飲み会の会場に到着すると、タイミングよく主役である先輩の社長がタクシーで到着したところだった。
外でタバコを吸いながら、彼女のお父さんと再婚した奥さんを待っている。
先輩の社長は穏やかな笑顔を浮かべつつも、どこか背筋が伸びたような緊張感が漂っていた。
やはり社長就任のお祝いともなると、場の重みを自然と感じるのかもしれない。
10分ほど待つと、彼女のお父さんと奥さんが到着。
やっと全員が揃い、5人で店内へと入ることになった。
案内されたのは長四角のテーブル席。
上座に先輩の社長、その隣に私が座り、下座の奥には彼女。
私の正面には彼女のお父さん、そしてその隣には奥さんが座った。
席に着くと、なんとも微妙な配置だった。
彼女との位置関係は斜め前。
目線が合いそうで合わない絶妙な距離感が、少し居心地の悪さを感じさせる。
隣の奥さんや正面のお父さんとの会話が自然と多くなり、彼女とは挨拶程度のやり取りしかできないまま、飲み会が始まった。
奥さんは、場を盛り上げるのが得意なのか、飲み物や料理を次々と手際よく準備していた。
特に焼酎の水割りに関しては妙に張り切っていて、主役の社長、私、そして彼女の分まで次々と注いでくれた。
ただ、その焼酎の割合がどう見ても「焼酎7:水3」。
香りが強く立ち込めるグラスを手に、すぐに体が熱くなっていくのがわかった。
料理はどれも美味しく、焼酎のペースに合わせるように箸も進む。
場の雰囲気は賑やかで、笑い声が絶えない。
しかし、私はその賑わいの中で、彼女の姿ばかりが気になっていた。
視線の先、斜め前に座る彼女は、少しずつ顔が赤くなり、酔いが回っているのがわかった。
最初は軽い笑顔を浮かべていたが、終盤になると、ほろ酔いを通り越して完全に酔っ払っているように見えた。
そんな彼女の姿を見ていると、少し心配になりつつも、あの日のタクシーのことが頭をよぎった。
手を握ったあの瞬間――。
でも、今はそういう話を持ち出すタイミングでもないし、相手が父親や奥さんと同席している以上、普通の会話以上のことは望めない。
そんな葛藤を胸に抱えながら、私はただ、彼女の姿を気にしていた。
1軒目が終わりに近づく頃、場はさらに盛り上がりを見せていた。
しかし、私の中では、次の展開がどうなるのかばかりが気になっていた。
酔っ払った彼女がこの後どうするのか――、そしてこの飲み会がどんな結末を迎えるのか。
私の中で、期待と不安が入り混じるまま、時間だけが過ぎていく。
この夜は、まだ終わらない気がしていた。