『 忠 実 な 友 』



前回までのお話し  「忠実な友 1」  「忠実な友 2」  「忠実な友 3」




緑色をした紅スズメは、お話しを続けます。



「『上手に振る舞う人が多いがな、

 話の上手な人となると、至って少ない。

 つまりだな、その二つの中で話す方が

 ずっと難しいってことさ。

 それにまたずっと、その方が立派な事でもあるのさ。』」



 粉屋はそう言うと、テーブル越しに

 小さな息子を怖い顔で睨みつけたのです。

 息子は恥ずかしさの余り、うつむき、

 真っ赤になって泣き出し、

 涙をお茶の中にこぼしました。

 しかしまだ、ほんの子供だったのだから、

 勘弁してやらなければならないのですよ。』



『へぇ。それで話はおしまいかい?』



と、川ネズミが尋ねました。



『いいえ、どうしてどうして。

 これはほんの始まりの部分ですよ。』



と、紅スズメは答えました。



『それじゃぁお前さんは、まったくの時代遅れそのものだ。』



と、川ネズミは言いました。



『昨今では、上手い話し手というものは、

 誰でも、終りから話し始めて、

 それから最初へと進み、真ん中で終わるものだよ。

 それが新しい方法なんだぜ。

 先だって、青年を連れて池の周りを歩いていたら、

 批評家から、その事を聞いたんだがね。

 その批評家は、長々と問題を論じていたけれど、

 きっと正しかったと思う。

 だって青いメガネをかけて頭が剥げていたからね。

 そして青年が何か言うと、その度にいつも、

 「ふむ!」と答えるんだ。

 だが、どうかこの事は気にせず、

 紅スズメさん、話を続けてくれたまえ。

 わしは、その粉屋がひどく気に入ったよ。

 わし自身が、ありとあらゆる美しい情操を持っている、

 だから我々の間には、大きな共感があるんだ。』



『さて』 と、緑色をした紅スズメは言うと、

左右の片足を交互に、ピョンピョン飛び跳ねました。



『冬が終って、春が来て、

 桜草が薄黄色の星型の花を開き始めるや否や、

 粉屋は、小さなハンスに会いに出かけるよと、

 女房に伝えました。



「『まあ、あんたは何て優しい心の持ち主なんでしょう。

 いつだって人様の事を考えていらっしゃるんですもの。

 良い事、必ず、花を入れる大きな籠を持って行ってね。』」



 と、女房は大声で言いました。



 それで粉屋は、籠を片手に丘を降りて行ったのです。



「『おはようハンス君。』」 と、粉屋は言いました。



「『おはようさん。』」



ハンスは、鋤(すき)にもたれながら

満面の笑みで、そう言いました。



~今日はこれにて。~




ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。

おしまいっ。
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