『 山の女王 』



前回までのお話し  「山の女王 1」  「山の女王 2」  「山の女王 3」
「山の女王 4」  「山の女王 5」





 女王様は、すっかり顔を曇らせてしまいました。

そこでスチュパーンは、胸の内をハッキリと言いました。



『あんたと、結婚するわけにはいかないんだよ。

 俺には、結婚を約束した娘がいるんだ。』



スチュパーンは、こう言ったのですが、

内心は、女王様を怒らせてしまったら、

どんな仕打ちをされるかと、ビクビクしたのです。

ところが女王様は、それを聞いて嬉しそうにしたのです。



『えらいわ、スチュパーン

 管理人の事で、あんたを褒めたけど、

 今度は、その倍も誉めてあげるわ。

 あんたは、私の宝に、目もくれなかった。

 それにあんたの許嫁のナースチャ

 石像に変えてしまうような、馬鹿な真似もしなかった。』



 これを聞いた、スチュパーンは、驚きました。

スチュパーンの許嫁の娘の名は、ナースチャ

女王様が、そのことを知っていて、

結婚をどうするかと、聞いてきたからです。



『さあ、スチュパーン

 あんたへの褒美に、

 あんたの許嫁に、良い物をあげましょう。』



そう言うと、女王様は、

クジャク石の大きな箱を、スチュパーンに渡しました。



 スチュパーンは、その手箱を開けました。

中には、指輪や、耳飾り、髪飾りや首飾りなど、

多くの若い娘が喜びそうなアクセサリーが、

沢山入っていたのです。

それにどんなに金持ちの娘であっても、

こんなに高価な石で出来たアクセサリーは、

きっと持っていないでしょう。



『有り難いけれども、

 どうやって、こんなに大きな重たい石の箱を、

 外へと運びだせばいいんだ?』



スチュパーンは、女王様に聞きました。

すると、



『そんな事は、心配いらないわ。

 何もかも、私が上手にやってあげるから。

 管理人からも、あんたを自由にしてあげましょうね。

 若い花嫁さんと、仲良く良い暮らしが出来るようになるわ。

 ただし一つだけ、忘れずに覚えておきなさい。

 私の事は、決して思い出してはならないわ。

 あんたを試す、3番目の事は、これよ。

 さあ、それではちょっと食事をしていきなさい。』



と、女王様はスチュパーンに言い、

パンパンと、手を叩きました。

するとトカゲたちがまた、走り寄ってきました。

そしてあっという間に、テーブルの上に、

ご馳走をいっぱいに並べたのです。

スチュパーンは、喜んでご馳走を食べました。

そして食べ終わると、再び女王様は、



スチュパーン、それじゃこれでお別れです。

 良い事、決して、私の事を思い出してはダメよ。』



そう言いながら、女王様の目からは、

涙がぽろぽろと、零れ落ちておりました。

そして涙が、ポトンポトンと女王様の手の平に落ちると、

それは固まり、涙の玉が一握り分も出来上がったのです。



『さあ、これを暮らしの足しに持って行きなさい。

 これを売れば、沢山のお金になる。

 あんたは、直ぐに大金持ちになれるわ。』



 と、女王様は涙の玉をスチュパーンに手渡しました。

玉は氷の様に、冷たい物でした。

でも女王様の手は、人間の様に温もりがあり、温かく、

しかし、かすかに震えていました。



 スチュパーンは、玉を受け取ると、

深く深くお辞儀をして聞きました。



『女王様、俺はこれからどっちに行ったら良いのだろう?』



 スチュパーンは、少し強がってこう訊ねましたが、

心の内には、少し寂しがありました。



 女王様は、笑いながら指をさしました。



~本日は、これにて~




ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。

おしまいっ。
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