「何故自転車をおりた。」
「はあ?」
「何故おりた。
お前は・・・
まだまだこれから伸びていく才能がある。」
才能?
「なに言っちゃってんの?俺にそんなもんあるわけねーだろ。」
金城の手を振りほどくと
「才能があるってのは福ちゃんや新開、東堂やお前の事を言うんだろうが。」
睨みつけるようにしてそう言った。
「俺は福ちゃんを運ぶためだけに自転車に乗ってたんだよ。他はなんもいらね。
だから福ちゃんを運ぶ仕事が終った今、もう自転車に乗る意味がねーの。わかったら帰れ。」
まっすぐ俺を見る目。
嫌いなんだよ、その目・・・。
福ちゃんと同じ目だ。
諦めを知らない目。
俺とは違う。
「だったら・・・。」
金城は俺から目をそらすことなく
「今度は俺を運んでくれないか、荒北。」
真剣な表情のままそう言った。