後期高齢者のハードル越えよ 有名人の死を考える 心筋梗塞・脳梗塞など血管系の突然死には…睡眠不足による疲労蓄積の共通点 ただ長く寝ればいいわけではない
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2024.3.15
昨年来、谷村新司さん(74歳)、八代亜紀さん(73歳)をはじめ70代前半でなくなられる有名人が目立ちます。死因はさまざまで、一概には言えませんが、いつまでも自分が若いと思い続け、若い時と同じように生きてしまうと死期を早めます。現役で活躍し続ける有名人の場合、知らず知らずに無理をしているケースもあります。
後期高齢者のハードルを越えるため、万人にとって大切なのが睡眠です。寝ることをおろそかにすると、食生活、運動など、どんなに体にいいことをやっても健康を害し、寿命を縮めます。
睡眠不足になると、思考や認知をつかさどる脳の機能がまず低下し、思考力や認知力、判断力、集中力が鈍ります。人の体は、運動や活動によって疲労し、細胞にダメージを負いますが、睡眠中に成長ホルモンが分泌されると、ダメージが修復されます。ところが、睡眠不足だと成長ホルモンの分泌が減ってしまいます。その結果、老化が進むのです。
睡眠不足がもっとも影響を及ぼすのが、血管系の疾患である心筋梗塞や脳梗塞などによる突然死です。元気で活躍していた有名人が、ある日突然亡くなったというニュースに私たちは驚きます。
亡くなった方のうち、歌手の小金沢昇司さん(65歳、呼吸器不全)、もんたよしのりさん(72歳、大動脈解離)、元プロ野球選手の門田博光さん(74歳、脳梗塞)、大相撲の寺尾常史さん(元寺尾、60歳、うっ血性心不全)は、いずれも血管系の疾患による突然死でした。
突然死はスポーツ選手に多く、近年では、元プロ野球ではほかに小林繁さん(58歳、心筋梗塞)、香川伸行さん(52歳、心筋梗塞)、木村拓也さん(38歳、くも膜下出血)、サッカーでは松田直樹さん(34歳、急性心筋梗塞)、大相撲の元大関・貴ノ浪さん(44歳、急性心不全)らが早世しました。
血管系の突然死には共通点があります。それは、睡眠不足で疲労が蓄積していたということです。睡眠不足が行き着く先は「死」です。ラットを使った「断眠実験」では、10~20日後にすべてのラットが死にます。
OECDが世界の33カ国を対象に行った各国国民の時間の使い方調査(2021年版)によると、日本人の平均睡眠時間は7時間22分。各国平均の8時間28分より1時間以上も短いのです。そのため、厚労省は「睡眠指針2023」をつくり、「成人は6時間以上」「小学生は9~12時間」「高齢者は個人の体調や生活状況に合わせた時間」など、年代別に適切な睡眠時間を確保することを推奨しています。成人の場合は6~8時間、高齢者は睡眠時間が加齢によって減ってゆきますが、最低でも6時間は必要です。
ただ長く寝ればいいということでありません。
高齢者の睡眠の特徴として「寝つきが悪い」「途中で目が覚める」「朝早く目が覚めてしまう」の3点が挙げられます。これは、高齢になるにつれて眠りを促す働きがあるホルモンのメラトニンの分泌量が減るからです。
メラトニンは日中に日光を浴びることで増えるので、なるべく外出を心がけるべきです。日光浴ウオーキングと熟睡がベストな健康法です。ただし、就寝前にスマホの光を浴びると、メラトニンの分泌量が抑制されます。よって「寝る前スマホ」は禁物です。スマホの使用時間と人の寿命との関係を調査した報告はありませんが、私はスマホのやり過ぎは死期を早めると思っています。
【あすは「大病を抱えた私の越え方」です】
■富家孝(ふけ・たかし) 医師、ジャーナリスト。1972年東京慈恵会医科大学卒業。病院経営、日本女子体育大学助教授、新日本プロレスリングドクターなど経験。著書計68冊。最新刊『それでもあなたは長生きしたいですか? 終末期医療の真実を語ろう』(ベストブック)が話題に。
大好調の意見
富家孝(ふけ・たかし)先生の貴重なご意見です。睡眠不足にならないように早く眠ることにしましょう。