台九百八十四話 | 台所放浪記

台所放浪記

料理とか随想とか

アニメ【鬼滅の刃】柱稽古編の放送が始まりました。この章で

物語上最も大きな出来事というのは産屋敷邸の爆発ですが、

何となくアニメの見せ方的に、胡蝶しのぶの戦死を一番の盛り

上がりどころとしてフォーカスしようとしている気がします。

カナヲが完全に自我に目覚める名シーンで、伏線段階の今から

楽しみです。

 

炭治郎が「錆兎が生きていたら…」と言っていましたが、それと

先日の歴史の話題にちょい乗りして、維新史で横死せずにその後

も生きていたら面白そうな人という事について考えてみました。

最初に思い浮かぶのは坂本龍馬で、これはまあみんなわりとそう

じゃないかなあと。明治政府に入らずに海援隊を発展させて、

列強との外交や維新後相次いだ士族の反乱、特に西南戦争は、

異なった結末を辿っていた可能性が大いにあったと思います。

 

次に思いついたのが橋本左内(1834-1859)で、この人も

吉田松陰(1830-1859)と同様、幼いころから学問に励んだ神童

で、15歳で【啓発録】という著書を記しています。思想としては

公武合体寄りの開国佐幕思想で、主君の福井藩主・松平春嶽の

命を受けて14代将軍継嗣問題では、一橋慶喜を擁立しようと

画策していました。

 

安政の大獄で、松平春嶽が隠居謹慎を申し付けられると、将軍

継嗣問題に介入した件について、左内も幕府の取り調べを受けま

した。その結果、遠島の刑罰が下される予定でしたが、井伊直弼

が左内の死罪を強固に主張したため、伝馬町で斬首されました。

享年25歳。左内の場合は、その後の幕末の志士らとは異なり、

きちんと藩と主君の命を受けた上での政治活動であって、一個人

の私心でこんな事をするはずがないのですが、取り調べの際に

それを申し開きした事が、主君を庇わずに罪を着せようとして

いて心証が悪いという無茶苦茶な理由での処刑でして、美徳の

強要がグロテスクになってしまう例だという感想です。

 

開国後の諸外国との交渉に備えて、改革によって幕府の権力を

立て直そうとして活動していた橋本左内の処刑を伝え聞いた

西郷隆盛は、幕府は狂っているという趣旨のコメントを残して

います。安政の大獄におけるこれらの横暴な思想弾圧は、倒幕

思想の発展を招く事になって、桜田門外の変、坂下門外の変、

各種の天誅というテロリズムの多発につながっていきました。

いや~、歴史って本当に面白いですね(水野晴郎風)。