卒業式が終った部室。
俺と福ちゃん、新開、東堂の4人で見納めだと部室のドアを開けた。
そこには泉田や真波、黒田などの後輩が俺らを待っていた。
「新開さん。俺もっと新開さんと。」
「はいはい、わかった泉田。主将がそんな泣き顔してたらおかしいだろ?」
相変わらずの新開好きな泉田はぼろ泣きで・・・。
「真波、お前は来年は山神になるのだ。この俺の後を引き継いで。」
「えー・・・それは遠慮します。俺、てっぺん取れればそれで。山神は坂道君にでも上げます。」
「お、おい。真波。お前は何を言ってるんだ?山神だぞ?クライマーの称号として。」
「はいはい。」
真波、お前くらいだよ、東堂にそんな口きけるのは。
「荒北さん、俺も来年洋南受けますんで。」
黒田がそう言って俺の前に立った。
「はあ?お前はそんなことよりインハイのこと考えろよ、ばーか。」
「インハイはもちろん王者奪還しますよ。あなたの後をついで必ず12番のゼッケンを手に入れて見せます。」
「いんじゃなーい?函学の引きってやつを見せろよ、黒田。お前はこれからもっともっと速くなる。」
「はい。」
「頑張れよ、黒田。去年の屈辱をばねにしてな。」
って何でこいつ泣いてんだよ。
「俺、荒北さんにあえてよかったです。最初は大嫌いだったけど・・・。」
「いい度胸だな、お前は。」
「今はあなたが大好きです。」
そう言って俺の手をつかんだ黒田を
「靖友、帰るぞ。」
福ちゃんが振り払った。
「福富主将。」
驚いた顔をした黒田に
「悪いな黒田。靖友は俺のだ。」
周りに聞こえないようにそう言って・・・
「皆、来年は王者奪還、期待してる。」
そんなかっこいいセリフを叫ぶと福ちゃんは俺を連れて部室を後にした。
「福ちゃん、黒田相手に何言ってんだよ。」
「相変わらず鈍いな、靖友は。」
「え?」
「心配で目が離せん。」
福ちゃんはそう言うと・・・
誰もいない事を確認し・・・
「離れても俺にはおまえだけだ。」
そう言ってキスをした。