(現在他ブログからの引っ越しをしていて、やたらエントリーが多いと思われると思いますが、多分明日で落ち着きます。お許しください!)

 

 

からの続き



「私の今付き合っている人の子なのよ! ユウヤの子なの! 
だからあなたは一切関係ないの! 嘘だったのよ、嘘!」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


は・・・・・・?

 

 

本当に言葉がない。


ユウヤ、か。

ユリの父親に、ユリに高校時代のクラスメートでずっと仲のいい男友達がいる、と聞いたことがあったのを思い出しました。


そういえばそいつ、僕らの結婚式の時も来てて、挨拶したことがあったじゃないか。



はあ・・・・・・・・・・・・・。



でも、ユリが支離滅裂なのは今に始まったことじゃないし、振り回されてただ感情的に話が終わるのは避けたい、と僕は思いました。


「それで、なに、そいつと相談して、俺の子だって言ってきたの?」


「彼は何も知らないわ。あなたにそんなことを言ったって知ったら、驚くと思うけど」


「・・・お前、一体何がしたかったわけ?」


「ただあなたに協力してもらいたかったの」



いや、「協力」って、もう、十分というか、ありえないほど僕としては協力していたつもりでしたけれど・・・。



本当にうんざりでした。


カイトのことさえなければ、本当に一生縁を切って二度と顔も見たくなかった。


それでも、カイトがユリの下で育てられていて、僕がカイトに会いたいと思っている以上、例えどんな状態でも僕が譲歩しなければうまく行かない。


カイトのためにユリと付き合っていくには、とにかく感情を殺してマシンのように物事を処理するしかない。


頼んで何かが変わるようならとっくにもう変わっていて、僕らは離婚なんかしていなかった。


この人はこういう人で、絶対に変わらないという現実を受け止め、それでもカイトと会いたいなら、煮え湯を飲んでも僕が合わせるしかない。



諦めのため息を1つつき、僕は言いました。


「わかった。
でも、一回僕の子だって言われて、クリニックでも何の証拠も出してもらえなかったわけだから、将来的な不安は残る。

女で母親になる君にはわからないかもしれないが、父親になる男が「あなたの子よ」って言われるのって、ものすごく重たいことなんだ。

母親は妊娠したら間違いなく自分の子だってわかる。

でも父親になる男には、本当に誰の子かって、女側の「あなたの子よ」という言葉からしかわからない。

それを途中で「やっぱり違う」って言われて、はい、そうですか、とは言えないよ。

君だってわかってるだろうけど、君は今まで散々僕に嘘をついてきた。

今は違うって言いだしたけど、生れた後で、「本当はあなたのよ」って言われるのは絶対に嫌だ。

絶対に僕の子じゃない、ユウヤの子なんだっていう証拠が欲しい。

病院の資料、君が持ってるんだろう? そのコピーを一応くれよ」



こうしてこれ以上揉めないよう努力することを条件に、僕はユリに会ってその病院の資料のコピーを受け取ることになったのでした。



******************************************



必死で冷静さを保って、カイトのために穏便に対処しようとしていた僕でしたが、この時の会話は、振り返れば本当にひどいもので、逆に自分の無理やりな冷静さこそが、動転していた証だったのかもしれません。



後から、本当に頭を冷やして客観的に考えれば、すぐにわかったことでした。



ユリがキレて口走った一言。


「あなたの精子はね、2009年にもう廃棄して、新しい精子を出してるの!」



それって、あいつが僕の知らない間に勝手に離婚届を出した年じゃないか・・・。

つまり、僕とまだ結婚していた年に、もうクリニックで他の男との子作りを始めていたってこと。

 

 

 

 

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続く

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からの続き

 

「ねえ、だから、なんで勝手な事するわけ? なんで待てないのよ!」


電話のユリは怒り狂っていました。


僕はため息をつきました。

勝手なこと、か。自分がやってることは何なんだよ。
やれやれ・・・。


「何のこと?」


「ふざけないで。クリニックのことよ。
電話が来たわ。もう私、あそこで診察は受けられないって。
全部あなたのせいよ。どうしてくれるのよ!」


ああ、彼ら、結局そういうことにしたのか。

そりゃ、あれだけ繁盛してるんだから、火種になりそうな患者なんか、抱えてはおかないよな。

僕は肩をすくめました。



「仕方ないだろう。そもそも君が嘘ついていたんだから。それになんだよ、アオイの卵子って。全く聞いてないよ」


「私の卵の質が良くなかったから、助けてほしいって言ったのよ。あの子、優しいから」


「え、じゃ、結局君の卵じゃないのか?」


「だから混ぜたのよ。アオイと私の卵を。アオイだって、自分の卵子がどこまで何に使われるかは知らなかったわよ。ただ、私が困っていて、卵子が欲しいって言ったから、くれただけ」


女性の卵子を採取することが、髪の毛を1本引き抜くのと同じくらい簡単にできることとは思えません。

欲しいって言われて、ハイ、どうぞ、って簡単にあげられるものじゃないでしょう。



物理的な問題もそうですが、倫理的な問題にしてもそうです。

ちょうだいって言われて、「優しい」からあげた? 卵子を??


自分のDNAですよ?

自分の子供を作れる重要な細胞なんです。


それを、「何の用途かはよくわからないけど、欲しがっているからあげた」って、僕には到底理解できない心理です。

僕だって自分の精子がどう使われたかで、こんなに動揺しているっていうのに、なぜ平気でそんなことができたのか。



質問を続ける僕に、キレたユリが怒鳴りました。


「大体ね、あなたには関係ないことなのよ!」


「関係ないって何が?」


「あなたの子じゃないのよ!」




は?




はああああああ?




「あなたの精子はね、2009年(*この会話が行われたのは2011年)にもう廃棄して、新しい精子を出してるの!」



さっぱり意味が分かりません。



「どういうこと?」


「私の今付き合っている人の子なのよ! ユウヤの子なの! 
だからあなたは最初っから一切関係ないの!」

 

 

 

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結局、その後も何をどう言っても、何も資料は出せない、ご夫婦でご相談してください、を繰り返されるばかりで、話は平行線に終わりました。


そもそも、田所さんにしても僕にしても、あまりに驚く情報が多すぎました。


こうして僕らは、お互いとりあえず一旦引いて、田所さんがクリニックの副院長に確認を取るという話で、電話を切ることにしました。




電話を切った僕は、ぼんやりと天井を見上げながら、起こったことを整理しようとしました。



間違いないこと:

ユリがクリニックで体外受精して、「僕の子」と呼ばれる子供を今妊娠していること



わからないこと:

本当に僕の精子を使ったのか?

使ったのなら、いつのものなのか? 

いつ妊娠したのか? (ユリが妊娠の話を始めたのは、和解が成立した2日後でした)

仮に本当に僕の子だったとしたら、同意もなく勝手に凍結していた昔の精子で妊娠した子も、‟僕の子”になるのか?

生物学的に僕の遺伝子なら、‟認知”とかいうのをしなきゃいけないのか?

そうしたらその子を本当に扶養していかなきゃいけないのか?



アオイの卵子を使ってどうのこうの、って一体なんだ?

これは、素人の僕にはどういうことかわからない。

どういうことなのか調べなきゃいけない。



それに、今付き合いだした彼女、メイにはなんて説明したらいいんだ?


やっと和解ができたよ、と言った時にあんなに喜んでくれたのに、やっと本当に将来を考えることもできるかもしれないと思ったその数日後に、「実は前妻との間に子供ができました」なんて、言えるわけないだろ!


それより、シングルマザーとして頑張ると言っていたのに、いきなり体外受精で僕の子を妊娠するなんて、ユリは一体何を考えているんだ? 

そんなユリに育てさせて、カイトは大丈夫なのか?



真っ白な僕の頭の中を、いくつもの疑問がぐるぐる回り続けました。



これから一体どうなるんだろう。


いつまで続くんだろう。



さすがにショックでしばらくはぼんやりしていましたが、ずっと一日こうしているわけにもいかない。



時計はまだ午前10時を指していました。


僕は重たい身体を引き起こして、何とか自分を仕事に集中させました。



数時間後、クリニックから電話を受け取ったユリが、怒り狂って電話をしてくるまで・・・。

 

 

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続く