和解成立後① 幸せになります宣言w からの続き
ユリの「幸せになります宣言」から数日。
2週間ぶりの面会交流があった。
カイトの顔を見るとホッとする。
どんないざこざがあっても、カイトと会えている。
それさえあればいいじゃないか、と思った。
晴れた空に誘われて、僕らは散歩に出た。
家の近所の並木道。
遊歩道沿いの小さな公園。
何てことのないいつもの景色も、そこにカイトの笑顔があるだけで特別になる。
「こら、カイト、はしゃぐなって!」
駆け出して先に行こうとするカイトを、ひょいと持ち上げる。
それもまたゲームか何かと思ったのか、手足をバタつかせて笑うカイト。
まるで釣り上げられた魚みたいだ。
つられて僕も笑う。
なんだろう。ふわっとやわらかい、この気持ちは。
―――この子を守っていきたい。
その想いは、ほとんど祈りに似ている。
ユリがやっていることは本当に滅茶苦茶だし、考えていると具合が悪くなるばかりだけれど、それでもカイトと笑い合う時間があるのなら、僕は何度でも立ち上がって頑張れると思う。
笑っていよう。せめて、カイトと一緒の時は。
ジタバタもがいて僕の腕から逃げ出すと、カイトはまた走り出す。
そして、少し先まで行くとくるっと振り返り、いたずらっぽい表情を浮かべ、今度はこっちに向かって走ってくる。
僕はただ、笑って全部を受け止めよう、と思った。
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「あのメールのことなんだけど・・・」
面会交流にカイトを連れてきたユリが、薄ら笑いを浮かべながら言う。
「家賃払わないとか家から出てけとか、生活費減らすとか、さ。
あれ、和解書違反だからね!」
「何が? 和解書に書いてある通りだけど」
表情も変えずに僕は答える。
「再婚したら、でしょ。まだ再婚してないし。この先どうなるかもわからないでしょ?」
おかしな実験的体外受精までして無理やり妊娠したのに、この先どうなるかわからない、とかあるんだ。
あんな「幸せになります」宣言までしたのに。
呆れるのを通り越して、笑うしかない。
もう僕の心はユリの言葉には何も感じるものがない。
「とにかく、再婚するまではあなたにはお金払う義務があるんですからね! 忘れないでよ!」
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今は、ただ、カイトといる時間を大事にしよう。
いろんな嫌なことを忘れて、僕は笑顔で腕を広げる。
大きな目をキラキラさせながらカイトは全速力で突進してきて、笑いながら僕の胸の中にどすんと収まった。
「おじさん、大好き」
は?
笑顔が一瞬固まる。
「カイト、おじさんじゃないよ。ダディだよ。何言ってんの?」
「うん? ママがおじさんのことは、『おじさん』って呼べ、って言ったから」
ちょっと困った顔で僕の顔を見上げるカイト。
その時、僕は一体どんな顔をしていたんだろう?
せめてカイトと一緒の時は、ずっと笑顔でいようって思ってたのに・・・。
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