「福ちゃん・・・俺、大学受かったぜ。」
水分補給して落ち着いた俺は福ちゃんの隣に座るとそう言った。
「そうか・・・洋南に行くのか。」
「ああ。あそこには俺のやりてー事があるからな。」
まだ何を極めたいとかそういうのが決まってる訳じゃねえけど・・・。
「荒北。」
福ちゃんはそう言って俺を見ると
「お前と走れて良かったよ。」
相変わらずの鉄仮面でそう言った。
「福ちゃん・・・。」
「ありがとう、荒北。」
そう言って手を差し出した福ちゃん。
「何言ってんだよ。俺のほうが・・・。」
福ちゃんがいなかったら俺は高校を辞めていた。
人に当り散らして、何もかも人の責任にして・・・。
誰も近づかなかった俺に進むべき方向を示してくれたのは・・・
間違いなく福ちゃんだった。
「福ちゃんと出会えて・・・
自転車と出会えて俺の人生は変わった。」
普段は恥ずかしくて言えねーけど・・・
「ありがとう、福ちゃん。」
そう言って福ちゃんの手に自分の手を重ねた。
俺と福ちゃんの進む道はここで離れるけど・・・
俺にとって福ちゃんは特別だから。
そう思った時・・・
福ちゃんが俺の手を引いて抱きしめた。