自然環境変化の話と労働環境整備の話 | 第一経営グループ代表 吉村浩平のブログ

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今年は関東でも台風の被害が尋常ではありません。とにかく雨の量もそうですが、風の強さが半端ではなく、台風15号による千葉県の被害は甚大なものがあります。街路樹はもとより数えきれないほどの電柱が倒れて道路をふさぎ、山の中を通る巨大な送電線を支える鉄塔すらも倒れてしまう強風だったようです。千葉に限らず首都圏では、あの台風が通過した翌日は電車がお昼前まで動かなくて大変でした。

 

ニュースを見ていると、千葉県内多くの場所では大規模な停電が発生して2週間ほど経つのに未だに完全復旧していません。ゴルフ練習場のネットが鉄柱ごと隣接する民家を押しつぶしてしまっている様子などもありますが、数軒の民家がとても住めるような状況でないところを見ると、補償がどうなるのか、責任の所在を巡ってかなりこじれそうな様子がニュースから伝わってきます。地域密着でこそ経営が出来るゴルフ練習場の対応は大変だとは思いますが、まさに経営姿勢が問われる時なのだろうと思います。

 

更に今日あたり日本海を東に進む台風17号による強風が、被災地の屋根を覆っているブルーシートを吹き飛ばしているようで、これ以上の大雨が降らないこと、被害が広がらないことを祈るばかりです。それにしても各地で竜巻の被害もあるようですが、日本でここまで大規模な竜巻が頻発するようになったのは最近のことではないかと思います。明らかに地球規模で自然環境が急激に変わってきていることを感じます。

 

東日本大震災のあとからBCP(事業継続計画)が特に注目されてきて、当社でも帰宅困難者への対応をはじめ、様々なデータの安全確保、連絡網の整備など、その頃に暫定的につくったままになっていました。

 

今は見直し作業を進めているところですが、被害を受ける場合だけでなく、ゴルフ練習場のような物理的なケースではないにしても、自然災害をきっかけにした人為的な不可抗力の情報漏洩など、どんなケースで加害者になるか分かりません。自然環境への対応だけの問題ではありませんが、BCPはあまりのんびりとしていられない課題のように思います。

 

さて、土曜日に埼玉同友会の経営指針セミナーがあり「労働環境とマーケティングを考える」というテーマで、戦略編の第2回目が行われました。その中でマスコミにも取り上げられて勢いに乗るイケイケの会社運営から、社長自身が工作機械で大ケガをしたことを契機に、一転して労働環境整備に真剣に向き合うようになったという、指針セミナーのスタッフをやっている若い経営者の実践報告がありました。

 

なんとも可愛くて温かみのある、木製のおもちゃを製作するユニークな会社です。全国の百貨店など専門店に卸しているブランド力の高い会社であるにもかかわらず、数年前までは狭い工場に工作機械と組立スペースが所狭しと混在するような危険な配置になっているばかりか、労働時間の方は「仕事が終わるまで」という、いわゆるブラックな企業でした。

 

「子供のよりよい遊びのために」という理念に共感し、希望をもって入社してきた社員もそんな仕事が毎日続く中で、さすがに疲れ果てて次々と辞めていったそうです。でも社長は全く気がつきませんでした。自分と同じレベルで仕事が出来なければ一人前ではないという思いで、ひたすら先頭に立って突き進んでいたそうです。

 

そんな矢先の自分自身の大ケガです。そこでハタと「これが社員でなくて良かった」と初めて気がついたと言います。1か月半の入院と3か月間の仕事中断で、自分が居なければ動かない会社でしかなかったことや、理念をつくり実行計画を作っていたけれど、社員のことを何も考えていなかったこと、理念のズレに気がついたそうです。もう次はない。

 

それから社員と真剣に向き合うことを考えます。社員を最も信頼するパートナーという位置づけのもと、社員を巻き込んだ就業規則の作成と毎年の更新、年間カレンダーを作り、計画的な有給休暇の取得促進と残業削減、工場の拡張と3S委員会の設置、社員旅行や交流会の福利厚生企画、月一の社長による個別面談、様々な手当て見直しに在宅ワークへの挑戦まで、マネジメントとして考える様々な労働環境整備を始めたといいます。まだ数年ということですが、さすがに柔軟な発想が出来る経営者はやることが速い。

 

それが中小企業のいいところかも知れません。社長自身が理念をもとにした経営に真剣に取り組むことを考え、今回のテーマである労働環境整備について、それは社員に対して「やってあげた」というものではなく「やらなければならない課題だ」という気づきがあったという、彼の最後の言葉がとても印象的な報告でした。