『 山 の 女 王 』



前回までのお話し  「山の女王 1」  「山の女王 2」  「山の女王 3」
「山の女王 4」  「山の女王 5」  「山の女王 6」





 女王様は、笑いながら指をさしました。

するとその方向に、道が開けました。

坑道の様にも見えますが、

しかしその道は、昼間のように明るく歩き易そうです。

スチュパーンは、この坑道に沿って歩き出しました。

そこでは女王様の部屋と同じように、

大地の宝が、上にも下にも、全ての壁にも、

たっぷりと見る事が出来ました。

坑道を抜けると、そこはちょうどあの採掘場でした。

そこまで来ると、スチュパーンの後ろで、

山の中の坑道は道を閉ざし、無くなってしまいました。

全てが、元の通りでした。

そして一匹のトカゲが這い出て来て、

スチュパーンの足に、元の様に鎖を巻きつけました。

ナースチャへのお土産がいっぱい詰まった、

大きなクジャク石の箱は、みるみる小さくなって、

スチュパーンの懐へと入る大きさです。

スチュパーンは急いで、小箱を懐へしまいました。

それからすぐ、この鉱山の監督が、やって来たのです。

監督は、スチュパーンを笑い者にし、

鞭を与えようと、採掘場の中へと下りて来たのでした。

ところが見ると、スチュパーンは、命令された数以上の、

しかも上質なクジャク石を掘り出していたのです。



『これはどうしたことだ?

 おまえ、どこからこれを掘り出した?』



監督は、採掘場の中をぐるりと見渡して言いました。



『ふん、こんなに良い採掘場なら、

 俺だけじゃない、誰にだってこの位、掘り出せるさ。』



と、スチュパーンは、笑って言い放ちました。



 それを聞いた監督は、スチュパーンを他の採掘場に移し、

この採掘場に、自分の甥を連れてきました。



 次の日も、スチュパーンは働きました。

スチュパーンが掘る所、掘る所、

上質なクジャク石がドンドン掘れます。

それに縄模様のある金属の塊までも、掘り出されました。



 ところが監督の甥がやって来て、掘っている採掘場は、

何一つ、良い鉱石は出ないのです。

石が出ても、使い物にならない鉛鉱やクズ石ばかりです。

それに引いていた水までもが、

またジワジワと沁み出てくる始末です。



 そこで監督は頭に来て、管理人に訴え出ました。

かくかく、しかじかと、

今までの経緯を訴えるたのです。

そして、



スチュパーンの奴は、

 自分の魂を、悪魔に売り渡したに違いありませんよ!』



と、言いつけました。

それを聞いた、管理人は、



『誰に魂を売り渡そうが、それは奴の勝手だ。

 こっちは、儲かりさえすれば良いんだ。

 良いか、スチュパーンの奴に伝えよ!

 もし1500キロほどの、大きなクジャク石を掘り出したなら、

 自由の身にしてやるとな。

 それから大きな石を採掘させる為に、

 スチュパーンの足の鎖を外させろ!

 それと、お前の甥が掘っている、クラスノゴールカ鉱山は、

 クズ石しか出ぬのだから、採掘を止めろ!』



と、監督に命令をしました。

この命令を受けて監督は、スチュパーンの足の鎖を外させ、

自分の甥に、採掘を止めるよう命令しました。

それから監督は、スチュパーンに管理人の言葉を伝えました。



『もし1500キロもの、

 大きなクジャク石を掘り出せたなら、

 お前を農奴から解放し、自由の身にしてやるとのことだ。』



『自由になりたくない者など居るものか!

 クジャク石が見つかるかどうかは、

 運次第だが、やってみるさ!』



と、スチュパーンは監督に答えました。



 それからしばらくして、スチュパーンは、

管理人の注文通りのクジャク石を掘り出したのです。

監督たちは、それを上に引き上げ、威張り散らしました。



『ほっほっほっ。これはわし等のものだ!』



約束通り、スチュパーン

1500キロもの、クジャク石を掘り当てたのに、

管理人は、スチュパーンを自由の身にはしませんでした。



~本日は、これにて~




ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。

おしまいっ。
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