この記事は、穂吉のブログの「2012-10-09 16:36:12」にUPした『日本の神話148. ~第四部 大和~  =第十二章 景行(けいこう)天皇=』という記事を再編成してUPしています。



最初のお話し 『日本の神話01』     前回のお話し 『日本の神話147』



 この回も、大君、大帯日子淤斯呂和気命様の御世のお話しです。

 走水海峡(はしりみずのかいきょう)(三浦半島)を、御舟で渡ろうとすれども、海峡に住む神が起こす大波の為に舵がきかず、立ち往生する倭建命様。

 その時、

『わたくしが夫君(せのきみ)の身代わりとなり海へと入りましょう。どうか夫君は、大君のご指示の通りに、この先の地の平定を無事にお果たしになり、そのご報告を、大君へ首尾良くなさってくださいませ。』

そう言われたのは、都より共に旅をされていらっしゃった倭建命様の后、弟橘比売命(おとたちばなひめのみこと)様でした。

『やめろ!!』

 制止される皇子様の言葉も后には届きません。海に入られる準備を独人でされてゆかれるのです。

 菅畳(すがたたみ・蓆(むしろ))を八重に敷き、その上に皮畳をも敷きつめ、更に絁(あしぎぬ)(あまり高級では無い絹織物)を上に敷き詰めた御座を海の波間に浮かべました。

 そしてその上に弟橘比売命様は、御舟より降りられ静かに座られたのです。

『さねさし相模(さがむ)の小野(おの)に 燃ゆる火の火中(ほなか)に立ちて 問ひし君はも』

(相模の野で燃え盛る炎の中、貴方は、私の身を優しく案じてくださいましたね。)

 夫、倭建命様へのお歌を詠まれながら、入水されたのでした。

 するとその途端、波は静まり、皇子様の御舟は対岸へと無事に辿り着くことが出来たのでした。

 悲しみにふける倭建命様は、幾日も辿り着いた海岸から、后が入水した海を眺められ、その場を離れようとはなさいませんでした。

 そうして后が入水して七日ばかりがすぎた頃です。

 弟橘比売命様の御髪(おぐし)にさされていた櫛が、皇子様の足元に流れ着いたのです。

 その櫛を拾い上げると、漸く諦めの付いた皇子様は、この地に后の御陵(ごりょう)(墓)を造られたのです。

 そしてそこには后の形見として流れ着いた、一枚の櫛を埋葬いたしました。

 そして再び、朝廷に刃向う者共を平定する為に、倭建命様は立ち上がられたのでした。



- 追 記 -

今回、『櫛を埋葬する』と云う所で、「(一)枚」と言う単位で数えさせていただきましたが、本来、「櫛」を数える単位としては、3つの数え方があるようです。
「枚(まい)」、「本(ほん)」、「具(ぐ)」という単位です。

細長い櫛に対しては、「本」を使っても良いようです。
また、別の道具(髪を結ぶ飾り・かんざし等)と一揃えのセットになっている物に対しては、「具(ぐ)」という単位を使うようです。

それから、「櫛の歯」は、髪の毛を「梳る(くしけずる)」物である為、刃物の刃と同様に「枚」で数える事も多いようです。


ここまで読んでくださって、ありがとうございます。

おしまい。
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