「たくみ、相楽が俺と付き合ってくれるって。」
その日の夜。
託生の部屋をノックもせずに訪れたギイ王子はそう言って託生を抱きしめた。
「俺の気持ち、通じたぜたくみ。たくみが応援してくれたから。」
弾んだ声でそう言うギイ王子にたくみの胸がチクリと痛んだ。
ギイ王子は託生を自分から離すとまっすぐに目を見て
「ありがとう、託生。」
そう言って笑った。
その笑顔が・・・
自分に向けられたものじゃない事は知っているのに・・・
胸がドキドキした。
「明日、たくみも一緒に相楽の所に行こうぜ。街、案内するから。」
幸せそうな笑顔にたくみは笑顔で頷いた。
「じゃあ明日な?託生。」
ギイ王子はそう言うと託生の部屋を後にした。
( ギイ王子は僕の運命の人じゃないのかな・・・ )
窓を開けて月を見る。
その下に広がる海。
自分の世界はあの海の底。
地上の花を手に入れることなんて出来ないんだよね。
もう一度会えたから・・・
それで充分だ。
自然と零れる笑み。
人を好きになるって幸せな気持ちになれるんだなー。
そう思っていた時・・・