非常に楽しみにしていた試合なので
久々に観戦記を書いていきます。
それぞれオーソドックスとサウスポーで
世界トップクラスのスピードと
テクニックを誇る超強豪対決。
ロード・トゥ・メイウェザーでもある、
ノンタイトルのサバイバルマッチ。
各サイトでの事前予想でも
予想が見事に割れていて
それだけ予想の付け辛い試合でしたが …
蓋を開けてみれば、意外なほどに
明確な差がある展開となりました。
早速いきます。 ゴングが鳴って
まずペース取りに走ったのはカーン。
初回から緩急を付けて
様子見のような緩い所作と急激なアタックで
落差を付けます。飛び込んだ際には
1秒に満たない時間軸で5~6発の
光速連打を放ち、まずスピードで威圧。
初回からスピードではカーンの方が
1枚も2枚も上でした。
強振して削るようなパンチではないですが
能力の差を見せ付ける形の
良いプレッシャーの掛け方です。
ジリジリ寄るのはアレクサンダーの方ですが、
クロスレンジでこの連打を見せられ
牽制以外の手が出ません。
“ 下がらせるだけがプレッシャーの掛け方じゃない ”
という某コーチの名言を改めて思い出します …
加えて前手のリードの差し合いでは常に先手を取り、
サウスポーのアレクサンダーの右リードの返しに
必ず左ジャブをカウンターの形で被せます。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20141215/16/amon-duul/ff/56/j/o0400025313159602163.jpg?caw=800)
カーンはリードの打ち方も実に多彩。
前述の打ち方に加え、
オーソとサウスポーでの対峙だと
立ち位置から極端に狭くなるガード幅の隙間を
脇を絞り上体を逸らしジャブを滑り込ませたり、
リズムを半拍遅らせてパリーを空振らせて
その上からジャブを突いたり …
リード一つ取っても両者の幅は違いました。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20141215/16/amon-duul/e6/78/j/o0400024613159602165.jpg?caw=800)
1Rの終盤、
明らかにペース取りに来ているカーンを寸断しようと
アレクサンダーはガードをガッチリ固めて
カーンに強打を振るっていきます。
圧力にバランスを崩し
背中を向けてしまったカーンにも
容赦なく猛然と襲い掛かり、
ここでは良い殺気を見せてくれました。
しかし、私の中では12Rを通して
アレクサンダーの見せ場は結局このシーンだけ …
2R以降、カーンのペースはますます上がります。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20141215/16/amon-duul/01/c1/j/o0400026913159602164.jpg?caw=800)
前手の刺し合いで完全に上回ったカーンは、
利き手からの入りでもアレクサンダーを凌駕。
右もジャブと全く変わらないスピードで飛び込んで
くるので それだけでも脅威なのですが …
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20141215/16/amon-duul/af/ff/j/o0400028613159602298.jpg?caw=800)
先に左 ( 時には右 ) にヘッドスリップして
見えない角度から右手を付いてこさせる打ち方、
左フックのフェイントを見せてからの打ち方、
また左の使い方同様 半拍遅らせて出したり、
角度やタイミングに変化を付け、
右の各種パンチも容易には相手に読ませません。
6Rには、 カーンが放った右に対して
アレクサンダーがカウンターの左を被せた所に
更にカーンがカウンターのカウンターで
右を被せていくという …
信じられないような神シーンもありました …
ワンツーも、緩急を付け、
「 ワツー! 」 であったり、
「 ワ~ンツ~ 」 であったり ^
ディフェンス力のあるアレクサンダーを
攪乱させて被弾を誘っていきます。
また敢えて腰を入れず打ち切らない
「 ワツ 」 の後にスリーで強振する
左フックも見事でした。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20141215/16/amon-duul/d6/ca/j/o0400030913159602296.jpg?caw=800)
元々カーンの左フックは拳をしっかりと打ち下ろす、
ある意味ムエタイ打ちにも似た軌道なのですが、
それがサウスポーのアレクサンダーの固いガードを超えて
見事な有効打となっていました。
完全にリングジェネラルシップを取ったカーンは
パンチのハンドスピードもパワーも更にギアを上げ
試合を一方的な物にしていきます。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20141215/16/amon-duul/1a/b0/j/o0400040513159602297.jpg?caw=800)
試合結果はカーンの大差判定勝ち。
私の採点は 120-109 でカーンです。
( 初回だけドローであとは全てカーン )
120-108 のジャッジが居ましたけど
自分も ほとんど同じ採点だったと思います ^
いやぁ しかし この両者の対戦で
ここまでの一方的な完封劇になるとは …
相手を支配してメンタル的に優位に立ったカーンは
本当に手が付けられない選手になりますね。
まさにスーパーサイヤ人状態。
天才の本領発揮です。
元々カーンは打たれ強い訳でも顎が強い訳でもなく、
プレスコット、マイダナ、ダニー・ガルシアと、
フィジカルに勝る強打者に強振されると
自分のボクシングを見失ってしまう
メンタルの弱さもある選手ですが、
この試合において集中力が途切れる事は
最後までありませんでした。
( 逆に後半にいくに連れてメンタルも
充実していった試合だと思います )
試合全体を通して、
陣営の戦術・作戦通りに試合が進行しているのが、
アレクサンダーのある一点を見ていて、
よく分かりました。
これがバージル・ハンターの策なのか、
カーンが独自に取った戦術なのかは
定かではありませんが …
次の限定記事では、
この勝負でカーンが圧倒的な
リングジェネラルシップを握る事が出来た、
その最も大きな戦術的要因について
書いてみたいと思います。