「託生。」
突然聞こえた声は、空からだった。
カモメの駒澤が利久をくわえて飛んできた。
( え? )
「駒澤のバカ。俺水ないと死ぬんだぞ?」
「大丈夫。これ野沢に持たされた。」
そう言って投げた小さなカプセルが・・・
「おー、すげー。」
小さな水槽みたいなプールだった。
そこに駒澤が海の水を入れた袋を投げる。
「よし、とりあえずこれでいいか。」
( なにやってるの?利久。遊びに来たの? )
「違うよ、そんなんじゃないよ。大変なんだよ託生。」
( え? )
利久は駒澤に野沢が忘れていた注意書きを託生に渡すように言った。
「それ読んだらわかるけど・・・
キスをしないと託生、消えちゃうんだよ。」
( 消える? )
僕・・・消えちゃうの?
皆のところに・・・帰れないの?
託生は訳がわからなかった。
来る時の注意書きにはそんな事・・・
書いてなかった。
「とにかく王子様とキスしないと・・・。」
( 無理だよ。だって・・・だってギイ王子には相楽さんという恋人が出来たんだよ?ギイ王子の運命の相手みつかったんだから、ギイ王子とキスしたって・・・。 )
人間になれるわけないんだから。
託生はそのまま床に崩れ落ちた。
( 利久。他に方法はないの?僕が帰る方法は他にないの? )
皆のところに戻りたい、そう思って聞いた託生に
「・・・あるけど・・・
託生にできるとは思えないんだ。」
利久はそう言った。