Rickenbacker 4003 調整作業 | D's design スタッフ ブログ

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茨城県日立市にあるギター工房D's designの工房日記です☆  Since 2010

今回はこのベースの調整作業です。

Rickenbacker 4003
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今回一般的なネック反り・弦高調整・オクターブチューニング等の調整作業の依頼なのですが、Rickenbackerの調整は通常よりも緊張を強いられます…。

この4003には'80年代初頭まで生産していた前身モデル4001というベースが存在します。

この4001には画期的なトラスロッドシステムが採用されていました。
近年市販されているトラスロッドシステム、StewMac社のHOTRODの原型とも言える物で、折り返した2本の鉄心の張力の差でそりを矯正するというもの。しかもそれが左右2本入っている為、ネックのねじれにも対応できると言う優れものでした。

しかしリペアマンにとってはこの調整がなかなかの難物…。
4001はトラスロッドが直接指板面の裏側を押し出す構造になっており、なおかつトラスロッドが2本入っているお陰で、ネックと指板の接着面積が少ないのです。
それによって、トラスロッドを締め込んでいくと、指板がめりめりと剥がれるケースが少なからずあったのです。

のちにこの弱点を修正・強化したモデルが4003です。
トラスロッドは折り返した物から1本の物に変更され、トラスロッドの上にも埋め木がされ、指板剥離の危険性が大幅に軽減されました。

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ですがこのように狭い空間に2本並んだトラスロッド、通常のトラスロッドは外径4.7mm程度なのに対して、外径3.9mm程度しかありません。

そうすると、無理にトラスロッドを回し込んだりするとこうなるのです…
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これは慎重に作業せざるを得ません…。

しかしこのRickenbacker、通常のF社やG社などのギターには出来ないトラスロッド折れの修正方法があります。
F社・G社では指板を剥がしたり埋め木を掘り出したりしてトラスロッドの摘出手術をするか、もしくは諦めるかしかない所…Rickenbackerは木工加工せずにトラスロッドの交換が可能なのです。

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これは4003モデルですが、交換は4001モデルでも可能になっております。

ただし、交換用のトラスロッドの入手はそう簡単ではないようです。
特に4001の場合はメーカーでも既に扱っていないようです。

そんな訳で今回の調整作業はいつにも増して緊張し、慎重に作業しました。
結果、オーナー様にはご満足頂ける仕上がりとなった様で内心ホッとしました。

これからも勉強、これからも精進ですね!☆