隣でボトルを渡してあげたのに。
ずっと荒北さんを待ってたのに・・・。
「何で金城さんに簡単に触らせてるんだろう。」
肩なんか組んで・・・。
そんな事考えながら荒北さんのアパートにむかって自転車を進めた。
途中のコンビニでドリンクや食べ物、そして・・・
「これ・・・今日はたくさん必要だよねー。」
ちょっと見ると可愛い箱に入ったそれもかごに入れた。
荒北さん疲れてるかもだけど、俺のこと一瞬でも忘れた償いはしてもらわないとね。
明日は学校休みだし・・・。
「ありがとう。」
バイトのお姉さんにそう言って笑うと、顔真っ赤にして笑って頭下げたけど・・・。
荒北さんのほうが全然可愛いし。
そんな事考えながらアパートの鍵を開けた。
「相変わらずだなー。」
床に脱いだままのパジャマ。
食べかけのパンが机の上に上がってた。
「まあ荒北さんらしいけど。」
そう思いながら冷蔵庫を開けると・・・。
「これ・・・誰の?」
ベプシ以外の飲み物、しかも荒北さんが絶対に飲まないものが入っていた。
よく見ると・・・
洗ったままのかごの中にはコップが2つ入っていたり。
皿が2枚だったり・・・。
「金城さんか。」
荒北さんからよく一緒にご飯食べた話しを聞いていた。
同じ階に住んでるチームメート。
理解できない訳じゃない。
でも・・・俺が来る時はそんな形跡なかった。
誰かの好みのものが置いてあるとか、誰かと一緒に過ごした後があるとか・・・。
「俺が来ると隠してるんだね、荒北さん。」
やっぱり・・・ちゃんとわかってもらわなきゃ。
荒北さんは俺のものだってこと。
他の誰かとこんな風に過ごす事はいけないことだって・・・。
「わかってもらわなきゃ。」
そういいながら・・・
俺は冷蔵庫に入っていた飲み物を・・・
シンクに流した。
「誰にも・・・
誰にも渡さない。
荒北さんは・・・
俺のものだから。」