WBC世界ミニマム級タイトルマッチです。
カオサイ、ウィラポンら質実剛健で土台の強い同国王者の系譜を感じさせる
42戦全勝の王者ワンヘンに挑むは メキシコの曲者サウル・フアレス。
会場はまたもチョンブリ公会堂 … TWINSグローブの世界戦、好きですけどね …
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160804/16/dagekilab/4e/13/j/o0560072613714788739.jpg?caw=800)
フアレスについては、アドリアン・エルナンデスに勝った試合と
ミラン・メリンドに負けた試合を見ました。
手堅くベテランのような巧さと足のある
クラシックなボクサーファイターです。
スプリング中心の足運びは流麗で距離感もよく、
デトロイトインスパイヤな構えからリードが良く出ます。
自分のリーチを分かった上でボクシングを組み立てる選手です。
ディフェンスに関して右手のパリー使いがインアウト共に上手く、
これだけで相手の左右ストレートを巧みに捌いています。
差し合い中のパリー&ジャブからのステップインは得意で
そこから左右ボディ、アッパー、離れてはワンツー、
と一軸回転で多彩なコンボを繋げたりする場面も。
打ち分け、インサイドワークに特に長けた選手です。
先ほども言ったように基本左手は下げてデトロイトインスパイアな構えですが、
相手の返しに対してブロッキングが間に合わない際は
スリッピングアウェーも巧みに使いこなしています。
欠点も勿論あります。
規則正しいスプリングのリズム取りでスピードにも欠けるため、
どのタイプのボクサーを相手にしてもリズムが読まれ安く、
強引な攻めを許し、それを遮断する為に受動的インサイドワークを強いられる。
加えて、全体的には25歳にして老獪なボクシングをしてはいるのですが、
逆に言うと若さに欠ける部分もあるというか …
このレベルの選手としてはトップスピードとクイックネスがやや足りなく、
ボクシングもストップ&ゴーに乏しいです。
左ガードを下げるのも、インサイドワークやジャブを放つ際には
機能的な働きを見せますが、パリーしながら真っ直ぐ下がった時などは、
右ストレートの追撃を許す場面も多く見られます。
さて、前置きはこれくらいにして、試合を見てみましょう。
▼ ワンヘン・ミナヨーティン vs サウル・フアレス
ワンヘン、強し。
初回こそ様子見だったものの、
2Rからは、フアレスのスプリングの浮き際を
逆にドッシリと地に踵を付けたワンヘンの強打が捉えます。
上述の通りフアレスは序盤に既にリズムを読まれ、
ワンヘンの侵入を簡単に許してしまいます。
土台のしっかりした発射台を持つワンヘンのパンチは揺るぎなく、
特に右ストレートの精度は物凄い!!
目の良さもあるのでしょう、フアレスのヘッドムーブの先をコンマ何秒で捉え、
移動先にしっかり照準を合わせて正確にインパクトさせてきます。
( フアレスの左ガードが元々低い所為も勿論あります )
リードも差し合いや距離合わせに加え、
コンボ終わりの隙間を埋めるのにも多用し、
攻防終わりのフォローとしても、次の展開のきっかけとしても使い方が上手い。
たまらなくワンツーで飛び出してくるフアレスに対しても
冷酷なまでに正確な左フックカウンターを叩き付ける。
ただ、フアレスも曲者ですから ( これまた上述の通り )
受動的ながらもインサイドワークを上手く使い決定打は避ける。
徹し切るフアレスを倒し切る事は出来ませんでしたが、
間違いなく曲者であったこの挑戦者の数段上をいく
凄まじいレベルのボクシングを見せた王者。
ノックアウトCPフレッシュマートもそうですが、
ミニマム界隈でもほとんど減量が必要ないという その小さなフレームから
何故あれほどブレない体幹と強い圧力を誇る圧倒的フィジカルが生まれるのか。
理学的に考えるとやはりフレームを上位要素に考えてしまいがちなのですが …
タイ人の恐ろしさ。
やっぱりケンレンとチャイスーなんでしょうか。