「法鉄」の世界 〜電車の運転士さんが守らなければいけないこと | いくつ知ってる?法律トリビア【第一法規】

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こんにちは、第一法規「法律トリビア」ブログ編集担当ですカナヘイピスケ

 

法律という切り口から鉄道の世界を探る「法鉄」シリーズ。

前回は、電車の運転士さんにも運転免許が必要か、を探ってみました。

今回は、はれて電車の運転士になった人が、

どんなことを守らなければならないか、見ていきたいと思います。

 


  つながるうさぎ 法鉄記事の一覧はこちら ⇒ 「法鉄」の世界 ~ 記事まとめ つながるうさぎ



◯おおもとは「鉄道営業法」

鉄道営業に関する決まりの書かれている「鉄道営業法」を見ると、

電車の運転に関する詳しい規定は国土交通省令に定められていることが分かります。

 鉄道営業法(明治33年法律第65号)
  第1条
   鉄道ノ建設、車輛器具ノ構造及運転ハ国土交通省令ヲ以テ定ムル規程ニ依ルヘシ

この規定に基づいて、

「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」という省令が定められています。

 鉄道に関する技術上の基準を定める省令(平成13年国土交通省令第151号)
 〔制定文〕

   鉄道営業法・・・第1条の規定に基づき、鉄道に関する技術上の基準を定める省令を次のように定める


この省令には、

・駅や線路など、鉄道の設備に関する決まり
・鉄道係員が守らなければならないこと
・鉄道の車両が満たさなければならない基準

といった、鉄道に関するあらゆる分野にわたり、具体的な決まりが書かれていて、

初めて条文を見たとき、「宝の山だ!」と思いました。

というわけで、

この中に、電車の運転士さんが守らなければならないルールも書かれています。

なお、前回の記事でご紹介しましたが、この省令は、電車の運転免許試験に出てくる科目です。

ですので、自分が電車を運転する姿を想像しながら、見ていきたいと思います!


◯列車の間隔を空けましょう

第101条第1項には、列車の運転にあたっては、

他の列車との間隔について、安全が確保されるようにしなければならない…と定められ、

続いて、その具体的な手段が三つ挙げられています。

①  「閉そく」による方法・・・列車の走る区間を区切って、一つの区間には同時に

   一つの列車しか入らないようにするという方法です。
②    列車間の間隔を確保する装置を使う方法
③    運転士が、前方の見通しなど、安全運転に必要な条件を考慮して運転する方法

また、第2項では、例外として、

救援列車を運転する場合などは、上記とは別の安全確保措置を講じた上で、

列車を運転できるとされています。

 鉄道に関する技術上の基準を定める省令
 (列車間の安全確保)
  第101条第1項

   列車は、列車間の安全を確保することができるよう、次に掲げるいずれかの方法により運転しなければならない。ただし、停車場内において、鉄道信号の現示若しくは表示又はその停車場の運転を管理する者(管理する者があらかじめ指定する者を含む。)の指示に従って運転する場合は、この限りでない。

   一 閉そくによる方法
   二 列車間の間隔を確保する装置による方法

   三 動力車を操縦する係員が前方の見通しその他列車の安全な運転に必要な条件を考慮して運転する方法
  第2項
   救援列車を運転する場合又は工事列車がある区間に更に他の工事列車を運転する場合であって、その列車の運転の安全を確保することができる措置を別に定めたときは、前項の規定によらないことができる。

 


◯電車は、一番前で運転しましょう

第102条には、

 

運転士は、先頭車両の一番前で運転をしなければならない、と書かれています。

 鉄道に関する技術上の基準を定める省令
 (列車の操縦位置)
  第102条
   動力車を操縦する係員は、最前部の車両の前頭において列車を操縦しなければならない。ただし、列車の安全な運転に支障を及ぼすおそれのない場合は、この限りでない。

この規定には、上記のようにただし書きがあり、
安全運転に支障がないときは、先頭車両の最前部以外のところで運転できるとされています。

一番前じゃないところで運転する…このただし書きは、どんな場合に使われるのでしょうか?

調べたところ、
機関車を先頭にした列車が駅で折り返す場合に、機関車が最後尾になって、
前にある車両を押して運転することがあり、これを「推進運転」というのだそうです。


◯安全な速度で運転しましょう

列車は、線路・電線の状態、車両の性能、運転方法、信号などに応じて、
安全な速度で運転しなければならないと規定されています。

 鉄道に関する技術上の基準を定める省令
 (列車の運転速度)
  第103条
   列車は、線路及び電車線路の状態、車両の性能、運転方法、信号の条件、列車防護の方法等に応じ、安全な速度で運転しなければならない。


ちなみに、この規定の中に「線路及び電車線路」と書いてあり、

一瞬「?」と思ってしまいましたが、

「電車線路」とは、変電所から送り出された電気を車両に伝えるために、

沿線に設けられた電線路のことだそうです。


◯後戻りをしてはいけません

列車は、「退行運転」(後戻り)をしてはいけないとされています。

ただし、後続列車を進入させないようにしているなどの場合は、

例外的に退行運転ができます。

 鉄道に関する技術上の基準を定める省令
 (列車の退行運転)
  第104条

   列車は、退行運転をしてはならない。ただし、列車が退行する範囲内に後続列車を進入させない措置その他列車の安全な運転に支障を及ぼさない措置を講じた場合は、この限りでない。


◯酒気帯び運転はいけません

鉄道にも、自動車と同様に、酒気帯び運転を禁止する規定があります。

 (動力車を操縦する係員の乗務等)
  第11条第3項
   動力車を操縦する係員は、酒気を帯びた状態又は薬物の影響により正常な操縦ができないおそれがある状態で列車に乗務してはならない。
 
そりゃそうですよね…。

運転士の皆様、これからも安全運転をよろしくお願いいたします!

(※この記事は、2017年10月1日時点の法令情報に基づいています。)

 


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いかがでしたでしょうか。

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是非、次回もお楽しみにつながるうさぎつながる花1

by 第一法規 法律トリビア編集担当