伊賀忍者が一、轟隼人は今相対している根津甚八の能力に驚いた。漆黒の鎧を槌に変化させる能力、そしてそれから発せられる電撃。一人にして二つの能力をもつものがはたしてこの世にいるのであろうか?そのような事を疑問に思う余裕もなく彼は羽ばたいた。

「上空にさえ逃げればそちの怒槌とやらを喰らわんで済むからな。」

 そういって手裏剣を投げる隼人に甚八はうっすらと笑いを含めてこう答える。

「浅はかな考えかな・・・。下らないわ。」

 甚八は飛び上がって槌を振り下ろす。どこからか黒い粒子のようなものがそれに纏わりつき、それは巨大な物体と化す。隼人は襲ってくる巨大な槌を避け切る事を断念してそれを受けようとするが、そのまま力任せに押しされ、地面にたたきつけられる。

「しまいにしようかい・・・。」

 そういって甚八は槌より強力な電撃を放つ。先の一撃で轟隼人はすでに息絶えていたであろうが、相手は伊賀の精鋭である故に無駄な力を浪費してまでもとどめを刺しておきたかったのであろう。息を荒らげた甚八は後ろに気配を感じる。

「誰だい・・?」

 そういって振り向いた甚八の後ろには伊賀の雷神と称される雷堂 白が悠然とその場に立っていた。


 一方、伊賀の風神こと御手洗 風雅は自分の背中に生える鎌をまじまじと覗き込んでいる。

「いくら見たって結果は変わらないぜ、風神さんよ。俺は鉄を操る事が出来る。その同時操作数は四つ。四頭の鎖がお前に喰らいつくぜ?」

 風雅は鎌ノ助の言葉を耳にすると鎖を抜いてニヤリと笑う。

「まぁ、四頭の蛇の鎌ごときに追いつかれてちゃ、伊賀の風神の名が廃る・・・。」

「ふざけるな・・・。」

 鎌ノ介はそう言うと四本の鎌は風雅に狙いをつけて襲いかかる。風雅はスルリと鎌の間を抜けていき、すれすれの所でその攻撃を避ける。三分ほどその状態が続いた後、鎌の動きは止まった。

「考えて操っているのか?蛇が玉のようにからまってるぞ?」

 しかし鎌ノ助は落ち着き払ってこう返す。

「下らないなぁ。俺は鉄の形状も変えられるんだぜ?」

 そう言うと絡まっていた鎖鎌が再び元の形に戻り、風雅を襲う。風雅は再びよけ続けたのだが、数分後彼は木の根に足をひっかけて逃げ場を失う。

「これで終わりだぁ!」

 四頭の鎖を一斉に風雅に向けて放ち、勝利に酔いしれたような表情に変わった。

「風双裂掌!」

 風雅がそう叫ぶとともに、楯状に形作られた豪風が四頭の鎖鎌をすべて後方へ弾き飛ばす。そして間髪入れずに彼は鎌ノ助の懐に入り、左胸に匕首を刺す。

「今のは四頭をそろえる布石だ・・・。全てバラバラな動きだと流石に防ぎきれんからな。十勇士が一、由利鎌ノ助よ、強かったな。」

 そういって風雅は再び飛び立った。

【6対6】

 ついに始まった伊賀対甲賀の忍法合戦。十四の影は動く、留まる、己が赴くままに行動した。影の内の二つは風を切り裂き動き回った、獲物を探して。

 影の内の一つ、伊賀の風神と称される御手洗 風雅は一つの影を捉える。彼は手裏剣を影に放つものの、すんでのところで影は手裏剣から逃れた。

「お前は・・・・・確か・・・・。」

「由利 鎌ノ助だ。」

 風雅の問いかけにその影、由利鎌ノ助は答える。

「覚えておくぜ・・・。」 

 次の瞬間、風雅は一瞬にて間合いを詰めるものの、どこから現れたかわからぬ鎌の一閃にて風雅は後ろに飛び退いた。鎌ノ介が次に鎌の柄の部分に手をかざすと、それは鎖と変わり彼の手より風雅に襲いかかる。

 本来、鎖鎌の鎌というものは、遠距離用の分銅を避けられたときの近距離戦闘手段または、相手の動きを封じた時の留めとされているのだが、鎌ノ介はその鎌自体を投げつけてきた。

「っぶねぇ!」

 風雅は持ち前の身軽さにて鎌をよける。一方鎌は生き物であるかのように風雅に食らいつこうとする。

「そろそろ、俺の番・・・・・。」

 風雅の声は途中で途切れる。背中に走る激痛。そこから生える鎌を見たとき、彼は全てを理解する事が出来なかった。何故なら彼は迫りくる鎌を避け、実際にその鎌は再び自分めがけて襲いかかってくるのだから。


 その頃、もう一つの風も獲物を見つけた所であった。二年前との違い、それはかの戦いにて水龍に奪われた左手首、今現在それは刃と変わっていた。そして彼の見つけた巨大な獲物は彼に気付き、その巨大な腕を振り下ろした。

「手荒い歓迎だねぇ・・・。」

 佐助はその腕をひらりと避けて巨大な影に蹴りを放った。しかし、その蹴りはあっけなく掴まれ地面にたたきつけられる。

「岩代入道、参る。」

 ムクリと立ち上がった佐助は不敵な笑みを見せ、こう言い放つ。

「見せてやるよ・・・俺の剣技を・・・。」


 二つ風が沈黙を破った後、遅れて天狗は獲物を見つける。全身に鉄の鎧を纏った女は静かに上空の天狗を見据える。

「降りて来たらどうだい?轟隼人。私が相手してやるからさ。」

 根津甚八は轟隼人を挑発する。隼人はそれに従い自慢の翼をはばたかせて地上へ降り立つ。そして甚八のに向って勢いを利用した錫丈の一撃を見舞う。

「あらあら、せっかちなんだねぇ・・・。」

 甚八の纏っていた鎧の一部が粒子状になって大気へと溶けてゆく。そして隼人の一撃が入る瞬間に粒子は固まり槌状に変化する。あたりに鈍い音が響き渡る。

 そして次の瞬間、隼人の体に電流が走る。驚愕する彼に対しては甚八は妖艶な笑みをみせてこう呟く。

「どう・・・・怒槌の味は・・・?」


 【7対7】

 俺達七人は、藤林に連れられて伊賀と甲賀の挟間にある森林地帯にやってきた。そこには八つの影が既に俺達を待ちわびていた。

「甲賀忍軍・頭領・廻神奏」

「伊賀忍軍・頭領・藤林剛蘭」

 互いに名を名乗り七人の名を書いた巻物を互いに交換する。

「甲賀が一。猿飛佐助。」

 この二年間、忘れる事が出来なかったその顔、そう、この男が最愛の人を殺した張本人なのだ。俺は飛びかかりたい衝動をなんとか抑え込む。

「同じく。根津甚八。」

 そう言ったのは長身長髪の鋭い眼をした奇麗な女だった。

「同じく。望月六郎。」

 短髪のその男はへらへらとしながらこちらを眺めている。

「同じく。海野六郎。そしてこの子は穴山小助・・・。」

 ショートカットの女性が海野六郎で、もう一人の幼げな少年が穴山小助。俺は本当にこの者たちが音に聞く真田十勇士なのかと疑問に思う中、相手方は淡々と自分の名前を読み上げていく。

「十勇士が一。由利鎌ノ介。」

 15,6の少年である鎌ノ介はこちらをキッと睨みつけている。


「筧・・・十蔵。」

 長い髪の毛を垂らした間から覗く目は、猿飛佐助に匹敵する殺気が窺いとれる。

「んまぁ・・・・あれだ・・・・。十蔵は俺の次に強くてだなー、その次は甚八だな!んでんで!望月の野郎は『死なず』の六郎っつわれてて海野の方は『知らず』の・・・・。」

 猿飛がそう言うのを遮るように俺は名乗っていた。

「伊賀が一。和田 樹。」

 風雅、白、隼人、岩代、京香、花と名乗り終える。

「では・・・・尋常に・・・・勝負!」

 二人の頭領がそう言うと14の影は一斉に散っていった。


 伊賀一同が集合した中、そこには不穏な空気が漂っていた。俺の不安は的中し、俺は腹に激痛を感じた。次の瞬間、俺の意識は途切れた。

「悪いな・・・・樹・・・。猿飛佐助は俺の獲物だ・・・。」

 俺の腹から右腕を放し風雅は神妙に呟く。

「また・・・生きて会おう・・・・。」

 そういって6つの影は散っていった。その場に俺を残して・・・。


【7対7】