高市政権「武器輸出解禁」で注目の「防衛関連銘柄」…三菱重工でも、川重でもない「日本企業4社の名前」

さかえだ いくこ((おせちーず)/大学常勤講師・日本FP協会認定CFP®/日本証券アナリスト協会認定証券アナリスト) によるストーリー

 • 3 日

2026.5.14 

 

 

防衛装備移転三原則の運用方針改正

2026年4月21日、日本政府は国家安全保障会議および閣議で「防衛装備移転三原則」とその運用指針を改正しました。1967年の「武器輸出三原則」、それに変わる新たな原則として2014年に制定された「防衛装備移転三原則」以来続いてきた武器輸出制限が大きく変わる転換点となります。

これまでは、救難・輸送・警戒・監視・掃海の「5類型」に限定する運用指針が壁となっていました。戦闘機やミサイル、護衛艦などの殺傷能力を持つ完成品の輸出は事実上困難でした。

 

今回の改定の最大の変更は5類型の撤廃です。装備品を「武器」(殺傷・破壊能力あり)と「非武器」に分類し、武器についても原則として移転を可能にしました。ただし、以下の厳格なルールが設けられています。

・「武器」の移転先は、防衛装備移転協定締結国など国連憲章に適合した使用を義務付ける国に限定。

・戦闘当事国への移転は原則禁止(安全保障上の特段の事情があれば例外容認)。

・個別案件はNSC(防衛政策、危機管理、外交戦略などを議論する国家安全保障会議)で厳格審査し、移転後の適正管理を徹底。

ルールから読み取れるのは、三原則そのものは維持し、平和国家としての基本理念や国際輸出管理枠組みの遵守でしょうか。

 

高市早苗総理は「安全保障環境が厳しさを増す中、同盟国・同志国の防衛力強化と、日本の防衛生産・技術基盤の維持が重要」と説明しました。共通装備品による部品融通で継戦能力を高め、抑止力向上と紛争未然防止につなげる狙いです。

この政策転換は、防衛関連企業にとって大きなビジネスチャンスを生む可能性が高く、投資家からも注目を集めています。防衛銘柄と言えばすぐに思い浮かぶのは、三菱重工業(東プ:7011)、川崎重工業(東プ:7012)、IHI(東プ:7013)あたりですが、本記事では敢えて誰もがすぐに思い浮かばない銘柄に焦点を当てます。

防衛事業で成長する精密機器メーカー

東京計器(東プ:7721)

1896年に日本初の計器工場 和田計器製作所として創業した精密機器メーカーです。船舶用ジャイロコンパス(*)で世界シェアトップクラスを誇る一方、防衛・通信機器事業が成長の原動力となっています。主力製品には航空機用レーダー警戒装置(RWR)、電子支援措置(ESM)、艦艇・潜水艦向け慣性航法装置、ジャイロ磁気コンパスなどがあります。これらは自衛隊の航空機や海上自衛隊の艦艇に搭載され、高い信頼性を評価されています。

 

防衛予算拡大の恩恵を直接受け、2025年3月期には防衛・通信機器事業が大幅増収。2026年3月期も2月に発表された第3四半期決算で上方修正を発表するなど業績は好調な見通しです。

今回の三原則改定で、同社のセンサー・航法・警戒機器の海外移転がしやすくなります。協定締結国(米豪英など17カ国)への輸出が増えれば、生産量拡大によるコスト低減と技術蓄積が期待できるでしょう。高市政権が目指す「防衛生産基盤の強化」と「同盟国との相互運用性向上」に、同社の技術がまさに適合しており、ニッチ分野での強みを活かした輸出拡大は中長期的な成長ドライバーとなりそうです。

 

2026年3月につけた9540円の高値から株価が20%下がっています。いい押し目買いのチャンスかもしれません。

(*)船舶用ジャイロコンパス――船の「真北(本当の北)」を正確に示す航海計器。地球の自転を利用して「真北」を自動的に探し出す。現代の500トン以上の大型船舶には搭載が法律で義務付けられている。

防衛産業特化のコンサル子会社設立

SHIFT(東プ:3697)

2005年創業のソフトウェアテスト・品質保証専門企業です。金融・製造・エンタメなど幅広い業界向けに、テスト自動化や工程管理、セキュリティ検証を提供し、急成長を遂げてきました。2025年10月には日経平均株価に採用されました。

防衛分野では2022年に防衛関連システムの工程管理案件を受託したのをきっかけに本格参入しています。2025年4月には防衛産業特化のコンサルティング子会社「Japan Aerospace & Defense Consulting(JADC)」を設立しました。JADCは、防衛省・関連企業向けに調査研究・技術支援・工程管理・RMF(リスクマネジメントフレームワーク)対応コンサルティングなどを展開します。装

備品移転に伴うシステム標準化、サイバーセキュリティ基準適合、国際共同開発のプロジェクト管理などで強みを発揮する。

 

三原則改定により、輸出先国との共同開発や部品供給が増えれば、複雑化する防衛ソフトウェアの品質保証・工程管理需要が大幅に拡大するでしょう。SHIFTのノウハウは、まさに「防衛装備の輸出拡大を支える裏方」になりそうです。ソフトウェア品質の専門性を武器に、防衛産業の“隠れた成長株”として再評価されています。政策追い風を活かし、JADCを通じた防衛コンサル事業が中長期的な収益ドライバーとなる可能性を秘めています。2026年1月頭につけた1014円の高値から約35%株価が下がっており、長い目で見れば割安な水準になってきたように見えます。

防衛でもトップクラスの技術力を誇る電機メーカー

三菱電機(東プ:6503)

大手総合電機メーカーです。家電ではエアコンや冷蔵庫がよく知られていますが、防衛電子分野・宇宙システム事業で世界トップクラスの技術力を誇ります。主力製品は地上・艦載用AESAレーダー(FPS-3ME、FCS-3Aなど)、航空機用火器管制レーダー、12式地対艦ミサイルのシーカー(誘導装置)、戦闘機用アビオニクス(GCAP次期戦闘機向け)などで、海上自衛隊イージス艦の多機能レーダーや航空自衛隊の警戒管制レーダーでも高い実績を積んでいます。

 

防衛装備移転三原則は2014年4月に制定されました。同社は制定後にフィリピンへの地上警戒管制レーダー輸出という日本初の完成品移転を実現しており、唯一の成功事例として注目を集めました。

同社の業績には防衛予算拡大も追い風になります。4月28日に発表された2026年3月期決算では防衛関連が業績をけん引し純利益過去最高を更新しました。2025年3月には2031年3月期に防衛システム事業売上高6,000億円・営業利益率10%以上を目指す中長期計画を公表していますが、その数値が上方修正される可能性があります。

防衛事業以外の分野では中東情勢緊迫に伴う、資材等の調達状況によっては業績へのネガティブ寄与がありそうなことが懸念材料ではあります。

防衛事業人員を4割増の計画も

NEC(東プ:6701)

ICT企業としてよく知られている企業です。防衛関連株の中でもIT・電子戦分野の代表銘柄として、輸出緩和による中長期成長が投資家から注目を集めています。

同社は長年、防衛省向けに警戒管制レーダー情報処理システム、自動警戒管制システム(JADGE)、指揮通信システム、野外通信システム、衛星通信などを手掛け、「防衛の通信はNEC」と称される信頼を築いてきました。海上自衛隊・航空自衛隊の指揮系統やサイバー防衛領域でも重要な役割を果たしています。

 

2025年11月に、防衛事業担当人員を2021年比で約4割増(+1,600人)とする計画を発表しています。今回の5類型撤廃により、協定締結国(米・豪・英・フィリピンなど)へのシステムや通信機器の輸出が現実味を帯びます。航空宇宙・防衛(ANS)事業は2025年3月期で売上高約3,700億円規模と全体の1割程度ですが、防衛予算拡大で大幅増収増益を続けています。

以前、筆者の記事では海底ケーブル銘柄としてご紹介していますが、防衛関連銘柄としても注目です。

 

大好調の意見

 防衛産業の今後の強大化が予想される。昔、産軍複合体が騒がれたものであるが大丈夫だろうか。