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「生きる意味」は、一流の文学者、心理学者、哲学者でもわからない (1)

 

出典:生きる意味109 長南瑞生 著 1万年堂出版

 

 昨年末まで「生きる意味について、七つの間違い」をご説明してきました。このことから、ますます明確になってきたように、果てしなく求め続けなければならないもので、本当の生きる目的とはいえません。また、死んでいく時に、光を失い、無意味に思えてしまうものでもいけません。そんなものを目的と思う込んで一生を費やしてしまえば、悲劇の人生になってしまいます。

 そうならないためには、この本当の生きる意味知ることが、ぜひとも必要です。

 

 ところが、19世紀後半から20世紀前半のドイツの社会学者、マックス・ウェーバーは、すでに学生に対する講演の中で、「生きる意味」は。学問によって論証できるものではないと言っています。

 

 この世界が何かしら「意味」をもつものであるかどうかということ。更に

 この世界のうちに生きることが果たして意味あることであるかどうかとい

 うこと--これに至ってはもとより論証の限りではない。

 これらはすべて問題外とされるのである、          (マックス・ウェーバー)

 

 それでも、少し触れたように、かつての文学者や心理学者、哲学者たちの中には、この問題に答えを出そうと懸命に取り組んだ人たちも数多くあります。そういった知識人たちでも、誰一人「生きる意味」はわからなかったのでしょうか?

 

● 豊かな感性で人生を描き出す文学者の言葉

♦ 夏目漱石

 例えば、夏目漱石は、若い頃から「腹の中は常に空虚」で、人生の目的を探求していました。

学習院での学生に対する講演で、若い頃の心境をこう言っています。

 

 私はこの世に生まれた以上何かしなければならん、といって何をして好いか

 少しも見当がつかない、                       (夏目漱石)

 

 やがて。人まねではなく、自分らしく生きることを発見して、少しは落ち着いて作家として活躍し始めるのですが、自分らしく生きたところで、そうやってどこへどこに向かって生きるかという、生きる目的は分かりません。

 中期の「夢十夜」という作品には。どこに行くのか分からない船に乗って心細くなっている様子が描かれています。

 どこに行くのか分からないのに、周りの人は星を見て天文学の話をしたり、サロンで歌ったりしていますが、行き先は気にしていないようです。やがて行き先が分からないまま進んでいくことがますますつらくなって、ある晩、海に飛び込みます。そして最後は

 

 無限の後悔と恐怖とを抱いて黒い波の彼の方へ静かに落ちて行った。   (夏目漱石)

 

とこの作品は終わります。

 晩年の「行人」でも、目的も手段も分からないと苦しみ、「硝子戸の内」では、

 

 今まで書いたことが全く無意味のように思われ出した。          (夏目漱石)

 

 と、言っていますから、ついに最後まで、この疑問は解けなかったようです。

 

♦芥川龍之介

 その門人の一人、芥川龍之介も、「蜘蛛の糸」「杜子春」などの名作を残し、天才といわれた作家ですが、やはり生きる意味は解らなかったようです。自伝的作品「或阿呆の一生」に長男の誕生を、こう嘆いています。

 

 なんのために生まれて来たのだろう? この娑婆苦の充ち満ちた世界へ  (芥川龍之介)

 

 自分で生きる意味が分かっていれば、子供にも教えれば生きる意味は分かるなずです、

子供の生きる意味が分からないということは、やはり自分の生きる意味も分からないのです。

 最後は、

「将来に対するぼんやりした不安」

によって自ら命を絶ってしまいました。このように生きる意味が分からず、中には自殺してしまうひ人もあるのです。

 

♦太宰治

 太宰 治もそうでした。

 大地主の家に生まれ、東京帝国大学に入学、38歳の時、没落していく上流階級を描いた代表作「斜陽」がヒットし、人気作家になります。

 ところがそこには、このように書いています。

 

 生まれて来てよかったと、ああ。いのちを、人間を、世の中を、よろこんでみとうございます。(中略)

 僕は自分がなぜ生きていなければならないのか、それが全然わからないのです。(太宰治)

 

 そして晩年。遺作となった「人間失格」を残して自殺してしまうのです。

 

続く