「脱がッ、て、ちょ」
「1人にしないで・・・・ちゃんと全部高原くんのモノにしてよ。でなきゃ」
どうしたらいいのかわかんない、の前に、自分でどうにかする気力自体も、もうない。
自分で自分のことを面倒見られないなんて情けないにもほどがあるけど、実際のところそれが本音だった。
こんな時は雪だるま式に何もかもがうまくいかなくて、迷惑をかけるに決まってるのにまた涙があふれてくる。
「美咲・・・・」
衣擦れの音がして、彼の腕があたしを包んだ。
座っているあたしの前にかがんで、硬い胸であたしの額を受け止めてぎゅっと力を込める。
「美咲がほんとにそう思ってくれてんならすげえ嬉しいし、拒む理由なんて何もないよ。だけど、そうは見えない。・・・・めちゃくちゃ辛そうだ」
あたしの頭を抱えるようにしてそう言う彼の声もとても辛そうで、あたしは自分のことをもっと嫌いになった。
「そんなシクシク泣いてる子抱けないって。オレそういう趣味ないよ」
高原くんのくぐもった声に込められた気持ちが、頭にガンガン響いてくる。
腕を緩めてあたしを覗き込む彼は、すぐ目の前だというのに涙でにじんでよく見えなかった。
「オレ、美咲のこと本気だからさ、美咲も本気になってくれるまでちゃんと待つよ。今も1人でいたくないならそばにいるし・・・・うわ、自制もつかな」
「高原く」
「とりあえずさ、いいかげん名前呼ぶとこから始めねえ?」
優しい顔で笑い、暖かい声で冗談めかして、あーあ、と息を吐き出す。
「つーか、言ってるそばからソッコー後悔してるんですけど・・・・何も考えないで美咲の言うとおりしてりゃいいのに、オレってバカ」
体を起こしてグシグシと頭をかき回し、腰に手を当てた高原くんは、あたしを見下ろしてぷっと笑った。
「美咲って美人だけど・・・・鼻水たれてるのはさすがにマズい」
うあッ。
張り詰めていた雰囲気が一気に緩んで、あたしも大いに赤くなりながら彼が差し出すティッシュの箱から2枚ほど拝借して鼻を押さえた。
笑いかけてくれて、優しくしてくれて、想ってくれる彼に、あたしはいったい何を返せるだろう。
何も返せっこないのに、この暖かい手を離すにはあたしは弱すぎて、冷えすぎていて、何よりもずるすぎる。
心と体のぜんぶを、だなんて言いながら、そのすみずみにまで違う人を住まわせている。
誰のものにもなれないなら、いっそ砂のように崩れてなくなってしまえばいいのに。
行き場のない気持ちごと、跡形もなく消えてしまえばいいのに。
*唯一無二:ただそれ1つだけで、2つとないこと。ほかにない貴重なものであること。
↓高原・・・・キミがツラいのは、ニッチに気に入られたからだ・・・↓
↓鼻水どころか唾液たれててもウチの白子の啼き顔は美人↓