80歳の壁 第1章医者・薬・病院の壁 最終
本当は怖い健康診断。
幸齢者は受けなくていい
健康診断について、もう少し話しておきましょう。いまの80代は「健康診断の走り」の世代で、健康を絶対視する傾向が強いと言えます。
たしかに、健診は60代くらいまでは大きな意味を持ちます。しかい80歳過ぎの幸齢者にはほとんど役立たない、と私は思っています。
なぜか? その理由を説明します。
まずは、「正常」と「異常」の境界線についてです。
健診の「正常」とは、多くの場合、平均値を中心に高低95%の人の数値を言います。「異常」はその範囲を超えて高過ぎ、低過ぎの人の数値を示したものです。
数値は本来、人それぞれです。体質や環境によっても違います。若者と高齢者では違うし、体型や性別でも違う。職業によっても違います。
正常値でも病気になる人、異常値でも病気にならない人もいます。
数値が悪いから長生きできない、というエビデンス(根拠)も日本にはありません。
つまり、どこまでが正常で、どこからが異常かは、個々人によるものなのです。
もっと言うと、80歳を過ぎて元気で生きている人は、それ自体が「健康(正常)なエビデンス」まのです。
しれなのに、医師が患者を診ずに数値を見て診断を下したらどうなるか。正常値にするように指導し、薬を出したらどうなるか。
答えは明らかです。それまでの健康や元気が損なわれてしまうでしょう。
血圧の数値の話。
幸齢者は高くても大丈夫
健康診断の数値の中でも、血圧や血糖値、コレストロール値、赤血球数などは、病気との因果関係が認められるデータはあります。
「血圧をさげましょう」という健康指導G徹底されているのは、このためです。
しかし、どれくらい下げるかは曖昧です。
かつては血圧150くらいでも血管が破れることがありましたが、それは昭和30~40年代の日本人の栄養状態が悪かった頃の話です。
栄養状態が良くなった現代では、動脈瘤がない限り、血圧が200でも破れることはありません。
これは80歳を過ぎた幸齢者でも同じです。いまの70~80代戦後に脱脂粉乳などを飲まされたこともあり、血管は丈夫なのです。
しかし。やはりこれも個人差がある話です。仮に血圧180で頭痛や吐き気、めまいなどがあるなら、その人にとって180は高いということになります。そのときは血圧を下げる薬を出してもらいましょう。
とにかく、数値だけで「異常」と判断され、薬を飲み続けるという選択は間違いです。自分の体の状態からはんだんするのが、幸齢者の賢い選択です・
新型コロナの教訓。
なぜ高齢者が重症化したのか
新型コロナウイルスによって、残念ながら多くの方が亡くなりました。その多くは、高齢者や基礎疾患のある方だと伝えられています。
オミクロン株が猛威を振るったいわゆる「第6波」も、広がり始めた当初は、感染者が増えても重症者や死者はそれほど出ないのではないか、という見方がなされていました。
しかし、その予想は裏切られてしまいました。2022年2月17日の朝日新聞朝刊の1面トップには、次のような見出しの記事が載っています。
「高齢者感染拡大 死者も急増」と。若年層には重症者や死者は少ないのに、80代以上だけが急増したのです。記事にはこんな数字も書かれています。
「感染者の致死率は年齢が上がるにつれて高まる。40~50代は0・03%、60代は0・32%、70代は0・94%、80代以上は3・48%」
「2022年2月8日までの累計死者数1万9410人のうち、最も多いのは80代以上の59%、次いで70代が23%、60代が9%と年齢が高い順に続く」
なぜ、80代以上の人が、コロナにやられてしまうのか?
それは、高齢になるほど免疫力が弱い、抵抗力GS弱いからです。高齢者には持病を持っている人が多い、という理由も挙げられます。
これはコロナに限った話ではありません。風邪で死ぬ人もインフルエンザで死ぬ人も同じです。
免疫力、抵抗力が弱いために細胞ガウイルスに冒され、機能不全に陥って亡くなってしまいます。あるいは持病があるために、健康な人なら容易に撃退できる敵に、致命的なダメージを受けてしまうのです。
世間では「ワクチンこそが希望」のように喧伝されましたが、本当はワクチンだけでなく、免疫力を高めることも大事だったわけです。
それなのに、正反対の「自粛」という対策が推奨されてしまいました。結果的に、高齢者は免疫力を落とすことになりました。それだけでなく、脳の機能や足の筋力まで弱ってしまったのです。
オミクロン株の第6波では、肺気腫や心不全の持病が悪化した人も多かったと聞きます。たとえば肺気腫とはそもそも気管支が弱り、喘息がひどくなったような状態ですが、コロナにかかったために上気道炎も起こした。肺の機能が落ちている人にとっては、これは相当に応えたでしょう。
心不全も同じです。心臓の働きが十分でではなく体が弱っている状態なのに、そこにコロナが加わるわけですから、つらくなるのは言わば当然です。
基礎疾患を持っているということは、体の中で火事が常時発生しているような状態です。細胞はその火消しや修復におわれています。そんなところに新たなところに新たなウイルスが侵入してきて、あちこちで放火を起こす(炎症を起こす)。こうなれば、当初からの火事は大炎上となり、ボヤ零度のものでも消火できずに大きくなる。
免疫力が落ちていたり、基礎疾患を持っていたりする人の体の中では、こうしたことが起こっていたわけです。
糖尿病の治療が
アルツハイマーを促進する
本題とは離れるのですが、もう一つ興深い話をしておきましょう。
現代医学でH一般に、糖尿病の人はアルツハイマーになりやすいと言われています。しかし、これは大いに疑問で、私が信じている説はこうです。
糖尿病の治療が、アルツハイマーを生んでいる――。
私の勤めていた浴風合病院では「糖尿病の人とそれ以外の人では生存曲線は変わらない」ということがわかっていたため、「高齢者の糖尿病は積極的に治療しない」という方針をとっていました。
すると「糖尿病の人のほうがアルツハイマーになりにくい」ということが次第にわかってきました、浴風会で3年間に行われたご遺体の剖検では、糖尿病でない人のほうが、糖尿病の人の3倍の確率でアルツハイマー型認知症になっていました。
九州大学が福岡県久山町をモデルにして長期に行った研究でも、「糖尿病の難治例、つまり薬やインシュリンを大量に使わなければいけないケースほどアルツハイマーになりやすい」という結果が導き出されています。
つまり、医学会の定説とは正反対のことが、実際には起きているのです。
糖尿病は血糖値をコントロールできなくなる病気のため、薬やインシュリンの力を借りて制御します。ところが、正常レベルまで戻してしまうと低血糖となり、脳に糖分がいかない時間帯ができてしまいます。これは脳にとっては大きなダメージで、アルツハイマーを進める一因となる、というのが私の仮説です。
低血糖もそうですが、高齢者になると、多いことより足りないことの害もほうが、圧倒的に大きくなります。
世界中のさまざまなデータが示している「やや肥満な人が一番長生きする」という事例もその一つです。
80歳を過ぎたらメタボの心配をするより、小太りくらいを目指す。
そのためには好きなものを食べなさい、と私が言うのは、こうした理由によるものなのです。
医学は不完全なもの。
だから自分の思い通りに生きる
前項の話もそうですが、医学とは不完全なものです。
いまの常識が、数年後には非常識になることは少なくありません。
たとえば、かつてはマーガリンが体よいとされていました。植物性の油脂なので、動物性のバターより断然いい、というのがその理由です。ところがいまでは、マーガリンに含まれるトランス脂肪酸がよくないとされ、敬遠する人が増えました。
このように医学常識や健康常識は変わっていくものなのです。
おそらく10年か20年後には、ⅠPS細胞が実用化されるでしょう。そうなると、肌にⅠPSを肌に貼り付けて肌を若返らせる、あるいは血管にⅠPSを張り付けて動脈硬化を治す、ということが可能になる。さらには。髪の毛から心臓を育て、その心臓を自分に移植するというSFの世界が現実化するかもしれません。
そうやって臓器を取り替えていけば、120歳くらいまで生きられるはずです。でも、そんな時代がきても、唯一脳だけは取り換えることは難しい。なぜなら、新しい脳を育てても、中身は空っぽ(0歳の状態)だからです。
このⅠPSの例はあくまでも仮定の話ですが、現代は医療によって長生きできる時代になっていることは確かです。
しかし、そうやって最新医療の力によって、できる限り長生きするのが幸せなのか――。
個人的な見解を言えば、私は嫌です。
体だけ若くて、脳がボケた状態が幸せとは思えないからです。確かに今の産血圧や糖尿病の治療ほど、体は苦しくないかもしれません。
それでも老いたのなら、受け入れて生きたい。ボケて、愛する人の顔も、自分のことさえもわからなくなるかもしれません。複数の病に苦しみもするでしょう。
それでも、あるがままを受け入れて、いまできることを楽しみながら、自分らしく生きたい、と私は思っています。
爺様:「80歳の壁」のプロローグと第1章 医者・薬・病院の壁を超えていく のご紹介を終わります。
たまたま、我が女房が、肝細胞ガンにかかり、治療法や医師の選び方の勉強を始めた処に、和田秀樹先生の「80歳の壁」の著書に巡り合い、じっくり読ましてもらいました。
読んでみて、女殿の治療法等の参考になりましたし、私の精神的な支えになりました。
また、高齢者の生き方の指針を示している部分もあり、爺様が地域の高齢者の見守り等を担当する「福祉のまち推進センターの運営委員長でもあったところから、
福祉推進員のみなさんや、民生委員・児童委員のみなさん、高齢者のご家族のみなさんに紹介すべきだと思い、第3章 ボケ・認知症の壁を超えていく の部分を先行して紹介し、ついで、プロローグ(序章)と第1章 の紹介がおわりました。
しばらく、一休みさせていただき、今後、第2章 老化の壁を超えていく のご紹介をしたいと思っています。
長い間、ブロガーの皆さんや、閲覧くださった多くの皆さまに感謝申し上げます。
爺様
