悲しみの歌の世界
世の中の 遊びの道に すずしきは 酔ひ泣きするに
あるべかるらし
大伴旅人
(よのなかの あそびのみちに すずしきは えいなき
するに あるべかるらし)
意味・・世の中の遊びの道で清々しく快いのは、酔って
泣いたりするのにあるようだ。
世間の遊びの道が面白くなければ、いっそ酒を
飲んで泣き上戸にでもなるほうがいいらしい。
作者は大宰府まで伴った妻と死別して悲嘆のどん底にあった頃詠んだ歌です。
注・・すずしき=涼しき。気持がさっぱりしている。さわやかである。
作者・・大伴旅人=おおとものたびと。665~731。
従二位大納言。大伴家持の父。
出典・・万葉集・347。
☆ ☆ ☆
爺さん:
原職の終わりころ、爺さんも「同期の桜」を失った。
その晩、上司と南区澄川のある居酒屋で、浴びるほど酒を喰らい泣き上戸になってしまった経験が思い出される。
酒を飲みながら、美空ひばりの「悲しい酒」を聞きながら、余計泣き上戸になった。
しばらく、心の傷が癒えなかった。
なぐさめに付き合ってくれた、その上司も、定年後まもなく、黄泉の世界へ旅立ってしまった。
☆ ☆
爺さんの妻は、間もなく、肝細胞がんで4回目の入院をする。
入院中、ベッドの上で、爺さんと「預かり猫のさくら」のことを、想い、「家に帰りたい・」と
病院側を困らせるらしい。
しかし、爺さんとて、一人でご飯を食べても、おいしくないし、寝つきも悪い。一人寝は、やはり寂しい。
焼酎のロックがついつい進んでしまうが、泣き上戸までにはならない。
もし、妻が黄泉の世界へ旅立ったら、と思うと。この歌人の心の痛みがずっしり、染みてくるような気がする。
女性のほうが、連れをなくした場合、気持ちの切りかえが早いという。母性本能が心の癒しを早めるらしい。
男は、いつまでも、気持ちを引きずって、なかなか立ち直れないようだ。