私はアルコール依存症者で、

酒をやめて3年になる。


アルコール依存症治療で精神科病院に入院した前後、私はある本を繰り返し読んでいた。


加藤諦三著、『心の休ませ方』 PHP文庫


唐突だがその本の中の一節を取り出して載せます。


『心の休ませ方』より

 

あなたは普段から全速力で生きてきた。

頑張ることだけでは何も解決しない。
生きることに疲れたあなたにいま必要なのは、努力でも頑張りでもなく、休むことであり、この機会に行き方を変えることである。


真面目に頑張って頑張って、それでもただ辛いだけの人は、生きるための知恵を働かせる時が来ている。



    

今回は
重度のアルコール依存症だった私が
「酒をやめよう」
と思ったキッカケの話



末期のアルコール依存症で連続飲酒をしていた頃。ココロと身体が限界を迎えていたころ。


私は酒をやめるキッカケを3つ手にしようとしていた。


それが

上記の本の一節を繰り返し読んでいたことと、

酒の飲み過ぎを表す最終系の言葉『底つき』、

そして妻の変化だった。



癒やしてくれた本


いわゆるアダルトチルドレンだった私は、寿司屋を続けながら「毎日朝から酒を飲み続けること」しかできなくなっていた。


「この生活から逃げるには。」

という発想に至らない、薬物中毒の脳だった。


只々毎日朝から酒を飲み続け、辛さが増していく生活の中、気付いた時に私はこの『心の休ませ方』を繰り返し読んでいた。


もともと自分の生き辛さを認識していた私は、ラジオ「テレホン人生相談」で長年パーソナリティを勤められている加藤諦三さんに好感を持ち本を購入して読んでいた。


加藤諦三さんが何十冊の本を出版されているか正確にわからないが、20代のころに数冊買って愛読した。


『心の休ませ方』はいつから手元にあり、自分で買ったのか、妻に貰ったのもなのかも記憶にない。とにかく連続飲酒をしていて最も辛かった入院前、私は上記の一節を繰り返し読んでいた。



真面目に頑張って頑張って、

それでもただ辛いだけの人。


字面を見ると馬鹿にされてるようだが、寿司屋をしていて末期のアルコール依存症者だった当時の私は自分を理解して貰えるようで嬉しかった。



生きることに疲れたあなたに必要なのは休むことなのだ。


寿司屋のカウンターで本を開き、この一文を読む度「そうか、一度全て手を止めて休んで良いのか。」と考えが1ミリづつ変わっていった。


アルコール依存症者は酒を飲み続けながら問題を複雑にしていく。


今日この日から酒をやめれば僅かでも人生は変わり始めるのだが、酒という薬物に乗っ取られた脳は許さない。


脳の側坐核は酒を飲んで放出されるドーパミンを受け取るそうだが、アルコール依存症者は『その瞬間の快楽』を求めるだけの生き物になっている。


酒は容赦なく末期のアルコール依存症者の私にに襲いかってきたのだが、私にも「酒をやめたい」という小さな思いがあった。


「酒を飲んで命が無くなっても良い。」そう思っていた私がなぜ「酒をやめたい。」と思いを大きくさせキッカケを膨らませたのか。


その一つが上記の一節と出会ったということで、繰り返し「自分が自分を許そう。」と泣きながら読んでいた。



  共依存配偶者の自立


妻はアルコール依存症者家族にある共依存状態にあった。


冷めた生活をしながらも、妻は自身が信頼出来る人と出会い話し「私の人生を生きる。」と決断した。


その頃から妻は共依存の精神状態から抜け出した。妻は私との離婚を決意していった。その上で“この人(私)”を医療に繋げてから離婚しようと決めていた。


妻の依存症夫に対する精神的な自立だった。


妻の私への問いかけは

「貴方は私の旦那として何がしたいの?」

から

「私は〇〇する。あなたは何がしたいの。」

と言葉をかけるようになっていた。


妻は私との夫婦生活をやめ自立することを決意して初めて、他人としての私に何がしたいのか問いかけた。


変化した妻の問いかけに戸惑いながら、私は妻と知り合い20年経過して初めて、自分の偽りない本音を話し始めた。


『酒をやめようにも止まらないこと。』

『ゆっくり休みたいということ。』


妻は黙って頷き話を聴いてくれた。



底つき、本、妻の自立



重度のアルコール依存症者だった私は、医療に繋がり断酒のキッカケを掴むことができた。


でもその前段階『医療に繋がろう』という気持ちを生み出すには、良き本が手元にあったことと、妻の精神的な自立があったからだった。


重度のアルコール依存症者が酒をやめようと気持ちを転換させるのには要因が必要になる。


  喫茶店の帰りに


休みのこの日、記事は喫茶店で書いていた。


コーヒーを2杯飲んでも書き終わらなかったが、長居になってしまっては喫茶店に申し訳がないと店をで出た。


車に乗りamラジオをつけるとテレホン人生相談が始まっていた。


ラジオからパーソナリティの加藤諦三さんの声が聞こえてきた。相談者の質問を纏めると回答者のマドモアゼル愛先生が話し始めた。


テレホン人生相談のゴールデンコンビだ。


相談者の悩みについて本質をつく見事な解答をされていたが、相談者から明るい返事は返ってこなかった。


  アルコール依存症といわゆるAC


依存的な性格はいわゆるAC(アダルトチルドレン)であることと繋がりが深い。


アルコール依存症者が原因を探っていくと、支配的な両親がいて、その両親もまた抑圧され大人になっていた人で。ということはよく見られる。


私は【良い子を演じて両親から愛情を得たい。】というタイプのACだった。

良い子を演じつつ裏では強烈な恨みを抱えながら年齢を重ねた。


寿司屋のあとを継ぎ、両親を寿司屋から追い出すと自分の恨みの対象を寿司屋に向けていた。


自分本来の生き方を放棄し、幼い頃のトラウマの原因を両親から寿司屋にすり変えて、どん詰まりになった。


無意識の恨みの対象を両親から寿司屋に向けて変えていたことに気づけなかった。


だから重度のアルコール依存症になったのだが、私のようなタイプの依存症者はたまにはいるだろう。


今も生き辛さを抱えている依存症者に、

私は酒をやめようと考えた理由は、底つきまで飲んだ経験と、2つの要因があった。と伝えたかったはなし。