『 忠 実 な 友 』
前回までのお話し 「忠実な友 1」 「忠実な友 2」 「忠実な友 3」
「忠実な友 4」 「忠実な友 5」 「忠実な友 6」
緑色の紅スズメは、粉屋とハンスの話しを続けました。
「『ああ折角ですが、今日はもう目の回るほどの忙しさでね。
つる草は止めなければならず、花には水をやらねばならず、
草原もすっかり均らさねばならず・・・』」
「『なるほど。
だがな、手押し車をあげるんだから、
断るとは、案外君も友だち甲斐の無い男だと思うが。』」
「『いや、そうは仰らないでください。
なんとしても、友だち甲斐が無いと言われたくありませんから。』」
そう言うとハンスは、帽子を取りに家のなかへ駈けこみ、
それから、大きな袋を肩に担いで、てくてくと出かけました。
たいそう暑い日で、道路はひどく埃っぽく、
ハンスは6つ目のマイル標石に着く前に疲れはて、
腰を下ろして休まなければなりませんでした。
しかし雄々しくも歩み続けて、とうとう市場へ着いたのです。
そこでしばらく待っていてから、
粉袋をとても良い値で売ると、すぐ家に戻りました。
というのは、余りぐずぐずしていると、
途中で泥棒に出遭うかも知れず、それが心配だったからです。
「『いやはや、とても辛い1日だったわい。』」
ハンスは寝床につきながら、独り言を言いました。
「『でも粉屋の頼みを断らなくて良かったよ。
だってあの人は、私の一番の親友だし、
それに手押し車をくれるつもりなのだから。』」
あくる日、朝早くに
粉屋は粉袋の代金を受け取りにやってきました。
しかし小さいハンスはすっかり疲れはてていたので、
まだ、寝床についたままでした。
「『いやはや、君も随分怠け者だな。
全く、手押し車が貰えるんだから、
もっと精を出して働いてもよさそうなものだと思うがね。
怠惰は、大きな罪だよ、君。
だからわしの友達は誰でも、
怠け者やものぐさになって欲しくないんだよ。
わしが歯に衣着せず、物を言うのを気にしちゃ駄目だぜ。
勿論、君の友人でなきゃ、
そんな物の言い方をしようなどとは、夢にも思わん。
しかしだよ、折角の友情が何の役に立つかね?
もし、思った通りのことが言えないとしたら?
素敵な事を言って、なんとか人の機嫌を取ったり、
おべっかを使ったりすることなら、
誰にだってできる事さ。
ところが、真の友人は常に、不愉快な事を口にし、
苦しみを与えても気にしないものなんだ。
実際、本当に真の友人ならその方を選ぶさ。
その時こそ、良い事をしているんだと知っているからさ。』」
「『どうも あいすいません』」
と、小さなハンスは、目を擦り、
ナイトキャップをぬぎながら言いました。
「『ただ、クタクタに疲れてしまったのものですから。
しばらくベッドに横になって、
小鳥たちの歌うのを聞いていようと思ったので、
ご存じでしょうか?
私は小鳥の歌を聞いた後は、
いつでも一層、仕事に精が出るのでしてね。』」
「『そうかい、そいつは有り難い。』」
と、粉屋は言うと、小さなハンスの背中を叩きました。
~今日は、ここまで。~
ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。
おしまいっ。