アミール・カーン vs デボン・アレクサンダー  -  その1 | R I N G C H E C K !

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打撃系格闘技の練習や試合についてのブログでしたが、
現在は海外ボクシングとムエタイの記事が中心です。
知り合い・近親者向けに書いています。




非常に楽しみにしていた試合なので
久々に観戦記を書いていきます。



それぞれオーソドックスとサウスポーで
世界トップクラスのスピードと
テクニックを誇る超強豪対決。



ロード・トゥ・メイウェザーでもある、
ノンタイトルのサバイバルマッチ。



各サイトでの事前予想でも
予想が見事に割れていて
それだけ予想の付け辛い試合でしたが …



蓋を開けてみれば、意外なほどに
明確な差がある展開となりました。



早速いきます。 ゴングが鳴って
まずペース取りに走ったのはカーン。



初回から緩急を付けて
様子見のような緩い所作と急激なアタックで
落差を付けます。飛び込んだ際には
1秒に満たない時間軸で5~6発の
光速連打を放ち、まずスピードで威圧。



初回からスピードではカーンの方が
1枚も2枚も上でした。



強振して削るようなパンチではないですが
能力の差を見せ付ける形の
良いプレッシャーの掛け方です。



ジリジリ寄るのはアレクサンダーの方ですが、
クロスレンジでこの連打を見せられ
牽制以外の手が出ません。



“ 下がらせるだけがプレッシャーの掛け方じゃない ”
という某コーチの名言を改めて思い出します …



加えて前手のリードの差し合いでは常に先手を取り、
サウスポーのアレクサンダーの右リードの返しに
必ず左ジャブをカウンターの形で被せます。








カーンはリードの打ち方も実に多彩。



前述の打ち方に加え、
オーソとサウスポーでの対峙だと
立ち位置から極端に狭くなるガード幅の隙間を
脇を絞り上体を逸らしジャブを滑り込ませたり、
リズムを半拍遅らせてパリーを空振らせて
その上からジャブを突いたり …



リード一つ取っても両者の幅は違いました。








1Rの終盤、
明らかにペース取りに来ているカーンを寸断しようと
アレクサンダーはガードをガッチリ固めて
カーンに強打を振るっていきます。



圧力にバランスを崩し
背中を向けてしまったカーンにも
容赦なく猛然と襲い掛かり、
ここでは良い殺気を見せてくれました。



しかし、私の中では12Rを通して
アレクサンダーの見せ場は結局このシーンだけ …



2R以降、カーンのペースはますます上がります。









前手の刺し合いで完全に上回ったカーンは、
利き手からの入りでもアレクサンダーを凌駕。



右もジャブと全く変わらないスピードで飛び込んで
くるので それだけでも脅威なのですが …









先に左 ( 時には右 ) にヘッドスリップして
見えない角度から右手を付いてこさせる打ち方、
左フックのフェイントを見せてからの打ち方、
また左の使い方同様 半拍遅らせて出したり、
角度やタイミングに変化を付け、
右の各種パンチも容易には相手に読ませません。



6Rには、 カーンが放った右に対して
アレクサンダーがカウンターの左を被せた所に
更にカーンがカウンターのカウンターで
右を被せていくという …
信じられないような神シーンもありました …



ワンツーも、緩急を付け、
「 ワツー! 」 であったり、
「 ワ~ンツ~ 」 であったり ^
ディフェンス力のあるアレクサンダーを
攪乱させて被弾を誘っていきます。



また敢えて腰を入れず打ち切らない
「 ワツ 」 の後にスリーで強振する
左フックも見事でした。









元々カーンの左フックは拳をしっかりと打ち下ろす、
ある意味ムエタイ打ちにも似た軌道なのですが、
それがサウスポーのアレクサンダーの固いガードを超えて
見事な有効打となっていました。



完全にリングジェネラルシップを取ったカーンは
パンチのハンドスピードもパワーも更にギアを上げ
試合を一方的な物にしていきます。









試合結果はカーンの大差判定勝ち。



私の採点は 120-109 でカーンです。
( 初回だけドローであとは全てカーン )



120-108 のジャッジが居ましたけど
自分も ほとんど同じ採点だったと思います ^




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いやぁ しかし この両者の対戦で
ここまでの一方的な完封劇になるとは …



相手を支配してメンタル的に優位に立ったカーンは
本当に手が付けられない選手になりますね。
まさにスーパーサイヤ人状態。
天才の本領発揮です。



元々カーンは打たれ強い訳でも顎が強い訳でもなく、
プレスコット、マイダナ、ダニー・ガルシアと、
フィジカルに勝る強打者に強振されると
自分のボクシングを見失ってしまう
メンタルの弱さもある選手ですが、
この試合において集中力が途切れる事は
最後までありませんでした。



( 逆に後半にいくに連れてメンタルも
充実していった試合だと思います )



試合全体を通して、
陣営の戦術・作戦通りに試合が進行しているのが、
アレクサンダーのある一点を見ていて、
よく分かりました。



これがバージル・ハンターの策なのか、
カーンが独自に取った戦術なのかは
定かではありませんが …



次の限定記事では、
この勝負でカーンが圧倒的な
リングジェネラルシップを握る事が出来た、
その最も大きな戦術的要因について
書いてみたいと思います。