その日から俺は自転車に乗る事をやめた。
志望校も静岡の洋南大の工学部にきめた。
福ちゃんとはまるっきり反対方向の大学に・・・。
「荒北。お前もう自転車に乗らないってのは本当なのか?」
新開から聞いたのか、福ちゃんが俺を訪ねてきたのは、部屋から新開を追い出した2日後だった。
「別に・・・いつまでも乗れるもんじゃねーし。
っていうかさ福ちゃん、それ福ちゃんになんか関係ないんじゃなーい?」
笑いながらそう答え福ちゃんの肩に手を置き
「あの自転車、近いうちに返すわ。」
福ちゃんにしか聞こえない声でそう言って・・・
「じゃあな、福ちゃん。」
その場を後にした。
なんでって?
そんな事聞くなよ。
福ちゃんに必要とされてねーなら乗る必要ねんだよ。
求められてもねーのに福ちゃんと同じ道を行くなんて・・・。
それだけは・・・
できねえんだよ、福ちゃん・・・。
俺のちっぽけなプライドがそれを許さねんだよ。
「ちっちぇーなー・・・俺って。」