翌日武はあの廃ビルに再び足を運んだ。一度奪われた鞄の中には一つの鍵が入れられていた。それは樹里亜が使ったものと同じで、社長室よりCOAのアジトに繋がる鍵であった。


『来ると思ってましたよ・・・武君・・・・・。来たって事は・・・・入団すると受け取って良いんですね?』


「あ・・・あぁ・・・・。」


 するとアートレスは再び武の顔を覗き込む。


『では・・・ルールを説明します。まぁ、まずは常識を守ってください、他人を思いやることが大切ですからね・・・。そしてもう一つ・・・・自分より階級が上の者の言には従うように・・・。』


『続いて階級を説明しましょう。一番上が『JOKER』。これは私のパートナーで『座長』(Ringmaster)でもあります。そして次に強いのが『ACE』のスパナ、そして『KING』の斉藤の二人です。』


 アートレスは眉にピアスをし、長い髪には無数のピンが付いている男を指してスパナと言い、短髪で筋肉質な男を斉藤と呼んだ。


『それに続くのが三王妃『Trinity Qeen』の綺羅・樹里亜・麗奈です。今、三人ともここには居ないみたいですね。そして、『Jack』は空席です。それから、このチームは二番隊から十番隊までありまして、その隊それぞれに長がいます。そして武君は二番隊に入ってもらいます。』


「二番隊隊長の徳川 ナオトだ・・・・よろしく。」


 さらしを巻いて着物のようなものを羽織っている青年が握手を求めてきた。武は握手を返し、自己紹介をする。


「和田 武っす・・・・。よろしくおねがいします。」


「二番隊のメンバーな・・・。ヒロっていう高一の男の子は今日はいなくてだなぁ・・・・。んー、そこの双子が璃玖と璃緒で中二。」


『よろしく~♪』


 美しい顔立ちの二人が同じタイミングで手を振ってくる。すると向こうのほうより思い足音が聞こえてくる。


「んで、あの走ってくるデブが高橋だ。」


「フー・・・。フー・・・よっ・・・・よろしく・・・。」


 いかにもオタクな風貌の高橋に戸惑いながらも武は会釈する。


「それでだなー、今日はこの高橋と一戦してもらう・・・。武の力が見たいからな。」

 呆然とする樹里亜に綺羅が耳打ちをする。


「この子・・・・不良に・・・『和田 武』って言われてたんだ・・・もしかしたら・・・・じゃない・・・?」


「こ・・・・こんな子が・・・?」


 樹里亜と綺羅の懐疑の視線にしどろもどろしながら武は先程から疑問に思っていた事を質問する。


「あんたら、本当にCOAのメンバーなのか・・・・?っつーか、そもそもそんなチーム存在するのか・・・?」


「生意気なやつね・・・。まぁ、いいわ、連れて行きましょう・・。彼、COAの事も信じ切れてないみたいだし。とりあえずアートレスにあわせてみましょ。それでいいわね、綺羅?」


 三人は都内のある廃ビルにはいる。そこは昔会社があったらしく、会計室・印刷室等のプレートが部屋の前に張られている。そして社長室と書かれた部屋に入ると、樹里亜は鍵を取り出して何も無い空間でそれを捻る。するといきなりそこに扉が現れ、亜空間への道を示す。


「ここが・・・COAのアジト・・・・。」


 武は息を呑んだ。凄まじく広大な土地にサーカスの道具が所々に散らばってる。そして真ん中には巨大なステージがスポットライトに照らされている。そしてそこに一体のピエロが降りて来た。


『お帰りなさい。樹里亜に綺羅・・・そして彼は・・・・知らない顔ですね・・・。』


 アートレスと呼ばれたピエロが一跳びで武の前にまで移動する。派手な衣装に目元はマスクで隠しているそのピエロは武の顔をまじまじと覗き込む。


『その眼・・・いいですねぇ・・・・力強くて鋭い・・・・。・・・・いいでしょう・・・入団を許可しましょう・・・和田・・・武さん♪』


「なっ・・・入団って・・・っつーか何で俺の名前を知ってんだよ!!」


 アートレスが懐から何かを取り出す。それは先程まで武が持っていた彼の鞄であった。アートレスは鞄を武に返し、口元に笑みを見せる。


『明日・・・・此処でお待ちしております・・・。』


 次の瞬間、武は亜空間より追い出され、元の廃ビルに立っていた。





『彼・・・伸びると思いますよ・・・。貴方が見込んでいるのもよくわかります・・・・。』


「そうやろっ!?まぁ、アイツならきっと明日来んで?なんてったって俺の弟分やからな・・・!」


 そう不適に笑うのは、白い長髪の青年であった。

 武は、一人の少女が何十人もの不良を次々と倒していくという異様な光景をただ呆然と見ていた。綺羅という少女がまたがった一角白馬はその角や、冷気を発する尻尾で不良たちを寄せ付けない。


『綺羅~・・・。疲れた~・・・。』


「ぇっ・・・?シロ・・・?ちょっ・・・・もうちょっとだけ・・・・!」


 綺羅の願いもむなしく一角白馬のシロはアナザーの一般系のぬいぐるみの様な子馬の形に戻る。綺羅はあたふたして武の後ろに隠れる。


「ちょっと・・・・ちょっとタイム~!」


「タイム~?んなもん無ぇわクソアマ!」


 そう言って不良は綺羅に、そして武に襲い掛かった瞬間。彼の覚悟が形となる。武と不良の間に炎に包まれた猿のようなアナザーが出現する。


「ぬっ・・・・主が我のパートナーか・・・?まっこと間の抜けた面よのぉ・・・!我は齊天大聖孫悟空!主は・・・?」


 武はかっとなって悟空に言い返す。


「猿に間抜け面っつわれる筋合いはねーよ!っつーか力貸しやがれ!いくぞ・・・・リリース!」


 悟空の体が光り、棒状になる。それを俺は振るって不良たちを薙ぐ。そうすると心に直接悟空が語りかけてくる。


『それの使い方はだな・・・・。』


「伸びろっ如意棒!」


 すつと如意棒は伸び、辺りの不良どもを一掃する。しかし、まだまだ数は多く、正直分が悪かった。そこに、また一人女性が現れる。碧く透き通った眼に、栗色の髪の毛をした美しい少女であった。


「綺羅っ!アンタあれ程注意したでしょ!軽率な行動はやめなさいって・・・・。さっきアンタ一人でチーム壊滅させたって情報も聞いたわよ・・・!」


「ごっ、ごめんよ~樹里亜・・・・。その・・・この子が絡まれてたから・・・つい・・・!」


 樹里亜という少女は綺羅と話しながらも薔薇の鞭で残った不良たち全てを一掃する。そして綺羅の頬っぺたを抓りながら説教を始める。


「だいたいねっ・・・・ペース配分忘れてまた調子乗ったんでしょ・・・・?駄目だからね・・!?」


「ごめんごめん、それでさ、樹里亜、この子・・・アジトにつれてかない・・・?助けてもらっちゃったし・・・・。」


 あまりにも突拍子な綺羅の発言に、武も樹里亜もポカンと口を開いた。