樋渡啓祐武雄市長の講演~批判を恐れて無関心に甘んじてはダメ、知られる努力を | 福岡県議会議員 「走る、弁護士!」 堀 大助
おはようございます。

昨日、福岡商工会議所主宰の講演会に参加してきました。

堀  大助


スピーカーは、佐賀県武雄市の樋渡敬祐市長。
今や、自治体の一首長を超えて、ほとんどの人が知ってる超有名人。
あのGoogleの本社でもスピーチをされたそうです。

地元の武雄市で育ったそうですが、高校時代は不登校。
東京大学ではNHKの集金のバイトで当時全国一番(月にOO万円稼いだそうです)。
官僚として今の総務省に入り、鈴木宗男さんの鞄持ちとして鍛えられる。総務省では上司と喧嘩し沖縄に飛ばされる。刺されたこともあるそうで・・・波乱万丈の官僚人生ですね。

官僚を辞めて市長になってからの活躍は、皆さんご存知の通りですね。
市のホームページをFacebook化、地元の物品を市がネット販売(FB良品)、図書館民営化、生徒にタブレット配布etc

これら新鮮な政策を次々打ち出した市長ですが、その根底には地方の自治体が抱えるある意味共通の悩みがありました。



「知られていない」

市長になられて、早稲田大学で講演したそうです。
その時、「武雄(TAKEO)を知っていますか?」との問いに、知ってると答えた生徒は「ゼロ」。

もちろん、一地方の自治体が東京の学生にそんなに知られている訳はない、と思っていたでしょうが、でもやはりショックですよね。
ちなみに、武雄の隣の嬉野は、30人くらいが知っていたそうです。嬉野温泉・嬉野茶・湯煙殺人事件(TV)など、メディアへの露出が多いから。


「知らない場所に人は行かない」

市長はそう思ったそうです。
地域活性化のひとつに、観光で人を呼び込むという政策がありますが、知らない場所にそもそも人は観光に行きませんよね(もちろん、たまたま立ち寄った場所で素敵な経験をする、という幸運は起こり得ますが)。

では、どうすれば知ってもらえるか?
どうすれば関心を持ってもらえるか?

何もしなければ、世間は知らないまんまです。
批判を恐れて何もしなければ、人は無関心のまま。
「好きの反対は嫌いではなく、無関心」
そして、市長は批判を恐れずに様々な政策を打ち出していきます。

樋渡市長就任前の「武雄市」のインターネットでのヒット件数は約5万件だったそうですが、それが今や48億件とのこと。
もちろん、中には批判的なものもあるでしょうが、少なくとも無関心からは既に脱却しています。同じく、知られていない自治体出身の僕からすれば、すごく羨ましいです。


でも、何でこんなに知られるようになったのでしょうか?


僕たちがテレビなどで武雄の名前を耳にするようになったのは、武雄市が全国で始めてOOという取り組みをしている、というニュースだったと思います。
マスメディアは目新しいものに飛びつきます。「全国初」は注目度が高いため、ニュースバリューも高く、こちらが頼まなくても報道してくれる。そうするとメディアへの露出が増え、浸透していく。

もちろん、政策の中身が伴っていなければ只の話題づくりで終わってしまいますが、
世間からの注目を起爆剤にして政策を推し進めていく、そういうやりかたもありかなと思います。

ホームページのFacebook化も、話題先行なところもありましたが、維持管理コストの削減や、使い勝手の良さのためかアクセス数が断然に増えたそうで、市役所が何をやっているのか分かるようになった、行政の透明化につながっています。

地元特産品のネット販売(FB良品)も、今まではネット市場への出店手数料などを負担していた各業者さんが、市が販売することで手数料負担ゼロ、市も業者の収入が増えて税収アップ(これぞ成長戦略による税収アップですね)。

図書館運営の民間委託は、ついこの間ニュースにありましたが、民営化後、来場者数は半年で50万人、前年度の3.5倍。出店しているスターバックス・コーヒーの売上げも上々で、瞬間的には国内店舗売上げの2位になったそうです(1位は渋谷道玄坂)。これに対しては、来場者が増えたといっても本を借りずにコーヒーだけ飲んでる、外からや視察の人員が多い、とか批判を言う人がいますが、そのどちらの集客もなく、閑古鳥が鳴くような図書館とどちらがいいかは一目瞭然と僕は思います。


このような政策を矢継ぎ早に打てた要因のひとつには、武雄市が小規模の基礎自治体だった、ということがあると思います。
首長のリーダーシップを発揮しやすく、しかも政策分野も住民生活に密接に関係する部分に絞られている(利害関係者の利害度合は高いものの、広く多くではないため、実行に移しやすい)。
様々な根回しや多数派工作に時間と労力を取られることなく、首長がスピード感を持って実行できる。

樋渡市長は「スピードが一番の付加価値」と言っていましたが、大いに賛成できます。
「自分が何かアイディアを閃いた時は、世界中で同じ考えを持っている人は100万人はいる」そう教わったことがありますが、まさにその通りで、アイディアが世間に出たときに、「あぁ、俺も同じこと考えてた」と言ってみたところで無意味です。それをいかにスピーディーに、他に先んじて実行したか、それに尽きます。

また、スピーディーな決定を実行するには、現場に決定権を与えることが重要です。顧客に何かを求められ、上司その都度相談してたら、客に逃げられます。
ホウレンソウ(報告・連絡・相談)は要らない、但し、現場決定の責任はトップが常に負う。現場には決定する楽しみも生まれ、仕事に充実感を覚える。


市長は常に走り続けている人だ、そう思いました。
文字通り、市長は市民ランナーですが、常に現状に疑問を持ち新しいものを探している。
apple、google,facebookなどの先進企業から着目されているように、彼らと同じく、現状は正しくないという認識のもと、常にその先を求め続けています。日本企業の今の停滞は、現状が正しく守るものだという考えに固執し、守・破・離の精神を忘れてしまったからではないでしょか。今あるものを捨てる勇気も必要。



時間があっという間に感じる、楽しい講演会でしたが、
それも、市長が自ら楽しもうという姿勢を徹底しているからだと思いました。
「人生は劇場だ(Life is like a musical)」
人を幸せにするには自分が楽しんでなければならない、そう思います。

堀  大助