ウィンウィンの意味が分からない | 第一経営グループ代表 吉村浩平のブログ

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日本で行われているラグビーのワールドカップが盛り上がってきています。昨日の土曜日には、なんと世界ランク2位のアイルランドに日本が勝利する大金星です。もう「奇跡」と言わせないと中継しているNHKのアナウンサーが絶叫していましたが、確かにまぐれで勝てるような相手ではないのでしょう。

 

最近はモデルやタレントさんとか芸能界などテレビの世界だけでなく、陸上競技や野球、バスケットボールなど日本人のアスリートでも名前にカタカナ表記が入る選手の活躍を見る機会が多くなってきました。改めて島国日本においても、日本人という概念にグローバルを実感する時代になってきたことを思います。

 

ところがラグビーで日本チームの構成メンバーを見ると、「日本人」だけというのでなく、明らかに外国人という選手も含まれています。聞くところでは、ラグビーのルールでは「3年以上継続してその国に居住している」という条件なども含まれていて、他のスポーツに比べると少し緩やかな基準でそれぞれの国のチームが構成されているということです。

 

それは19世紀初めにイングランドで生まれたラグビーの歴史が関係しているようです。大英帝国が世界中に影響力を持っていた時代に、世界各地に散らばったラグビーのエリートたちが、それぞれの国でこのスポーツを普及していったという歴史的な背景があり、選手の「国籍」というより選手の「生活圏」を重視する考え方が今に続いているということのようです。

 

ほとんど格闘技のような激しいスポーツにもかかわらず、試合終了のことを「ノーサイド」といい、敗者と勝者がお互いを称えあうスポーツです。死に物狂いのトレーニングを積み重ね、試合では鍛え抜かれた身体同士が激しくぶつかり合うも、お互いに相手に対するリスペクトをもって臨む、なんとも清々しさを感じるスポーツです。

 

そんな国と国が、対等でリスペクトしあうラグビーのような関係と、かなり様相を異にするのが安倍首相とトランプ大統領が「最終合意」したという日米貿易交渉です。ところが安倍首相はその合意について「ウィンウィンの結論」と評価したようです。でも、それはかなり無理のある表現で、どう見ても一方的に譲歩しただけと見えてしまいます。

 

牛肉など農産品の関税を大幅に引き下げる一方で、自動車関税等の撤廃時期は示されなかったということです。逆に追加関税の可能性すら、ちらつかされている状況を日経新聞でも報じています。こういう結論を最終合意しておいて「ウィンウィン」というのは、ほとんど意味が分からないという感じを受けます。

 

有り余るトウモロコシを売りつけられるなど、トランプ大統領の言いなりにTPPを超えてアメリカを特別枠で優遇する安倍政権ですが、食の安全や自給率などを犠牲にしてでも、自動車業界の当面の負担を回避できたことが日本側の「ウィン」というならば、畜産業者や農家のなんともやり切れない気持ちを思います。あまりニュースで取り上げられていませんが・・・

 

安倍政権の常とう手段である、明らかにあったことでも「ない」と言い切り、公的な文書は改ざんする、更に明後日10月からの消費税10%増税で始まる、8%据え置きの複数税率のことを「軽減税率」という誤魔化しのメッセージ「言葉あそび」を思い出します。でもさすがに今回のことを「ウィンウィン」と言うのは「ない」でしょうという気がします。トランプ大統領の選挙対策に利用するだけされて、さすがにこれでノーサイドという訳には行かないでしょう。