『 山 の 女 王 』



前回までのお話し  「山の女王 1」  「山の女王 2」  「山の女王 3」  「山の女王 4」




(ああ、良かった。

 女王様は、俺の事を思い出してくれたんだな。)



と、スチュパーンは、心の中で思いました。



 すると突然、目の前がパッと明るくなりました。

輝いた先を見てみると、そこには女王様が立っています。



『良くやったわ、スチュパーン

 褒めてあげるわよ。

 「鼻っつまみのくず」の奴を怖がらなかったのね。

 立派だったわ。

 さあ、それじゃ、私たちの結婚式のための、

 私の持参金でも観に行きましょうよ。

 私も、あんたとの約束を守るわ。』



 女王様は、少し困ったように顔を曇らせました。

それからパンパンと手を叩くと、

沢山のトカゲが走り寄って来て、

スチュパーンの鎖を外しにかかったのです。

それから女王様は、蜥蜴たちに



『監督の命令した数の、倍の石を揃えなさい。

 クジャク石は、一番上等の、

 絹のように滑らかな物を選びなさい。』



と言い、それからスチュパーンに、



『さあ、私の花婿さん、

 私の持参金を見に参りましょう。』



と、言うと、2人で出かけて行ったのです。

女王様が先に立ち、スチュパーンはその後に付いていきました。

女王様が行くところは、どこも山が開きました。

土の中は、大きな部屋の様になっており、

壁は、色とりどりです。

壁一面が緑色だったり、金色の斑点が入っていたり、

また銅の花が咲いている壁もあります。

銅の花は、青かったり、赤かったり、

なんともいえぬ、美しさを醸し出していました。

それにつられて、女王様のドレスの色も、

クルクルと変わりました。

色付きのガラスの様に、透明に光っていると思ったら、

突然、くすんだ色の光を放ったり、

ダイヤモンドを散りばめたようにキラキラ輝いたかと思うと、

また銅の鈍い色に戻り、

絹の様に滑らかな緑の光を薄っすらと浮かべたりするのです。

2人は、先へ先へと歩いて行きました。

すると女王様が、突然、足を止めました。



『この先は、何キロメートルも斑点模様のある、

 黄色や灰色の鉱石の壁が続くのよ。

 見ても、楽しくないわね。

 ここはちょうど、クラスノゴールカ鉱山の真下に当るの。

 グミョーシキ銅山の次に大切な、私の宝よ。』



 スチュパーンの目の前には、広々とした、

大きな部屋が広がっていました。

そこにあるベッドや、テーブルや椅子などは、

皆、高価な鉱石で出来ていました。

壁は、ダイヤモンドを散りばめた、クジャク石。

天井は、黒光りする鉱石の為に、

暗赤色(あんせきしょく)になっており、

そこにも、銅の花が咲き乱れていました。



『ちょっと、ここで休んで、少しお話ししましょう。』



 と、女王様が言いました。

女王様も、スチュパーンも腰を掛けました。

すると、女王様は、スチュパーンに、



『どう?私の持参金を見たわね。』



と、尋ねました。



『うん。見たよ。』



『じゃあ、結婚の話はどうするつもり?』



 スチュパーンは、どう答えて良いか困ってしまいました。

実は、スチュパーンには、結婚を決めた女性が居たのです。

女王様ほどでは無いけれども、

器量良しの上、とても働き者の、良い娘なのです。

スチュパーンは、迷ってしまいました。



『あんたの持参金は、山の王様に相応しい。

 けれども、俺は生憎、普通の人間だから・・・』



と、スチュパーンは、言いました。



『あら、あんたお世辞を言っているの?

 さあ、ぐずぐず言わずに、ハッキリ言いなさい。

 私と、結婚するの、しないの? どっちなの?』



女王様は、すっかり顔を曇らせてしまいました。



~本日は、これにて~




ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。

おしまいっ。
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