期待に違わぬ素晴らしい試合でした。
結果から言うと2-0でフランプトンが新王者に。
「 サンタクルスが勝っていた 」 という声も結構上がってますが、
( 私も戦前予想はサンタクルス勝利でしたので、予想はハズしましたが … )
この試合は完璧にフランプトンの勝利で間違いないでしょう。
ドローに付けたジャッジの方が不思議でしたけど。
たまたまゆっくり観れ、きっちり採点しながら観戦。
なのでたまには1Rずつレビューします ^
【 1R 】
お互い様子見でスタンス・距離・出方の確認。
フランプトンはやはりロー&ワイドスタンスで横幅を作る。
サンタクルスもいつもと変わらず直立一軸で予想通りの縦横の構図。
サンタクルスは長い距離のリードから組み立てたい所ですが、
元々スロースターターですからまだスピードにノリがない。
フランプトンの方が初回から所作にクイックネスが効いていて
やや距離を掴んだ感じ。 初回はフランプトンに10-9。
( WBAなのでマストで付けますが、そうでなければ10-10ですね )
【 2R 】
前半、フランプトンが前に出て揺さ振りを掛けるも
打ち合いの中での技術はサンタクルスの方が上。
ワイルドに打ち合いをしているように見えて、
サンタクルスはブロッキングした腕でのカウンターが抜群に上手い。
当て勘を生かしたナチュラルなカウンターが打ち合いの中で冴える。
しかし後半は逆にフランプトンが盛り返し、
左フックをサンタクルスのテンプルに合わせ、
一瞬サンタクルスの平衡感覚を失わせる。
これは見せ場として大きかった。
10-9でフランプトン。
【 3R 】
フランプトン再びアウトボックス。
サンタクルス、フランプトンのロー&ワイドスタンスのマジックを
全く解けていない。 足幅、腰の屈曲、前手に騙され続ける。
対策はしてきたのだろうか。 サンタクルス入れず。
フランプトンが入ってきて打ち合いになった時だけは本領を発揮出来てますが、
フランプトンが下がると途端に距離が合わなくなります。
この時点で距離を支配しているのはフランプトン。
フランプトン、中間距離からのロングアッパーをクリーンヒット。
( SB伝統のストレートアッパーのような一撃 ^ )
このRもフランプトンの10-9。
【 4R 】
サンタクルスのプレスが強まり、
まだまだ距離は合わないものの、有効打で上回る。
フランプトンの方がやや空転する場面が目立つ。
サンタクルスのパンチには力みがなく、
フレーム力と一軸回転の梃子使いをナチュラルに生かした物。
打ち合いになると削られるのはパンチで劣るフランプトン。
この試合、初めてサンタクルスに10-9。
【 5R 】
2Rのような展開。
フランプトン前半プレス 後半ボクサーファイト。
サンタクルスは相変わらず同じ距離感のままパワーショットを当てられず。
手数を出すも、たまに当たる単発でしかポイントメイク出来ない。
フランプトンに10-9。
【 6R 】
一転して激しい打ち合い。
その中でのサンタクルスのカウンターが綺麗に入り、
明確にフランプトンの顔を跳ね上げるシーンもあり。
スロースターターのサンタクルス、ペースが上がってきた感。
フランプトン、ややムキになり ポイントを失ったか。
サンタクルスに10-9。 ここまでの公開採点は ↓ 以下の通り。
【 7R 】
途中採点では、6R以外全てフランプトンが取ってました。
焦るサンタクルス、前半はクロス気味の右ストレートを強く当てポイントを奪う。
しかし有功打は単発でそこから後続打には繋げない。
フランプトンの戦術の根本を見ず、そこを疎かに、
根本治療を怠ったまま、一軸強打を振ろうにも
応急処置にしかなりようがなく … 距離が合うはずもなく …
本人も首を傾げるような仕草を見せる場面もあり。
後半はフランプトンの的確な飛び込みからの先手、
ステップインの踏み込みが深く鋭く、バックステップも速く遠く離れ、
後手のサンタクルスのカウンターを見事に外す。
このRも10-9でフランプトン。
【 8R 】
サンタクルスの踏み込みが再びやや深くなった印象。
よく伸びる左右ストレートをはじめとしたナチュラルな強打、
そこから回転を生かした左右ボディ、左アッパーへと繋ぐコンボ。
フランプトンの飛び込みにはガードした腕からの後出しフックのカウンター。
一軸メキシカンの完成形とも言える素晴らしいオフェンス能力を遺憾無く発揮。
ややサンタクルスがいつものペースを取り戻したR。
フランプトンを削るのに十分なサンタクルスの有効打が目立つ。
このRはサンタクルスに10-9。
【 9R 】
サンタクルスの踏み込みは依然として強い。
しかしここに来てもやはり距離を完全には掴んでいない。
スコット・クイッグは終盤Rにはフランプトンのバリアを破る為の
強引な距離調整から 強打を捻じ込む事に成功していましたが
サンタクルスは9Rに入ってもそこまで到達していない。
( 戦術云々より本当に自分のボクシングをナチュラルにやっている印象 )
フランプトンのリードをちょこちょこ貰い、前手で回される。
中盤、リーチに勝るサンタクルスが同時打ちの右カウンターを先に当て、
そこから見せ場を作ろうと一気に詰め寄るも、
フランプトンに全てヘッドムーブでいなされ、逆に見せ場を与える。
このRもフランプトンの10-9。 ここでまた公開採点。 ↓ 以下の通り。
【 10R 】
私的採点と公開採点が微妙にズレてきました ^
が、評価が難しいRが多いのは確かです。
このRも下がりながらのフランプトン、
サンタクルスは相変わらず距離は掴めていないが、
若干の有効打の差でサンタクルスに10-9かな …
マストでなければ10-10ですが … 。
【 11R 】
フランプトン前に出て勝負に出るも打ち合いの中では
サンタクルスのナチュラルカウンターを被弾するシーンが目立つ。
クイッグ戦の終盤と同じ展開は避けた方が … やはり打ち合いは部が悪い。
ここまで来てもサンタクルスの打ち合い時の当て勘の良さは全く落ちない。
ラウンド終了時フランプトンが両腕を上げ自軍に戻るも、
ポイントはサンタクルスに10-9。
【 12R 】
両者勝負。 ややビハインドを感じているであろうサンタクルスは一気に仕掛ける。
パワーショットを積み重ねて押していくもクリーンヒットには乏しい。
後半はフランプトンのカウンターが単発ながらクリーンヒットを印象付ける。
しかしながら両者決定的場面は作れず … 。
リングジェネラルシップ的にも後半を取ったフランプトンに10-9かな …
このRもマストでなければ10-10ですね。
試合終了です。
↑ 両者のパンチ各要素比率はこんな感じです。
パンチだけ見ると若干サンタクルスが上回っていますね。
結果は皆様ご存知の通り。
12R判定でフランプトンが勝利。
( 2-0 / 114-114 / 116-112 / 117-111 )
※ 一応私の採点も … 115-113でフランプトン ^
プロモーターでもマネージャーでもあり
ジムの会長でもあるバリー・マクギガンの歓喜の表情。
自らが巻いていたベルトが30年ぶりに戻ってきたのですから喜びも一入でしょう。
バリーの息子でチーフトレーナーのシェーン・マクギガンも喜び爆発といった感じでした。
予想としては、サンタクルスがもっともっとプレスを掛けて、
長いリードを捲きながら追い詰める展開を予想していましたが、
意外にもフランプトンのロー&ワイドスタンスに対して無策にも見え ( ? )
横幅を広く取り最短で大きく動けるフランプトンに対し、
サンタクルスは真っ直ぐ詰める場面ばかりが目立ち、
フランプトンがグライディングする先へサイドプレスすることもなく、
特殊なスタンスの相手に対しての足取り位置が不明瞭だったように感じました。
フランプトンの前手の餌にまんまと喰らい付き、トラップスペースに誘い込まれ、
結果 返しやカウンターを貰い、距離を掴めぬまま一軸強打を振うも空回り。
フランプトンは必要以上には下がらず、逆にプレスを掛けて先手を出す場面も多く、
スタンスの妙だけでなく、押し引き、緩急の付け方でも距離を支配していました。
サンタクルスがここまで思うように有効打を奪えなかった試合はこれまでなかったのでは?
サンタクルスもフランプトンが前に出て打ち合いに来た際は、
ガードした手でそのまま打つナチュラルなカウンターと
当て勘の良い強打でアドバンテージを取る場面もありましたが、
やはり全体的なリングジェネラルシップはフランプトンが握っていました。
僅差でしたが しかし明確な フランプトンの勝利。
フランプトンは超人的能力があるような選手ではありませんが、
ワイルドそうな外見に似合わず、己の身体的ビハインドを覆すだけの戦術と、
それを集中し最後まで徹底して遂行出来る強い精神力があります。
強打でバッタバッタと倒していくような選手ではありませんが、
なんだろう、派手なダウンシーンもハっとするような超人芸も無いのに惹きつける。
人気もスター性もある新王者。 二階級制覇の次は何処へ向かうのか。
骨格的にはまだ簡単に落とせるであろう一つ下のSバンタムも含めて、
まだまだこの界隈には夢のカードが沢山ありますからね。
今後も更なるビッグマッチに期待していきたいです。
追記 : 試合後のニュース映像です ↓
※ 前半のマイキー・ガルシア2年半ぶりの復帰戦にも注目。