「今日、何かあったのか?」
話しを変える為にそう聞くと、託生は驚いた顔で僕を見た。
「なんで?」
「なんか・・・さえない顔してたと思ってな。」
僕の言葉に託生は
「やっぱ章三には隠し事できないや。」
テーブルに皿を置いてそう言った。
「実はね・・・。」
託生は岬ちゃんの事を話してくれた。
最後に言ったのは・・・
ギイにまた取られた気がする・・・と。
また・・・
その言葉の意味を俺たちは知ってる。
戻ってこなかったギイ。
そして、歩くこと、音楽の道、両親・・・
すべてを諦めた事をさしていることを。
「ばかだろ?岬ちゃんが元気になるのはいい事なのに・・・。」
苦笑いする葉山に
「ギイの事はあまり考えるなよ。」
そう言って葉山の頭に手を伸ばした。