こんにちは、第一法規「法律トリビア」ブログ編集担当です
前回は、最も短い法律を決める前提として、
法律の長さの比べ方にはいくつかの考え方があることを見てきました。
そこで今回は、短い法律を比較して、
・短編部門 ~本則のみの文字数で比較
・中編部門 ~本則+附則の文字数で比較
・長編部門 ~題名、条項番号なども含め、全部の文字数で比較
というように「部門」別にランキング付けしてみたいと思います。
◯短編部門・・・本則の条文だけで比較する
まずは、「短編部門」です。
ここでは、それぞれの法律の中核である、本則の条文の長さだけで比較してみます。
◆第1位
陪審法ノ停止ニ関スル法律・・・12字
陪審法ハ其ノ施行ヲ停止ス〔※12字〕
第1位は、「陪審法ノ停止ニ関スル法律」となりました。
次にご紹介する第2位のおよそ半分の字数という、圧倒的な差でした。
なお、この法律はカタカナ法なので、有利な点があります。
仮に、この条文を現在の条文の書き方で書いてみると、次のようになると思います。
陪審法(大正十二年法律第五十号)は、その施行を停止する。〔※28字〕
このように、
・「陪審法」という法律名の後に、法律番号が入る
・「、」「。」が入る
ことになり、こうすると28字となるため、第2位の法律の字数より多くなります。
カタカナ法の場合はこういう所が短くてすむので、有利なわけです。
◆第2位
昭和天皇の大喪の礼の行われる日を休日とする法律・・・23字
2番目に短い法律は、
23字の「昭和天皇の大喪の礼の行われる日を休日とする法律」となりました。
昭和天皇の大喪の礼の行われる日は、休日とする。〔※23字〕
◆第3位
外国の領事官に交付する認可状の認証に関する法律・・・25字
外国の領事官に交付する認可状は、天皇が、認証する。〔※25字〕
第3位には、「外国の領事官に交付する認可状の認証に関する法律」が入りました。
ひらがな法は「、」や「。」が使われており、
カタカナ法と比べるとどうしても長くなる要素があるのですが、
その中でも、2番目、3番目はひらがな法でした。
◯中編部門・・・本則と附則の条文の文字数の合計で比べると
次に、「中編部門」です。
ここでは、本則と附則の条文の文字数の合計で比較してみます。
◆第1位
記名ノ国債ヲ目的トスル質権ノ設定ニ関スル法律・・・26字
民法第三百六十四条ノ規定ハ記名ノ国債ニハ之ヲ適用セス〔※26字〕
先ほどの「短編部門」ではランク外だった
「記名ノ国債ヲ目的トスル質権ノ設定ニ関スル法律」が、トップに躍り出ました。
この法律には附則がありません。
しかも、明治37年に制定されたときは「民法第三百六十四条」の部分が
「民法第三百六十四条第一項」となっていたのが、
平成17年に改正されて「第一項」の3文字がなくなったため、
さらに短くなり、現在では全体で26文字になっています。
◆第2位
外国の領事官に交付する認可状の認証に関する法律・・・42字
第2位には「外国の領事官に交付する認可状の認証に関する法律」が入りました。
この法律は、本則が25字、附則が17字で、合計42字となっています。
外国の領事官に交付する認可状は、天皇が、認証する。〔※25字〕
〔附則〕
この法律は、公布の日から施行する。〔※17字〕
◆第3位
失火ノ責任ニ関スル法律・・・50字
★失火ノ責任ニ関スル法律(明治32年法律第40号)
第3位は50字の「失火ノ責任ニ関スル法律」となりました。
この法律も、附則がないことが有利に働きました。
こうしてみると、
第2位の「外国の領事官に交付する認可状の認証に関する法律」は、
附則もありながら全体で42字に収まっていて、
とてもコンパクトな法律であることが分かります。
○長編部門・・・全部含めて比べると
最後は、「長編部門」です。
題名、条項番号、見出し、「附則」の2文字も含めた全体の長さで比べてみましょう。
◆第1位
記名ノ国債ヲ目的トスル質権ノ設定ニ関スル法律・・・48字
民法第三百六十四条ノ規定ハ記名ノ国債ニハ之ヲ適用セス〔※26字〕
「記名ノ国債ヲ目的トスル質権ノ設定ニ関スル法律」は、
題名22字、本則26字、附則はなし、ということで、
先ほどの「中編部門」に続きトップでした。
◆第2位
失火ノ責任ニ関スル法律・・・61字
★失火ノ責任ニ関スル法律〔※11字〕(明治32年法律第40号)
「失火ノ責任ニ関スル法律」は、題名11字、本則50字、附則なしで、合計61字でした。
題名が短いことが効いて、
「中編部門」の第3位から、「長編部門」では第2位に上がりました。
◆第3位
外国の領事官に交付する認可状の認証に関する法律・・・67字
外国の領事官に交付する認可状は、天皇が、認証する。〔※25字〕
附則〔※2字〕
この法律は、公布の日から施行する。〔※17字〕
「外国の領事官に交付する認可状の認証に関する法律」は、
題名23字、本則25字、「附則」の2字、附則の条文17字で、合計67字となり、
第3位に入りました。
○ちなみに、廃止された法律はどう?
参考までに、廃止された法律の中で、短いものを見てみましょう。
「商法中署名スヘキ場合ニ関スル法律」は、廃止された法律ですが、
題名16字、本則31字、附則なしということで、合計48字です。
★商法中署名スヘキ場合ニ関スル法律〔※16字〕(明治33年法律第17号)〔※現在は廃止〕
商法中署名スヘキ場合ニ於テハ記名捺印ヲ以テ署名ニ代フルコトヲ得〔※31字〕
先ほどのランキングに当てはめると、
「中編部門」では第2位に、「長編部門」では同点1位になります。
ということで、附則がないことや、カタカナ法の短い表現であることが、
法律の短さには大きく影響することが分かりました。
もっと短い法律を見つけた方がいらっしゃったら、是非ご連絡ください。
(この記事は、2018年3月18日時点の法令情報に基づいています)
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いかがでしたでしょうか。
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是非、次回もお楽しみに
by 第一法規 法律トリビア編集担当