初合コン③
居酒屋に着くと入ってきた順にそのまま席に着く。
僕の目の前は麻里ちゃん。隣が大介。大介の正面にはさっきから大介にアピールしまくりの女の子。
とりあえずの乾杯を済ますと、みんなに向けての自己紹介は特になかった(幹事君によると、そういうのは野暮なんだそうな)
僕と麻里ちゃんはその後も他愛のない話を続けた。
授業出てなかったけどどうしたの??? ----- 交換留学してて、昨日一時帰国したぁ~。
また行っちゃうの??? ----- う~ん、向こうの生活にも飽きたし帰ってこようか迷い中。
じゃあ、こういう飲み会とか合コンとかって初めて??? ----- うん。こういうのなんか嫌い。
そうなんだ。 ----- でも、今は楽しいかも。
え?? ----- ケンちゃんって誰か芸能人に似てるって言われない??
言われないよ。 ----- 要 潤とか。
ダレソレ?? ----- まぁ、いいや。私は誰に似てる??
松 たか子。 ----- マジで?それ嬉しいかも。やったね。
こんな感じ。多分、もっと色々話したけど覚えてないや。。
麻里ちゃんと話していると落ち着く。
女の子と話していてこんなに自然体でいれたのははじめてかもしれない、、、涼子は別だけどさ。
こんなにカワイイのに和ませる雰囲気を持っていて、優しくて、僕はますます麻里ちゃんを好きになっていた。
僕は今こうやって普通に話している事が幸せすぎて、現実なのか御伽噺なのかまるで夢うつつな気分に浸っていたんだ。
でも、幸せな時間はそう続かない。
向こうの大学生活とか1人暮らしっぷりについて聞いていると隣から鋭い声が聞こえてきた。
「ちょっとしつこいよ??」
それは、いつものソフトな大介からは想像も出来ないような冷たい声だった。
その声の対象者である女の子はショックで完全に固まっていた。
いや、彼女だけじゃない。
同じテーブルに座っていた大介を除く9人が固まって、ただただ大介に注目していた。
こんな大介を見るのは初めてだった。。。
今日の大介は明らかにおかしい。
お酒のペースもいつもの倍以上だ。
沈黙を破ったのは麻里ちゃんだった。
「ちょっと言いすぎじゃない??」
と、僕達の思いを代弁する言葉を言った。
「お前には関係ないよ。それにお前にだけは言われたくない。」
お前??
大介が女の子に、、、いや、他人に対して『お前』って言葉を使った事が信じられなかった。
それに、、、、
僕の思考をかき消すように大介がまくし立てた。
「お前いつ帰ってきたんだよ??帰ってきたなら何で連絡しないんだよ??
なんでいつもそうやって自分勝手なんだよ??周りの人に迷惑かけてるとか考えられないのかよ??」
大介はそこまで言うと「ゴメン」と小さい声でボソッとつぶやいて店から出て行ってしまった。
僕はますます混乱していた。
なんだ???
どういうことだ???
大介と麻里ちゃんは知り合い????
しかも友達とか言うレベルの知り合いじゃなくもっと親密な????
恋人????
僕は大介にも麻里ちゃんのことが好きな事を言っていた。。。。
裏切られた。。。。。
ぼくは、、、、、、僕は、、、、、、、、、、
それからどうやって店から帰ったのかは覚えてない。
気が付いたら視界には僕の部屋の天井に張ってあるマイケルジョーダンのポスターが見えた。
マイケルジョーダンは何故かユラユラ揺れていた。
時折、目から流れる水分が耳にポタポタ落ちてくすぐったかった。
そして、枕の湿り気がスゴく不快だった。
僕は次の日から3日、大学を休んだ。
そして、3日目の夜大介からメールが来た。
長い長い、メールだった。
初合コン②
「ねぇねぇ、いつもそんなに無口なの???」
麻里ちゃんが隣を歩く僕の顔を覗き込むように言った。
「二宮金次郎さんみたいでしょ??よく言われる。」
僕がそう言うと、麻里ちゃんは「う~ん」と考えるような顔をした、、、二宮金次郎像を思い出してるのかもしれない。
その考え込む仕草がスゴく可愛くて思わずクスクス笑っちゃう。
この日もやっぱり麻里ちゃんは不機嫌だった。
他の女子メンバーは(それが例え社交辞令だったとしても)ニコニコ、キャピキャピ、ところによりワイワイな感じだったんだけど、麻里ちゃんは1人眉間に皺を寄せていた。
女の子幹事と男の子幹事は仲がイイみたいで少し話すと、
「今からお店行くからオレ達に付いてきてぇ~」
と言いながら、男の子3人と女の子3人が先頭になる。
大介は早速女子メンバーの1人に目を付けられたみたいで、その子と2人で後を追う。相変わらずしかめっ面で。
で、残すところは僕と麻里ちゃんなワケで、、、、
といっても「僕達も行こうか??」なんて爽やかな言葉が出てこないし、、、、
「行かないの??」
そんな事も考える間もなく麻里ちゃんの方から僕に声をかけてきた。
僕は「う、うん」と言って麻里ちゃんの後をノコノコ付いていくのでした、、、、、はぁ~このチキンな性格をどうにかしたいなぁ。
麻里ちゃんと一緒にお店に行くことに奇跡的に成功した僕なのですが、道中何を話したらいいのか分からない。
最近の世界情勢??経済??トリビア??都市伝説??怖い話??
なんて考えてると頭が痛くなってくる。。。
そんな時に麻里ちゃんが「ねぇねぇ、いつもそんなに無口なの???」って声をかけてきたんだ。
もうね、この時はホント助かったと思った。
でも、まさか麻里ちゃんの方から話を振ってくれるなんて、、、、、
僕は、僕は、、、、、感無量ですたい ヽ(´ー`)ノ
僕が感動に浸っていると麻里ちゃんがまたまた声をかけてきた。
「どっかで会った事あったっけ??」
「うん、あるよ。なんで??」麻里ちゃんが僕のことを覚えてくれた事にまたまた感動。
「目。」と言って、僕の目を指差す。
「でも、何か印象変わったような気がするけど・・・・・」
「う~ん、そうかな??」と言って、僕はワザとらしく考えるふりをした。「気のせいだよ。」
「そうかなぁ~」納得がいかない様子の麻里ちゃん。そりゃそうだ。
それから僕達はお互いの名前を教え合い、携帯の番号を交換した。
「ケンっていうんだぁ~。それじゃあ、ケンちゃんって呼ぶね。よろしくケンちゃん。」
そう言ってニッコリ微笑む麻里ちゃんの笑顔は、まるでこの世の奇跡みたいに美しかった。
「うん、よろしく麻里ちゃん。」
僕は何故か急に恥ずかしくなって、俯いてゴニョゴニョ言ってしまった。
麻里ちゃんとの初めての会話はこんな感じだった。
こんな他愛もない会話内容って思う人もいるかもしれない。
っていうか、内容なんてないじゃんって言う人がほとんどだと思う。
だって、僕自身そう思うんだから。
でもね、確かに他愛もないことだし、たった5分や10分の事ではあったんだけど、
僕はスゴく満たされた気持ちになったんだ。
大袈裟かもしれないけど、本当にそう思っちゃったんだから仕方ない。
初合コン①
季節は夏から秋に変わろうとしていた。
暦の上ではもう完全に秋なんだけど、まだまだ夏だ。
木々は生い茂り、葉は青々としていて、、、、なにより暑い。
でも、もうすぐ元気に満ち溢れた夏が終わり、感傷的な秋が始まるんだなと感じていた。
何となく、、でも確信的に。。。
僕と大介が『花火の広場』に着いた時には他の男子メンバーは鏡で髪型チェックに勤しんでいた。
『花火の広場』っていうのは大学の最寄り駅前にあるデパートのエントランスのことで、よく待ち合わせ場所に使われている。
「みんなやる気満々だねぇ~。」
「・・・だね。」
みんなとのテンションのギャップに気が引き締められるような、ただただ呆れるばかりのような僕と大介でありました。。
そんな呆れ顔の僕達に気付いたようで、主催者の男の子が僕の方に寄ってきた。
「おぃ~っす!!今日はよろしく~。」
と、軽い調子で言われる。大介が顔をしかめるのを横目で確認して軽く苦笑いしながら、ぺこっと頭を下げた。
「あっ、ども。よろしくお願いします。」
「硬いなぁ~、2人共硬いよ~。今日はさ、ちょ~カワイイ子読んでるから『ワッショイ!!』って感じでテンション上げてこうぜ。」
スゴぃテンション。
しかも、『わっしょい』って、、、イミワカラナイヨ。。。。
「そ、そうだね。テンションあげあげでいこう!!」
僕は無理矢理話を合わせて、「ねっ」と隣の大介に振ってみたんだけど「うん。」とますます顔が険しくなっちゃった。
大介、、、恐いッス。。
お調子モノの幹事さんによると、今日は男子5人と女子5人の合コンらしい。普通は3人ずつが定番なので、コレだけの人数でやるっていうのはなかなか珍しいみたい。3へぇ~。
僕と大介が緊張しすぎないように、女の子は清楚な感じの人をセレクトしてくれたらしい。この幹事さんスゴくいい人なんだ。
「でもさ、ケン君って急に変わったよね。」
女の子達を待つ間、幹事さんが僕に話しかけてきた。
「ほら、入学してきた時は何ていうかさ、勉強に熱心な感じっていうかさ、、、」さすがに直接的には言えないようで今までのお調子モノ口調が急にしどろもどろになる。いい人なんだ。
「根暗。」僕はフォローを入れてみる。
「そうそう根暗っていうか」幹事さん的にはしっくりくる言葉ではなかったみたいだったので、
「アキバちゃんって感じ」僕はもう一度フォローを入れてみた。
「そう、それ!!アキバな感じ。」今度はしっくりきたようでスッキリした顔をしている。やっぱりいい人だ。
「入学したときはアキバな雰囲気全開だったのにさぁ、今はもう普通だもん。ヤバくね!?」
僕はどう答えていいのか分からず(そもそもそれが質問だったのかも不明だ、、、)中途半端な笑顔で誤魔化した。
大介は他の人と話してるんだけど、相変わらず顔がしかめってます。
そこまでチャラ男を嫌わなくても。。。
そんなこんなのやり取りをしてると、幹事さんの携帯から「♪チャ~ラ~、ヘッチャラ~♪」という一昔前のTVアニメのテーマソングが流れた。
「もしも~し、あっ、着いた??オレ達はもう着いてるよ。うん、花火の広場。えっ??全然待ってないよ~」
女の子達が駅に着いたようだ、僕の心臓の鼓動が急速に早まるのを感じる。
大介と目が合った。
僕は多分相当緊張してたんだと思う。そして、大介に助けを求めるような視線を投げかけたんだと思う。
大介は全てを察してくれたようににっこりと、でも穏やかな笑顔を僕に向けてくれた。
その笑顔は僕をスゴく安心させてくれたんだ。
でもそんな安心も2秒くらいしか続かなかったけど。
だってさ、、、、
女の子メンバーに麻里ちゃんがいたんだから。