福田ビジョンの主な内容は予測された範囲のものであるが、この構想は福田首相の意図を超えて一人歩きする可能性が高い。不十分な点を批判するだけなら簡単であるがその影響については冷静に分析する必要がある。
(1)長期目標として2050年に世界全体で半減日本は60から80パーセント削減し、中期目標として2020年に2005年比で14パーセント削減(2020年については可能と言う表現で変更の可能性に含みを持たせている)としている。
評価
長期目標はこれでよい。この目標は今後再検討され、世界の削減量も80パーセントくらいまで引き上げられざるを得ないからである。なぜならこの長期目標は温暖化ガスの排出を自然の吸収量とバランスさせるのが目標だからである。
90億の人口予測で考えると一人当たり1.4トン(年)程度の排出に抑える必要がある。日本は現在約10トンなので85パーセント程度削減しなければならない。
また温暖化の破壊的影響はこれからますます人的被害を伴うと予想されるので、厳しい数値目標への世論の高まりが数値目標の変更を促す。
長期目標によって獲得されるべき目標は、現状の延長ではなく足元の大変革を促す(巨大なインセンティブとして作用する)程度の数字になっているかどうかである。すなはち現状が大きく動き出すほどの数値になっているかどうかである。
(2)「中期目標(2020年)2005年比14パーセント削減」について
あいまいな表現であるがこの数字でどうかというアドバルーンを揚げている。変更の余地を残した表現で、最終的には2009年に具体的数値を打ち出す予定と報じられている。
評価
この数値は『経済産業省』の試算をそのまま踏襲したもので、経済産業省、経団連などの主張する(日本政府もこの主張に従った)「セクター別アプローチ」の手法をとった場合の数値と考えられる。すなわち現状の延長上に未来を描く手法で得られた数値である。
これは現状と同程度のエコインセンティブを前提とする数値で問題にならない数値である。
しかもEUの掲げる『単独でも2020年までに1990年比20パーセント削減する』と言う主張を取り上げて、1990年比20パーセント削減は2005年比に換算すればおよそ14パーセント(日本の数値と同じ)になると述べている。
残念ではあるがここに『経済産業省』と『首相』の温暖化への根本姿勢が示されている。すなはち『自国の削減目標値は、できるだけ少ないほうが得(国益?)』という考え方である。
EUはとっくに「温暖化対応は避けられない。どうせ対応しなければならないなら、早い環境対応で国際的に優位に立つことが国益にかなう。」という立場に立っている。『環境立国』の視点である。
もし日本がこの主張にこだわればEUは30パーセントかそれ以上の数値を主張するだろう。
(続く)