執筆中の自作小説をブログで公開します。
タイトルは『異星獣戦記』です。
異星獣戦記 - カクヨム https://kakuyomu.jp/works/16816927860952092641
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第一部 巨大生物の謎
壱.
俺の名は寺仲健介 東京都出身。職業 小説家。科学では解明できないもの、
空想科学を専門に扱った作品を世に出している。今の職業に就いたきっかけは、
三十年前に起こった世界規模の凄惨な事件である。
富士山に巨大生物が現れる―――――――
当時、九歳だった俺はろくに新聞を読まなかったが、家族の朝食時間のこと、
親父が朝刊を読んでおり、その時の記事の見出しが目に焼き付いた。
スポーツ新聞や子供向けのSF専門雑誌なら納得できるが、まともな大手の新聞記事に
非現実的な事件が掲載されていることは異例だろう。
それから俺は巨大生物のことが気になり、新聞を読むようにした。
俺は幼少期から特撮ヒーローや怪獣が好きで、映画好きの親父と一緒に特撮映画を観たのが良い思い出であるが…
かといって、生粋のオタクではない。ヒーローごっこや探検ごっこもしたが、野球にはまり、
高校野球を観ようと、夏休みに家族で甲子園を訪れていた。
ちなみに俺には兄と姉がいるが、二人は現実派で、漫画やSF(サイエンスフィクション)など虚構作品に全く関心がない。
話は本題に戻り、当初、俺も疑ったが、たちまち、巨大生物の目撃者が、
一人、十人、百人と増えていった。なお、当時の大人は奴を巨獣と呼称していた。そして…
ついに巨大生物が堂々と動き出した。富士山をバックに巨大生物のシルエットがはっきり映っていた。
体型は肉食恐竜に近いが、全体的にシャープで、背びれのようなものがあり、
ティラノサウルスと比べると頭部が小さかった。
一九九九年四月の下旬。ゴールデンウィークに入った頃のことである。
テレビ画面に映る巨大生物を観て、俺は独り興奮していた。ネス湖のネッシーが話題になった時期があったが、
それとは比べ物にならない騒動であった。まさに客寄せパンダ状態である。
巨大生物が現れたとされる、五大湖の一つである本栖湖の水深は、一二一.六メートル。
湖底にはいくつか大穴があり、巨大生物が潜んでいてもおかしくない。
そもそも、富士の樹海には死にきれなかった人々が集まって暮らす村があったり、
未確認飛行物体(UFO)が目撃されたりと、都市伝説の宝庫であった。
俺は親父に頼み込んで、巨大生物が棲んでいる富士山域に連れて行ってもらった。
富士山周辺には、千人以上の見物者の姿があり、マスコミ関係の専用車の他、空を見上げると、
テレビ局のヘリがいくつも飛んでいた。
目立つものはいくつもあり、テントを張って、キャンプする者もいれば、露店を開いて金儲けする者もいる。
一つの娯楽街と化して、観光名所の富士の湖での賑わいは例年以上であった。
普段、富士山周辺は夜になると暗闇に包まれるが、警察が警備体制を整えたため、
やたら山間部は明るかった。巨大生物の姿は肉眼で確認できないが、見物者は妙に高揚して、
自由気ままに騒いでいた。それからである、異変が起きたのは…
ある真夜中、巨大生物は本栖湖から出たことがなかったが、何故か陸へと上がった。
そして、見学者の前に姿を現したのであった。
その場にいた者は騒然とするのと同時に興奮していた。
俺は宿泊部屋のテレビで目撃情報を入手、カメラを持って、親父と共に現場へと向かった。だが…
警察が用意した照明装置の光は、巨大生物に集中した。実物を見ると、この世のものとは思えないと実感した。
そして…
「ギャォアァァァァ…」
巨大生物は見物客たちをじっと見た後、激しく雄叫びを上げた。期待から恐怖に変わる瞬間であった…
当時の生物学者の説では、巨大生物の性格は大人しいと分析されていたが、それは全く違っていた。
巨大生物は、見物者のどんちゃん騒ぎが気に障ったのか、夜行性なのか、原因は不明だが、
急に活発的な姿を見せた。つまり、暴走である。歓声が絶叫へと変わった瞬間だった。
見学者は警察の指示で安全な場所に避難した。
五十メートル近くの物体が暴れ回れば、一溜まりもなく、暴走する巨大生物にとって、
逃げ惑う人間は格好の餌食となった。
俺はというと…
「…健介、何やってる?早く逃げるぞ!」
俺は親父と避難するわけだが、ビデオカメラの電源を入れたまま、
さりげなく撮影を続けていた。暗闇にうっすら見える影、巨大生物は気が済むまで暴れた後、
本栖湖へと戻った。巨大生物による富士山域の惨劇事件は、三百人以上の死傷者を出して、
ひとまず幕を閉じたのであった。
俺はせっかくの大型連休が台無しとなり、不機嫌な顔で帰路に就くわけだが、
巨大生物を間近で見たことが友達に自慢できた。
俺のように巨大生物の見物してきたクラスメイトも割と多く、興奮のあまり話は尽きなかった。
ただ、大人たちにとっては国家を揺るがす重大なことであった。
日本政府は謎の巨大生物を危険視し、直ちに撃退作戦を決行した。
自衛隊の発表によれば、巨大生物の生息地とされる本栖湖の底に大きな穴があることから、
そこを塞いで上陸を防ぐとのこと。
政府の命で本栖湖に自衛隊が派遣され、湖の底に強力な爆弾を投下、
仕掛けた爆弾を一斉に起爆、水中衝撃波により、本栖湖は高飛沫を上げた。
作戦は成功したようで、巨大生物は封印された。しかし、それは一時的なことに過ぎなかった…
それから数ヵ月経ち、一九九九年七月下旬。待ちに待った夏休みに突入していた。俺は宿題を後回しにして、
先に遊び呆ける道を選んだが、どうやら思い通りに行きそうになかった。
「…臨時ニュースをお伝えします」
俺は毎週欠かさず観ているアニメ番組があり、チャンネルを合わせたが、
急に映像が切り替わり、つい口がぽかんと開いた。お気に入りのアニメ番組は自然消滅して、
緊急の報道番組が放送された。
俺は夕方の楽しみを奪われて苛立っていたが、報道番組の内容を耳にすると、
目が点になり、テレビ画面に釘付けとなった。
「…江ノ島に巨大生物が出現しました」
また、巨大生物が現れた。富士山域にいた個体と判明して、日本国民は再び注目した。
江ノ島が本栖湖と繋がっていたことも驚きで、現地に避難指示が出た。
政府は自衛隊出動を要請、総理大臣の指示で重火器使用許可、市街地での攻撃許可が出た。
巨大生物が歩けば、近くの家屋が大きく揺れて、しまいには瓦屋根がずれ落ちていく。
また、奴の咆哮は一キロメートル以上離れた建造物の窓ガラスを破壊することができる。
巨大生物は容赦なく、人口密集地に進行していくが、奴が目指す場所は原子力関連施設であった。
巨大生物は神奈川県の原発を襲撃して、核の放射能エネルギーを自身の体内に取り込んだ。
すると、異変が起こりだして…
「ギャォアァァァァ…」
巨大生物が雄叫びを上げると、まばゆい光に包まれて、
二倍近くの大きさ(八十三.九メートル)に巨大化するのであった。
変わったのは体格だけでない。少々愛嬌があった顔つきは消えて、凶悪かつ険しい面構えとなり、
全身の筋肉が発達、皮膚は暗い緑から灰色に変色、鋭い牙に爪、
長い尻尾や珊瑚状の背びれが特徴である。そのフォルムはまさしく〝怪獣〟であった。
巨大生物が怪獣に進化すると、東京都心部を目指した。
防衛ラインには自衛隊派遣部隊が待機しており、ついに対決する時が迫っていた。
報道番組の中継映像には、戦闘ヘリや戦車、武装する自衛隊員が映っており、
まるで特撮映画の撮影風景のようであった。戦闘の模様はテレビで確認できなかったが、
予想を遥かに超えたものだったに違いない。
現場に派遣された自衛隊員の報告によれば、
怪獣には火器やミサイルなど物理的攻撃が一切通用せず、全くの無傷であった。そして、奴は反撃を行った。
怪獣は口腔内から広範囲に火炎を噴射した。まるで強力な火炎放射器のようで、
奴は四方八方に害がある炎を吐いた。
おまけに怪獣は身体能力が異常に高く、走行することも可能で、猛スピードで突進するのと同時に、
戦車隊をサッカーボールのように蹴飛ばしたそうだ。
奴は防衛ラインの自衛隊部隊・在日米軍隊をあっさりと全滅させた。
防衛ラインを突破されれば、我々国民は逃げるしかない。
怪獣は都内を侵攻、政府に解決する術はなかった。日本の首都は核を発する炎に包まれて、
奴の体を赤く染めていた。そして、破壊活動に飽きてきたのか、怪獣は東京湾で姿を消した。
ひとまず安心したが、日本は多大なダメージを受けて、復興は容易なことではなかった。
日経平均株価の暴落、核汚染の恐怖、怪獣被災者への対応、今後の怪獣対策と政府の宿題は山積みであった。
俺も怪獣被災者の一人である。夏休み中に小学校の運動場に集まることとなり、
全校集会が開かれた。うちの地域は幸い被害を免れたが、東京がちゃんと機能しないことから、
住民の転校、転居が相次いだ。
俺の家族も、バラバラに生活することとなった。俺は父方の祖父母に預けられて、
家族全員と再会するのは成人となった頃であった。
怪獣は度々出現して、原発で腹中を満腹にした後、運動するかのように破壊活動を行う。
台風や地震のような自然災害と同じ類で、どうにも防ぎようがない。
また、俺の面倒を見てくれた祖父母は戦争を思い出すと言っていた。
確かに怪獣出現を知らせる警報音は気味が悪く、空襲を連想するのだろう。
そして…
怪獣は日本から海外に進出して、世界各国の人々を恐怖に陥れた。
アメリカ軍とロシア軍は自棄を起こして熱核攻撃を行うが、効果はなかった。
その後、怪獣は世界に大きな爪痕を残して、静かに北極圏で消息を絶った。気づけば、季節は冬であった。
以上、今まで語った内容は、俺が書いた小説作品の一部である。
実体験をもとに大学在学中に投稿した作品が見事、準入選した。
タイトル名は『破壊神上陸』
大物作家やノンフィクションライターから高評価を得る一方で、国民の悲惨さをネタにして、
金儲けするなという批判的な意見も寄せられた。そのため、発行部数はあまり伸びなかった。
ただ、ベストセラーとまではいかないが、処女作にしては、上出来だと自画自賛した。
こうして、俺はSF作家として有名になっていくが、実は怪獣の話は終わっておらず、
『破壊神上陸』の続編の執筆に取り掛からなければいけないようであった。