ブログで小説家気分~!作品ジャンルは特撮活劇です。第2話 | だいちゃんのブログ

だいちゃんのブログ

私は映画やドラマ、アニメ、Jpopなど、日本の
ポップカルチャーが好きなアラサーです。
ブログやネットで自作小説を
公開しているので興味ある方は
読んでみてください。

執筆中の自作小説をブログで公開します。
タイトルは『異星獣戦記』です。
異星獣戦記 - カクヨム https://kakuyomu.jp/works/16816927860952092641 


出来るだけ多くの人に読んでもらいたいです。
感想、質問など何でも受け付けます。
よろしくお願いします。

 

弐.

 

 人類と怪獣の戦いから十年経ち、日本は復興が進み、日常の生活を取り戻そうとしていた。

その頃の俺は大学生、成人を迎えたばかりで、ようやく、離れ離れになった家族との再会が実現したのだが…

 

 兄と姉は相変わらずだった。兄は社会人で出世街道まっしぐら、さらに結婚して子供もいる。

姉も就職しており婚約者がいた。仲は良くも悪くもなかったが、元気そうな顔を見て、とりあえず安心した。

 

家族全員で食事する予定だったが、そこに父母の姿はなかった。親父とお袋は別の場所で待っていた。

俺が黙って兄姉について行くと、そこは都内の総合病院であった。

 

「…皆、元気そうだね、健ちゃんも久しぶり~」

病室に入るとお袋が出迎えたが、奥のベッドを見て、思わず口が開いた。

兄たちに連れてこられた病室には、変わり果てた親父の姿があった。

親父は大病を患っていた。ここ数年、入退院、自宅療養を繰り返して、

闘病生活を送っていたが、希望は薄くなっていき、病状は悪化の一途を辿っていた。

 

親父は五十代だが、病気で体が痩せ細り、まるで覇気のない老人であった。

親父の病気を知らなかったのは俺だけだった。

お袋は働きながら、毎日欠かさず親父の見舞いを行い、出来る限り、妻として看病に尽力していた。

その疲れのせいか、お袋は以前より痩せていた。

 

親父もまた、重度の怪獣被災者の一人である。怪獣襲来で日本経済は大打撃を受けて、

務めていた会社は経営難に陥り、転勤が続き、全国を駆け回ったそうだ。

孤軍奮闘の日々、壮絶な人生だったに違いない。

そういえば連絡が取れない時期があったが、必死に働いていたのだろう。

俺たちの学費をちゃんと払ってくれた。兄は親父を頼らず、奨学金の手続きをしたそうだが…

 

病室で再会した親父はまともな会話ができないが、意識ははっきりしており、

俺たちの顔を見ると笑みを浮かべて、とても嬉しそうだと伝わった。 

 

これは勝手な思い込みだが、特に俺の顔をじっと見ているように思えた。

そして…

 

再会した日から一年後、親父は静かに息を引き取った。

最後は家族だけで見送ろうと密葬を行ったが、葬儀後、親父の友人や知人、

同僚が続々と線香をあげに訪れた。その時、亡き父の人間性の良さが垣間見えたような気がした。

 

ふと瞳を閉じれば、親父と過ごした日々が鮮明に映った。

キャッチボールにスポーツ観戦、映画鑑賞…父との思い出は数え切れないが、

怪獣を一緒に見に行ったことに関してはあまり触れたくない。奴との遭遇がきっかけで大事な人を失ったのは事実だ…

 

俺は大学在学中に小説家デビューしたわけだが、真っ先に父に知らせたかった。

大袈裟にお祝いしてくれる親父の姿が目に浮かぶ。

俺は就職活動をせず、作家人生を志すのだが…

 

大学卒業後、俺の密着取材を担当した女性記者と結ばれることとなり、

子宝に恵まれた。社会人になって早々、俺は家族を養う立場になり、それなりに焦った。

作家となった以上、ひたすら創作、執筆作業に打ち込まなければならない。

怪獣や宇宙人が棲みつく地球を舞台にしたコメディ、タイムマシンで恐竜がいる時代に向かい、

スリルを体験するアドベンチャー、夢の世界と現実の世界が入り混じるファンタジー、

次々と自作品を世に出したが、何処か新鮮味がなく、打ち切りが検討されるものばかりだった。

不人気(スランプ)が続く中、出版社は早く新作を書けというが、ペンは思うように進まない。

しかし、その矢先、転機が訪れた。

 

小説家デビュー作『破壊神上陸』の漫画・アニメ化が決定した。

俺は原作者のため特にすることはなく、専門の技術屋に任せればいい。

怪獣襲来を知らない世代が興味を持ったことでメガヒットした。その結果、

がっぽがっぽと印税が原作者(俺)の懐に入っていき…

 

勢いは止まらず、今度は映画化が正式に発表された。

大手映画会社が制作費を全て負担してくれて、出演者もベテラン俳優から旬の若手俳優という豪華な顔ぶれ、

しかも監督と脚本は俺に任された。

ただ条件があり、あの恐ろしい怪獣がメインだが、単なる怪獣映画ではなく、ドキュメントタッチを

盛り込んでほしいと映画会社側から注文が入った。

そして…

 

慣れないことで体調を壊したこともあったが、無事に映画は完成した。

評価は合格点で国内のみならず、海外でも評判が良く、名誉ある映画賞を受賞した。

この時は変な話、怪獣に感謝した。さらに…

 

人気の波に乗る中、次の仕事が舞い込んだ。

ある日、学生時代の友人と再会したのだが…

 

友人は民放テレビ局で働いており、敏腕ディレクターとして業界で知られていた。

彼は新番組のキャスティングを任されていて、その作業は難航しているようであった。話は弾んでいき…

 

友人は特別に新番組の企画書を見せてくれた。

番組内容についてだが、時事ネタなど、設定されたテーマに沿って、

討論するバラエティ番組で、ゲストは各分野の学者、専門家、旬の著名人にする予定である。

 

「…番組に出てみないか?」

 俺は友人の予期せぬ一言で、しばらく脳が上手く機能しなかった。

俺はまんまと友人の口車に乗せられて、新番組の記念すべき第一回にゲスト出演することとなった。

当時、俺は時の人のため、テレビ局側や視聴者側も納得していた。

そして…

 

「さあ…今週も始まりました、〝よふかしテレビ討論委員会〟…」

気づけばレギュラーとなり、俺は番組の進行役を担当していた。ここだけの話、

何処かの真面目臭い政治討論番組と違い、あくまで娯楽番組のため、スタジオ内は和やかな雰囲気に包まれた。

 

緩い番組で深夜枠のため、当初、あまり期待されず、一カ月くらいで終わるだろうと噂されていたが、

予想を覆した。新番組は意外と評判が良く、高視聴率を維持して、コアなファンが増加していった。

放送は半年、一年、五年…十五年経っても続き、長寿番組になるとは夢にも思わなかった。

ただ、番組の様子は酷いものである…

 

最初は真面目に話し合うが、すぐ飽きてきて持続は不可能となり、

テーマから外れることが多々ある。話が噛み合わなくなると、レギュラーのみならず、

ゲストも暴走して未知なる論争に発展する。

 

「宇宙人が親戚なら連れて来いよ」

「あのUFOはハリウッド映画の宣伝だろ?」

「当選した大物政治家○○氏は実は…××だ!」

「都内で一番美味いラーメン屋は何処だろう?」」

「いっそ、麻雀番組にしない?」

「お前、先週…○丁目の風俗店行ってただろう?」

 

 話は脱線していき、テーマと関係ない話や放送禁止用語が飛び交う。

不機嫌なゲストは途中退場して、二度と出演しない場合もある。テレビ局の上層部に怒られたことがあったが、

視聴者側には受けが良かった。カオス状態の放送の方が高視聴率で、中身がないとはいえ、人気番組である。

 

それにしても、息が長い番組である。不定期でゴールデンタイムに進出して、

新たなファンを得たり、年末になると長時間の特別番組が組まれる。ネット社会が浸透して、

テレビは面白くないという時代に珍しいことが巻き起こった…

 

ちなみに俺は番組のレギュラー陣と長い付き合いにあるわけだが、仲が悪い出演者が何人かいる。

 

最も仲が悪いのは、伊集院(いじゅういん)   (たける)という物理学者だ。俺は空想科学を専門にしているので、

彼と意見が合わないのは当然だが、趣味や価値観がまるで違う。

伊集院はエリートの家庭で生まれ育ち、自身も高学歴、論文が評価されて、

若くして名誉ある物理学賞を受賞。海外メディアにも注目されている。

俺と立場が似ていて、ライバル視することとなる。

 

 犬猿の仲となったきっかけは、一九九九年に現れた怪獣についての件である。怪獣はどのような存在か、何故生まれたのかというテーマだった。

 

伊集院はこう論じた。

「あの巨獣は自然の摂理に反している…放射能物質で構成されているのなら、

人類が生み出した兵器だ、核の力を放棄しないなら…奴はまた現れるだろう…」

 

彼の意見に対して、俺はこう反論した。

 

「あの巨獣は人類では手に負えない神の化身、破壊の神…

現代の科学では解明できない存在に違いない…地球の何処かに立ち入れない聖域がある」

 

 俺たちの論争はヒートアップしていく一方で、周りの者はついて行くことが不可能だった。

皮肉にもその時の放送は高い数字を獲得した。

 よく仲が悪いのは演出ではないかと疑われるが、俺たちの場合はガチである。

休憩時間、全く目を合わさず、口も利かない。

 やがて、レギュラー陣の間で派閥ができるわけで…

 

他に絡みにくいのは、宇賀神(うがみ)    (けん)()という遺伝子工(バイオテクノロ)(ジー)科学者。中立的な存在で、

どうも取っ付き難い。独自で怪獣を研究しているそうだが詳しいことを教えてくれない。

 

それはさておき、俺は軌道に乗ろうとしていた。仕事が大幅に増えて、

テレビでは、情報番組のコメンテーター、クイズ番組の解答者。

さらにラジオ番組、イベント司会、講演会と本業以外も積極的に取り組んだ。

仕事には不自由しなかったが…人生はそう上手くいかない。

 

「…これに名前を書いて!」

 

 俺が酔いつぶれて帰宅すると、妻、(しず)()が鬼のような顔で現れて、

一枚の書類(かみきれ)を机上に叩きつけた。それは離婚届であった。

 離婚の原因に心当たりはあった。

 俺は外の世界に集中して、家族はほったらかしだった。仕事が終われば、

業界人と派手に夜遊びをして、朝帰りの回数は数え切れない。

 

可愛い娘は年頃となり、ごみを見るような目をされたことがあった。

学校の行事、習い事の発表会に一度も顔を出していないのだから当然だった。

妻との会話も減り、家族の絆は薄れていき、気づいた時は手遅れであった。

 

 さらに不倫疑惑も浮上して、追い打ちをかけられた俺は、離婚届に判を押すしかなかった。

 法律上、俺は慰謝料と養育費を支払う必要があった。

 

 結婚生活は二十年で終結。人類と怪獣の戦いから三十年後の夏、俺は改心して、ゼロからスタートすることを誓った。