2019年4月-復活までの軌跡7~決断した日~ | 無精子症と診断されてから復活までの軌跡

無精子症と診断されてから復活までの軌跡

非閉塞性無精子症、その絶望から蘇った話

苦悩、挫折、刹那、孤独、憂鬱、嘆き
様々な感情を抱きしめ希望を掴んだ話

悩んでいる同士の方々へ
少しでも情報になればと思い書いていきます。

暗闇のトンネルを抜け出すために

 

 

 

「鍼ってこんなもんです、どうです?思っていたよりも痛くもないでしょ?

勿論精巣なんかにも打たないので安心して下さい(笑)

あぁ、マッピングでもう針を打ってたね(笑)」

 

 

 

 

 

 

「そうですね、仙台で結構な数打ちましたので」

私も思わず笑ってしまった

 

 

 

 

 

検査の後、鍼を全身に打った。

そのうちの数本に電気を通す。

 

 

 

 

このまま暫く置いておくそうだ。

 

 

 

 

 

 

その間も隣に座り、色んな話をしてくれる

 

 

 

 

 

本当に色んな事を知っている人だ。

まぁ、私の父親位の年齢であり、物事を沢山知っているのもわかるが。

 

 

 

 

 

「ここには日本全国から色んな人が来てね、北海道から鹿児島迄、沖縄はあったかなぁ。

もうあんまり覚えてないけど。

みんなそれぞれ事情を抱えてくるんだよ。

全部を私は解決出来ないけどね、「私は精子を作る事が仕事」だから

「結果を残す事に一生懸命」なんだよ。

日々医療は進歩していて、たとえ精子が出来なくても、前の段階の「前期、後期精子細胞」

迄形成さえできれば道はあるんだ。

だからなんとか頑張ってそこまででも成長出来るようにしたいんだよ。」

 

 

 

 

私は仰向けのまま天井を見ながら話を聞いていた。

 

 

 

 

「遠方から通う事はとても大変だし、お金も時間も凄くかかる。

その人達が真剣に考え、遠いここまで来るからには私も真剣にやる。

大福さんのように首都圏に住んでいる人でも同じように大変だよね。

大切な時間とお金をかけてここまで来る、だから勿論真剣にやる。

私は結果を残さないといけない」

 

 

 

色んな話をしたが、このような会話を今でも覚えている。

 

 

 

「男性だけではなく、女性の不妊にもそれぞれ理由があり、それも私の技術で良くしたいのよ。

受精卵になる事は簡単な事ではない

それぞれが最大まで良い状態になって初めて分裂が始まるからね

妊娠すると言う事は奇跡であり、その奇跡の為にも私は頑張らなければならない」

 

 

 

 

 

 

鍼を打ってあっと言う間に30分程経った。

 

 

 

 

 

この人は職人なんだ。

自分に与えられた使命、目的を愚直に遂行する。

 

 

 

 

 

この人は職人なんだ

頼ってくる患者の笑顔と、未来の為に努力を続ける

 

 

 

 

 

 

鍼が終わり、再び診察のスペースに戻り会話をする。

 

 

 

 

 

時間は既に2時間近く経過していた。

 

 

 

「さ、だいたいこんな感じのが次回から続くけどどうするー?

無理強いするつもりもないから一回ゆっくり考えて、来るなら予約の電話頂戴ねー。」

 

 

「わかりました、必ずお世話になります。

本当に有難う御座いました!!」

 

 

「あぁ、腰がいてー、畑を耕し過ぎたかなー(笑)。

そういえば大福さんが平成最後の初診患者だと思っていたけど、もう一人予約はいっちゃってたなー。

平成最後取れずに残念だったねー(笑)」

 

 

「いえいえ、ここにこれて本当に良かったです。

それだけで充分ですよー(笑)」

 

 

「今日は特別に駅まで送迎するよ、いつもは11時の予約の人だけ送迎だから希望するなら

その時間にしてねー」

 

 

「わかりました、有難う御座いました~」

 

 

 

診察室を出て、受付で会計を済ます。

勿論次回予約も兼ねて