この記事は、穂吉のブログの「2012-05-23 17:02:32」にUPした『日本の神話09. 第一部 創世  第一章 世界の始まり』という記事を再編成してUPしています。



最初のお話し 『日本の神話01』     前回のお話し 『日本の神話08』



 伊邪那岐様は、一体どの位の時間を待ち続けているでしょう。

 待てど暮らせど、亡くなった愛する妻の伊邪那美様はこの場へ戻っては来ません。

 とうとう待ち切れなくなった伊邪那岐様は、左側の美豆良(みずら)に挿していた櫛の歯を一本折り、それに火を灯し松明の代わりとして、黄泉の御殿の奥へと入って行きました。

 暫く歩いていると、何やら蠢(うごめ)く者がおりました。

 伊邪那岐様は、それを松明の明かりで照らしてみたのです。

 するとそれは変わり果てた、伊邪那美様のお姿だったのです。

 美しかった伊邪那美様の肉体は、見るも無残に腐敗していたのです。そしてその腐った肉体には蛆や百足がたかり、蛆はコロコロと音を立てながら転がりまわっていたのです。

 そればかりではありません。

 頭、胸、腹、陰部、両手、両足の八か所からは雷鳴が轟き、八柱の神々、いいえ、とても神とは呼べぬ悍(おぞ)ましき禍禍しきモノ、『八種雷神(やくさのらいじん)』が生まれたのです。

 そのあまりの恐ろしさに、直ぐさま伊邪那岐様は、その場から逃げ出しました。

『私は見ないで下さいと言ったのに…。よくも、私に恥をかかせましたね。』

 逃げる伊邪那岐様の背後から、怒りに満ちた伊邪那美様の低い声が轟いてきました。

 振り返ると、伊邪那美様に命令された黄泉の国の穢れを纏った醜女(しこめ)達が伊邪那岐様を追いかけてくるではありませんか。

 醜女達は足が速く、あっという間に伊邪那岐様のすぐ後ろまで迫ってきました。

 どうしようかと考えた伊邪那岐様は、髪につけていた御鬘(みかずら)を放り投げました。

 御鬘の玉(勾玉(まがたま)のこと)が地面に落ちると、それは山葡萄の粒に変化したのです。

 醜女達は、ご馳走である山葡萄を我先にと貪り始めました。

 その間に伊邪那岐様は、黄泉の出口へと急ぎます。

 しかし山葡萄を食べ終えた醜女達は、またもの凄い速さで、伊邪那岐様のすぐ後ろまで迫ってきました。

 再び、どうしようか考えた伊邪那岐様は、今度は右側の美豆良に挿してある櫛の歯を折り取って投げました。

 すると美豆良の櫛の歯の落ちた場所からは、次々と竹の子が出てきたのです。

 醜女たちがまたそれを貪り喰っている間に、伊邪那岐様は黄泉の出口へと急がれたのでした。



- 追 記 -

『美豆良(みずら)』とは、古(いにしえ)の高貴な男性の髪形で、『髪を頭の中央から左右に分け、両耳の辺りで先を輪にして紐で結んだ形』の事を言います。漢字は、当て字ですので、他にも沢山の書きようがありますが、ここでは私が知っている漢字を当てさせてもらいました。この美豆良に挿してある櫛には、魔よけの意味があると言われています。

『醜女(しこめ)』とは読んで字のごとく、『醜い女の姿をした魔物』として、ここでは描かれています。昔話に良く出て来る、『山姥(やまんば)」の原型ですね。

それから『御鬘(みかずら)』とは髪飾りの一つで、蔓などの紐状のものに『玉(勾玉(まがたま)』等を通した髪飾りです。これも魔よけの一種と考えられます。



ここまで読んでくださって、誠にありがとうございました。

おしまいっ。
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