『 忠 実 な 友 』



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緑色の紅スズメは、ハンスと粉屋の話しを続けました。



 こうして小さなハンスは、粉屋の為にせっせと働き、

 粉屋は友情について、

 ありとあらゆる美しい言葉を口にするのでした。

 するとハンスはそれを手帳に書き留めて、

 何しろ、もともと大変な勉強家なので、

 毎晩繰り返して読むのでした。



 さてある晩の事、

 たまたま、小さなハンスが炉端に座っていると、

 どんどんと戸を叩く大きな音がしました。

 たいそう荒れ模様の夜だったので、

 家の周りを風がピュウピュウとたけり狂っていたので、

 その音は最初、ハンスは嵐のせいだとばかり思っていました。

 ところが、もう一度音がして、

 それからまた、今度は前のどちらよりも大きな音がしました。



「『誰か気の毒な旅の人だろうか?』」



 独り言を言うと、ハンスは戸口に行きました。

 ハンスが、戸をあけてみると、

 そこには粉屋が片手にカンテラを下げ、

 片手に大きな杖を携えながら立っていました。



「『ハンス君、わしは今、とても困っておる。

 うちの一番下の小さな息子が、

 梯子から落ちて怪我をしたので、

 医者を呼びに行く所なんだ。

 ところが医者の家は遠い。

 それにこんな嵐の夜だから、

 わしの代わりに君が行ってくれたら、

 その方がずっと良かろうと、

 ここについた時に、考えたのだよ。

 何しろ、君には手押し車をあげるんだからね。

 そのお返しに何かしてくれても、

 いわば当然の話じゃあないか?』」



「『ようございますよとも。

 私の所へ来て下さったのは、

 全くもって有り難い事だと思います。

 今すぐに出かけましょう。

 ですが、そのカンテラをお貸しくださいませんか?

 真っ暗な晩だし、

 側溝に落ちるかもしれませんからね。』」



「『ハンス君、誠にすまんが、

 これは新しいカンテラなんでね、

 こいつがどうかしたら大損害なんだよ。』」



「『そうですか、いやなに、大丈夫です。

 カンテラ無しでも、何とか行ってみましょう。』」



 と、小さなハンスは叫ぶと、

 大きな毛皮の外套と、暖かい真っ赤な帽子を降ろして、

 喉にマフラーを巻き付け、出かけて行きました。



 それはどれほどまでに、恐ろしい嵐だったのでしょう。

 嵐の上に真暗な夜だった為、

 ハンスには周囲がほとんど何にも見えません。

 余りの風に、立っていられない位です。

 しかしハンスはとても勇気がありました。

 3時間も歩いた末、医者の家に着いて戸を叩いたのです。



「『誰だい?』」



 医者は、寝室の窓から顔を出して言いました。



「『私は、小さいハンスです、先生。』」



「『こんな嵐の夜に、何のようだいハンス君。』」



「『粉屋の息子さんが、梯子から落ちて、

 怪我をしてしまったので、

 先生に直ぐに来ていただきたいと申してます。』」



「『なんと! 宜しい。』」



 医者は言いました。



~今日は、このあたりで~




ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。

おしまいっ。
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